第140話:パーティの危機①
◇
ハルカが心配していた三人組のパーティは、王都から南西に二十キロほど離れた場所に位置するカルロン渓谷に到着。
天気は良好だが、緑はなく岩肌しか見えない。
両サイドを崖に囲まれ、昼だというのに薄暗い雰囲気の場所だった。
一行はさっそく緑色の豚のような魔物——オークと戦っていた。
「とりゃあああああ————!!」
一体ずつ倒す作戦。剣士であるパーティリーダーのアインがオークの間合いに飛び込み、大きな剣を両手で力いっぱいに振るう。
アインは身長百八十センチ、逆三角形のマッスルボディを持つ巨漢。そんな彼の攻撃は迫力十分。
だが——
キンッ!
アインの剣と、オークの槍が衝突する。
「くっ……」
オークを圧倒するには力が足りない。ジリジリと押されるアイン。
だが、その瞳に諦めの色は皆無だった。
「……今だ! ハルク、ルーリエ!」
アインの合図。
長身ではないものの、凛とした雰囲気を持つ双剣士のハルク。アインの合図とほぼ同時に足音なく忍び寄る。
一瞬にしてオークの背後を取り、敵が気配に気づいた頃には——
ザンッ! ザンッ!
二回の剣戟がオークの背中にクリティカルヒット。
ギエエエエェェェェ!!
オークの背中から多量の血が吹き出す。
「下がるぞ!」
「ああ!」
魔物の悲鳴が聞こえるのと同時に、アインとハルクは後退。
どこか柔らかな雰囲気を持つ少女、ルーリエがオークに杖を向けている。
ルーリエの杖の周りに魔法展開中に現れる幾何学模様が見えた。
オークはまだ生命力を残しているものの、背中のダメージにより動きがやや鈍くなっている。
オーク立ち上がると同時——
ルーリエの攻撃魔法『火柱』が放たれた。
槍の如く鋭く、轟々と燃える火柱が高速で飛んでいき、オークの腹に衝突。
ドオオオオオンンンンッ!
轟音とともに、舞い上がる黒い砂煙。
数秒が立ち、煙が晴れると、そこには絶命したオークの姿があった。
「よしっ!」
ハルクが小さくガッツポーズする。
アインとルーリエの二人も緊張が解け、ほっとした表情を浮かべていた。
「ハルク、ルーリエ。見事な連携だった」
「ありがとうございます。でも、ハルクが魔物の背後を取れたのも、私の魔法を上手く当てられたのも、アインがオークを足止めしてくれたおかげですよ」
「そうだぜ。アインがいなきゃ大怪我して終わりだったと思う。ま、それもルーリエがトドメを刺してくれなきゃジリ貧だったけどな」
三人が三人ともパーティメンバーを高く評価し、信頼関係が築けている。だからこそ当たり前のように高い水準の連携プレイが成立していた。
作戦が上手くいき満足気な三人だった。
しかし——
「いつもならここで怪我しちまって、アイリスの回復魔法のおかげでなんとかなったってとこまでバカ話してるのにな……くそ!」
アインの一言により、冷静な顔になる二人。
「俺たちが無理してBランクの依頼を受けたのはアイリスを助けるためだろ。アイリスはまだ生きてる。俺たちが戻るまで耐えてくれれば……なんとかなる。絶対にだ」
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