第122話:アリスがすごいんだが②

 アリスの状況を一言で説明すると、ギクっとした反応。当たり前だが、自覚はあったのだろう。


 引け目を感じる感情は理解できる。自分自身を納得させるために変なキャラを演じているのかもしれない。


 目を引く白い肌は紫外線を受けていないゆえのものだと考えると、しっくりくる。


「人間界の言葉で表現するなら、そう……かも」


 シュン、となるアリス。


 俺は、少し落ち込んでしまったアリスの肩をポンと叩いた。


「まあなんだ、引きこもりってのも悪いもんじゃないと俺は思うぞ。勘違いさせてちゃったかもしれないけど、俺は引きこもりを貶めるつもりはない」


「え?」


 俺も晩年は引きこもってネトゲ三昧だったし、学生時代もどちらかといえば一人で過ごす時間が多かった。


 偉そうにどうこう言える立場ではないし、むしろ外に出るのが絶対的に正しいという価値観に疑問を感じていた側の人間なのだ。


「外に出る必要がない環境で外に出てないだけのことだろ? 色々な生き方があっていいものだと思うぞ」


 そう、俺は多様性を大事にしているのである。決して、アリスの状況とかつての自分を重ねて自己弁護しているわけではない。


「ふ、ふーん。あなたって、優しいのね」


 なぜか、上目遣いで俺の目を見つめてくるアリス。


「それはそうと、いつも部屋の中で何して暇潰してるんだ?」


 現代日本で引きこもれるのは、楽しい娯楽があるからという事情もあった。


 ゲーム、漫画、ラノベ、アニメ、映画……その他色々な一人でも楽しめるコンテンツがあるからこそ、外に出るよりも楽しく部屋の中で過ごせるのだ。


 寝ている時間以外は何かをしているはずで、どのように過ごしているのかが気になった。


「ユーキ、机の上に絵があるよー。アリスが描いたのかな〜?」


「絵?」


 俺の陰に隠れていたスイがいつの間にか移動し、アリスの机の上を眺めている。


 アリスの部屋の中は生活に必要なベッドなどの最低限のもの以外には、人体模型や人形、魔物を模したフィギュアなど変わったものが多い。


 よく見れば、少しだけ空いた引き出しの隙間からは画材のようなものも見える。


 絵を描いて過ごしていたのだとすれば、納得がいくものばかりだった。


「あっ、ちょっと、見ちゃダメ!」


 絵を見られるのが恥ずかしいのだろうか、全力で止めようとするアリス。


 しかし既に俺は机の上に置かれた紙を手に取っていた。


 紙には確かにスイの言う通り絵が描かれている。


 しかし、これはただの絵ではない。俺がよく知るものだった。



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