第12話 「学校祭」 その2
「うぅ……うぅ……」
そして昼休み。
「大丈夫か……?」
僕は隣に座る四葉の背中を
机に突っ伏しながら涙を流す彼女。
案の定、宿題をやってないことで呼び出しを食らい説教をされた後である。もちろん彼女もこっぴどく叱られたのだろう。
「あはは……さすが四葉だな」
「さすがって……前沢君には言われたくない……」
ギーっと彼を睨みつけるが、ニコッとした笑みで返した前沢に対抗するすべもなく彼女はもう一度視線を落とした。
「それにしても、そんなにか……」
「うぅ、やっぱり、こわい」
仕方ないのは仕方ないが、林先生は怖いで有名だ。
男女関係なく凄まじい形相で怒る中年のおじさん熱血先生を前にすれば、さすがに僕とて震えそうだ。ましては——四葉では立てもしないだろう。
「でもまぁ、今回は自分が悪いな……まさかお前が全部やってないなんて思わなかったし、どちらにせよあの量は朝だけじゃ終わらないって」
「四葉ちゃん……」
いつものメンバーが苦笑いで彼女に視線を送る。
僕としても手伝ってあげたかったが何せあんな時間に気づかれたら僕では名どうにかはできない。
——いや……てか、僕は忠告したしね。
「これじゃあ、今日の文芸部いけないよぉ~~!」
「そっか、放課後補習あるのか……これはこれは気の毒だな」
「絶対お前……いや、なんでもない」
「なんだよ柚人、俺に言いたいことでもあるのかよ、うん?」
「ないない、ないって」
はいはい、とこっちに向かってくる前沢に手の裏を見せて静止を促す。
「ちぇー、つまんねえな」
「おい、四葉を面白がるな」
「お前の反応がだよ」
「僕はさっき、ニヤニヤしてたのを見てだけど?」
「あれは違う」
「なにがだ」
「ちょっと笑ってしまったんだ」
「おい」
「え、なんのこと?」
白を切る前沢——つまり、前ウザ……いやなんでもない。あからさまにセンスが低すぎる、こんな低能じゃないぞ、少なくとも微低能くらいだ僕は。
「まあ、とにかく——四葉には頑張ってもらわないとな」
「ああ、それは同感だな」
「ふ、二人ともぉ……たすけ、て、くだs——」
「——私はあるけどね」
しかし、その瞬間。
西島が口を挟んだ。
「なんだよ、俺にか……?」
前沢は恐る恐るに振り返り、ゆっくりと問うと彼女はコクリと頷いた。
「ん……」
そして、僕と前沢は息を飲む。
すぐさま静寂が訪れ、シーンとした空間に息を飲む音が響いた。
「——すき」
「……は?」
「——すぅき」
「……?」
「……え?」
唖然とした僕、そして隣ではあまりの驚きで涙が止まった四葉がいた。
口を半開きにして固まる前沢を前に、西島はにやりと笑みを浮かべてもう一度言い放った。
「——だい、すき!」
それも、今度は大きな声で。
そして、当たり前のようにクラスは一斉に湧き出した。
「お、おお、おおおお‼‼」
「西島と前沢が!!」
「これはビックニュースじゃん!」
「西島ちゃん、ようやくだねっ!」
クラスの連中は盛り上げ役に徹し、断れないような空気が出来上がっていた。
どうやら、彼が僕に忠告したことであるあれ。
その矛先は四葉でも僕でもなく、彼自身だったようだ。
たしかに、今日の西島の様子も少しおかしな——気がしなくもなかったが……いや、いつでも不気味でおかしいからこそ何を考えているか分からないけど、彼女は今、この時に告白を実行した。
「は?」
それにこたえる前沢。
「何よ、不満?」
「——ってめぇ」
周りの空気を窺う前沢は歯噛みし、ギシリと擦れた音が僕の耳まで聞こえてくる。忠告した自分がまさか、その標的だったということを知らずに、ましては今球に告白されてはそれはさぞかし驚くのも無理はない。
しかし、彼は突然振り向いた。
「え?」
そして、僕と目が合った。
「おい、こっちこい」
「えt——!?」
僕の肩を右腕で包みながら、視線だけを彼女の方へ向けて彼は言った。
「い、や、だ!」
突如訪れた告白のムードは消え去って、クラスがぞわぞわとし出した。男からは女子を泣かせるなというバッシング、そして女子は口に手を当てて驚きを隠せていなかった。
「え、なに、何で僕っ!」
慌てて逃げ出そうとするも、彼の校則は固く簡単に振りほどけない。四葉に視線を送ろうとしたが時すでに遅く、僕は教室から飛び出していた。
<あとがき>
ううぅ、星評価くだちゃい……。星30にしたいです……泣。
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