第129話:アリスがぐずるんだが②
預ける相手がアレリア、ミーシャを任された俺だとしてもさすがにダメだろうと嗜めるだろうと思ったのだが——。
「ふむ、それは名案だな!」
へ?
「そうね、ユーキ君が良いなら。まさかこんな形で社会復帰するなんてね」
は?
ユリウスさんとリリスさんの二人はニコニコしてアリスの願いを支持したのだった。
いや……そういえば、この人たちはそうだったな。
アレリアはともかく、ミーシャとは出会って間もない。それにもかかわらず結婚を許してるんだもんな。……今更だったか。
「アリス姉さん、良かったね」
「明日からも一緒にいられるんですね!」
アリスの肩をポンと叩くミーシャ。抱きつくアレリア。
漫画の一件で数年も冷え切っていたようには思えない仲睦まじげな姉妹の姿がそこにはあった。
もともとはこんな感じだったのかもしれない。
「あの……ユリウスさん、リリスさん。いいんですか? 本当に」
「ん?」
「アレリアはともかく、急にミーシャとアリスも出てしまうと寂しくないかなって」
ミーシャはもちろんのことだが、ずっと部屋の中に閉じこもっているアリスだって同じ屋根の下にいるのといないのとでは違うだろう。
「そりゃ……そうだな。だが、いずれはこういう日が来ると覚悟はしていたさ」
「そういうもんですか」
「うむ。それにだ、娘がいなくなるのは寂しいが……リリスとの時間が増えると考えると、それも悪くない。な?」
リリスさんの肩に手を伸ばすユリウスさん。
「ふふ、そうね♡」
嬉しそうにユリウスさんの腕に身を任せるリリスさん。
前にも感じていたことだが、結婚生活二十年くらいのはずだが、まるで新婚カップルである。こんな感じなら、俺が思っているより娘が巣立っていくことの寂しさはないのかもしれない。
「じゃあ、改めて出発します」
今度はアリスも連れて、アースの背中に乗り込む。
「う、重い……」
「アース……悪いな」
ミーシャとアリスが増えたことで、行きより百キロ近く重くなっているはずだ。アースがボソッと言ってしまうのも無理はない。
スイと分散して乗り込むのが効率が良いと思うのだが——。
「約束は約束〜」
スイは眠そうな顔を俺の肩に乗せ、アースを応援するのみだった。
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