第5話 「部活という名の建前のただの集いに僕は赴く」 その4
ぼーっと考えていると、背後に気配を感じた。
廊下で鳴り響いていた足音は止み、背後の気配は徐々に大きくなっていく。そこで、ガチャンッっという開閉音が部室に響き渡った。
「よーーーーーー!」
「おまたせ……」
「つっかれた~~!」
途端に現れたのは三人、おかしな文芸部のおかしな先輩方である。
まず、一人目。
気品あるうちの高校の制服をラフな感じでギャルっぽく着こなす割と背が高めな女子生徒、
「えぇ~~、よっちゃんとゆめは良いけどぉ……またお前かよ?」
「ひどいっす」
「ははっ! 冗談だよ冗談っ!」
そして、二人目。
豆腐型の眼鏡を掛け、赤毛をサイドに軽くまとめた背の低めな女子生徒、名前は
「新人、吉村昭先生の作品全部持ってこい」
「……あの~、僕ってまだ入ってなぃ」
「いいから!」
「……はい」
最後の三人目。
純白色の髪をまるで雪がふわっと重なって積もっていくかのように伸ばし、ボブの中で光り輝く艶は僕たちを照らす。前髪には小さな三日月の髪留めが違和感なく目立っている。体型は悪くもなく良くもなく、胸は見ての通り普通。僕が見る限りCカップくらいだろう。なぜわかるかって? それは……ひ、秘密だ、いったらよつ……なんでもない。
「おい貴様、どこを凝視している? その腐れた目、ひねり潰すぞ?」
「え、え⁉ どこも、見てませんけどぉ⁉」
期待を裏切るかのようなこの性格。もちろん、僕以外の生徒にもこのような口調で話している。それも、男女問わず。言わずもがな女子受けは悪いが面倒見のいい生徒が多いこの学校は逆に折れ曲がっているので、案外嫌われてはいない。ここで、要らぬ知識ではあるが、男子受けが良く、むしろファンクラブすらも出来ているらしい。
「その言い方、私の身体を見ていたよな? おい?」
「だって、見なきゃはなせ」
「うるさい、〇ね」
「……」
さすがの僕も、彼女の目を見ながら話すのはすごく怖い。
それどころか、彼女よりも怖い女性はいないとも思えてしまう。若干、枢木先輩とキャラが似通っているように見えるが、そう思ってしまう人間は見る目がない。怖さの丈が明らかに違うのだ。暴力的単語も性的単語もすべて躊躇なく使えるバケモンである。ヤンキーではないが、そこらの不良は彼女を恐れているという噂もあるくらいだ。
「先輩、いい加減そういう気品のないこというのやめまし?」
「由愛、お前もだ」
「え?」
「唇に刺繍針突き刺すぞ?」
そう、さっき言った通り。
彼女、木村・ラナンラス・雪はブレないどSな女子高生なのである。
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