第171話:異世界賢者は水着を買う
◇
というわけで素晴らしいエメラルドグリーンの海が見える砂浜にやってきた……とスムーズに進めば良かったのだが、裸で遊ぶわけにはいかない。
俺たちは水着を選びに商業区に移動し、装備店へやってきた。
「むむ、どれにしましょう……悩みますね」
「胸のサイズで絞られるけど、誰かと被るのはちょっとね……」
「これだとちょっと子供っぽいかなぁ?」
「アリス、なんでもいいからいっぱい種類あるの逆に困る……」
四人は各々かなり真剣に悩んでいるようだ。
水着なんて濡れても平気で丈夫で動きやすいものならなんでも良いと思うのだが……まあ、この辺は考え方だな。
「よし、決めた」
俺は物色を初めて三秒で即決。
黒に白のラインが入った無難なデザイン。誰が履いても似合わないことはないだろうというのが決め手だった。
「もう決めたのですか!?」
あまりにも早い俺の判断に驚くアレリア。
「まあな。じゃあ、俺は隣の武器コーナーに行ってくるよ」
そう言い残し、俺は一人で移動する。
「スイ、まだ選んでないよ?」
「オレも〜」
そんなことを言ってくる二体の翼竜。
「普段服を着ないのに水着は着たいのか?」
「あ、別にいらないかも〜」
「よく考えたらオレもいらなかった」
なんだこの無駄なやり取りは?
やれやれと嘆息していると、武器コーナーに到着した。
武器コーナーには剣、弓、杖など様々な種類の武器が並べられている。俺は剣を扱うエリアから何か良いものがないかと物色する。
高価なものだと金貨千枚……つまり日本円換算で一千万円の剣なども並べられている。
「剣をお探しですか?」
白髪、整えられたデザイン髭の爺さんが話しかけてきた。首から下げられた名札には店主と書かれている。
「今の剣に不満があるわけじゃないんだが、今よりも良いものがあればと思っているんだ」
魔剣ベルセルクと聖剣エクスカリバー。
この二本はかつて、前代の賢者が使っていた伝説の剣だと以前聞いた。だが、前代の賢者が使っていたからといって俺も使わなければならない道理があるわけではない。
今よりも良いものがあれば乗り換える。冒険者として当たり前のことだ。
「ご予算はどのくらいで?」
「良いものがあればいくらでも」
「い、いくらでも……ですか。ちなみに今お使いの剣は……?」
ああ、そういえばアイテムスロットに収納したままだったな。
俺は二本の剣を取り出し、店主に見せた。
「何もない空間から剣が……!」
「ああ、これは特殊な魔法なんだ。気にしないでくれ」
「なんと、魔法も使えるのですな。むむ……それにしてもこれはすごい!」
店主は俺の剣を一目見ると、目の色が変わった。
「どちらも強いオーラを感じる剣ですな。これほどの代物は一度も見たことがない。名工と呼ばれる職人でも私が知る
限りこれを打てるものはいないでしょうなぁ……」
これ、そんなにすごい剣だったのか。
他の剣を使ったことがないので比較対象がなかったのだが、想像以上に優れたものだったらしい。
「ってことは、これ以上の剣はないのか?」
「そうですな。少なくともうちでは……。不甲斐なく申し訳ない」
ペコリと頭を下げる店主。
「いや、大袈裟だよ……。あっ、これの会計お願いしたいんだけど」
これ以上剣の物色をしても仕方がなさそうなので、水着代金の支払いを済ませ、四人の買い物が終わるのを待つのだった。
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