第173話:異世界賢者は勝負する①

「じゃ、決まりだな。水泳かビーチバレー、どっちがいい?」


 迷っている間に勝手に話を進められてしまった。


「俺はどっちでも良いが、水泳の方は全員泳げるかどうかってところだな」


「ん、どういうことだ?」


「俺以外は海に来るのが初めてなんだ」


「なんと、そういうことだったか。じゃあ、水泳は厳しいかもな」


 俺とアルフレッドのやり取りの中、ほぼビーチバレーで確定しようとしていたその時。


「私、多分泳げるので試しに泳いでみますね」


「私も運動神経良い方だし、なんとかなる気がするわ」


「やってみないとなんとも言えないよね」


「みんなできるならアリスもできる気がする」


 お前ら、その自信はどこから来るんだ……?


 と思いつつも、万が一の可能性がある。足がつく程度の浅瀬かつ、いつでも俺が助けられる状態で四人を見守ることにした。


 結果は——


「これ無理な奴でした! ユーキ助けて……っ! ゴボボ……」


「なんか浮かないんだけど……あ、これ無理」


「ちょ、ユーキ君、これ絶対溺れるよ……っ!」


「ぶくぶくぶくぶく……」


 案の定というべきか……。ど素人が最初から泳ぐなんて無理だった。


 まあ、多少泳げたとしても競争なんて論外だとも思っていたが。


「ああ……こりゃあ、ちょっと想像以上に厳しいな。ビーチに戻るか」


 四人が想像以上に泳ぎが苦手だったためにアルフレッドは苦笑いしていた。


 俺は浅瀬で溺れかけているアレリアたちを救出し、砂浜に帰還。


 海から出た後は、アルフレッドたちに連れられビーチバレー用のコートがある場所に移動した。


「ルールは、先に二十一点を取った方が勝ち。どちらかが二セット先取するまで続ける。お互い五人全員で戦う。他は一般的なルールにしようと思うが、どうだ?」


 アルフレッドが尋ねてきた。


 ビーチバレーの公式ルールは基本的に二人制、もしくは四人制。


 五人でやるのは変則的だが、これはお遊びなので気にする必要はないだろう。


 というか、ここは異世界なので日本の基準に当てはめる方がおかしいのである。


 男女混合でやる時点で今更な話なのだが。


「問題ない」

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