5日目

早朝、女王は王宮に帰還した。

「お帰りなさいませ。無事で何よりでございました」

大玄関にキルマーノックが立って待っていた。

「ただいま。皆に心配をかけました」

「殿下!」

キルマーノックの元に来た途端に横からメイドのモーレンジィに抱きつかれた。

「でんかぁ、でんかぁ、ひっぐ、私もう心配で心配で」

「ごめんなさいモーレンジィ、ほら顔お上げ?きれいな橙色の髪がぐしゃぐしゃだわ」

「申し訳ございません!殿下!とんだご無礼を!」

慌てて同じメイドのロセスがモーレンジィを引き剥がした。

「いいのよ。貴方にも心配をかけたわ」

「殿下とお比べしたら私なんて些細なものです」

「では参りましょうか、首相とスキレン殿下がお待ちしております」

「えぇ」


 執務室に向かうと、スキレンとグレンが立って出迎えた。

「お姉さま!」

「スキレン!」

姉妹は目が合うなり抱き合った。

「あぁ、本当に良かった!」

「私の代理をしてくれて本当にありがとう」

アイラはスキレンの顔を見た。わずか2日ほどではあったはずだが儚い顔に焦燥が出ていた。


「ありがとう」


そう呟き、スキレンから離れるとアイラは周りを見渡した。

国家元首の執務室といえど、広くはない空間に大臣、議長、法官が20人ほど詰めて入室してきていた。全員、ボロボロの服に憔悴しきった表情をしていたが、その眼だけは輝いていた。

「皆、心配をかけました。我々に残された時間はわずかです。我らの国民の為、これから産まれてくる未来の為、命を賭してやれる最善の事をしましょう」

女王の言葉に全員が耳を傾けていた。


アイラは静かに笑って腰に手を当てた。


「ほら、ボサっとしてないでやりますよ!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る