第128話:アリスがぐずるんだが①
翌日。
全ての荷物をまとめた俺たちは帝城の屋上に来ていた。
アースが巨大化し、俺たちが乗り込むのを待っている。行きはスイが頑張ってくれたため、帰りはアースの担当という取り決めになったらしい。
本来なら門の前まで行き出国手続きをしなければならないが、特例でこのまま出国して良いとのこと。
ユリウスさん、リリスさん、それとアリスが見送りに来てくれている。
「元気でね。二人ともたまには手紙頂戴ね」
「うん、心配しないで」
「お母様、大袈裟ですよ。王都からここまで三時間ちょっとですし」
「あら、そうなの」
アレリアとミーシャが母リリスと別れの挨拶をしている。
しんみりとした空気の中、天然なのかアレリアはそれほど時間がかからないことを指摘。
確かに空の移動なら三時間で移動できる距離。とはいえ、気分というものをもう少し大事にしても良さそうだが……。まあ、これも含めてアレリアだから仕方ない。
「じゃあ、そろそろ行きま——」
言いながら、アースに乗り込もうとした時だった。
「ん?」
服を引っ張られる感覚があり、振り向く。
俺の服を引っ張っていたのは、アリスだった。今にも泣きそうな顔でこちらを見ている。
「行かないで……」
どうやら、アリスにとっても別れが寂しいと思ってもらえていたようだ。
その気持ちは嬉しいし、俺だってアリスと別れることの寂しさはある。
だが——
俺は身体をアリスの方へ向け、目を合わせる。
「短い間だったけど、俺も楽しかったよ。だけど、ごめん。戻らなくちゃいけないんだ」
優しい口調で説明すると、アリスは俺の服の袖から手を離してくれた。
納得してくれたのだろう。
「アレリアも言ってたけど、行き来にそんなに時間はかからない。また来るよ」
そう言い、アリスに背を向けようとしたその時。
「じゃあ……アリスもついていく」
「え?」
思わず、気の抜けた声で聞き返してしまう。
今……なんて言った?
「だから……アリスも一緒に王国に行くっ!」
俺の胸にガバッと抱きついてくるアリス。
?????
俺の頭は疑問符で埋め尽くされていた。
別れが名残惜しくてここにいてほしい——まではわかる。なぜ一緒についていくという発想になるのだろうか?
「え、ちょっとアリス姉さん……?」
「えっと……?」
「ユーキ、どうするの?」
アレリア、ミーシャ、アイナは三人ともが目を丸くしていた。俺と同様に困惑しているのだろう。
「えっとだな……俺からはついてくるなとは言うつもりはない。勝手についてくる分には俺がとやかく言うことじゃないしな」
アレリアと出会った当初にも似たような会話をしたような気がする。
しかし、アレリアとアリスでは状況がまるっきり違う。
「でも、ユリウスさんとリリスさんが許すかってことになるんじゃないか?」
アレリアは家出した先で俺と出会い、その流れで一緒に過ごすことになった。ご両親——ユリウスさんとリリスさんの考えを聞く間もなく事が進んだのである。
アリスの場合は、ご両親が目の前。俺が良い、悪いを判断してどうにかなるという話ではない。
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