第111話:カタンが怪しいんだが②
帝都からは、どんどん距離が離れている。
しかも、いつも通りの動きならなぜか帝都の住まいに帰っているのだから、さらに謎が深まってしまう。
俺たちも帝都の外に出て、カタンの姿が見えたところで隠れた。
カタンは巨大な岩に手をかざす。
すると、吸い込まれたように消えてしまった。
「え、今いったいどこに……?」
「巻かれてしまったのでしょうか……?」
「いや、魔力結晶の位置がめちゃくちゃ離れてる。巻こうとしたというより、あの岩が遠くのどこかに繋がってるってことなんだろうな……」
どういう仕組みなのかはっきりとしないが、あの岩にゲート的な仕掛けが施されていることは間違いなさそうだ。
「どこに移動したのですか?」
「距離がちょっと離れすぎてて多分だけど……帝都内の北北東……かな?」
「北北東って……⁉︎ な、なんでそんなところに勇者が……!」
俺の答えを聞いた途端、ミーシャが震えながら言葉を発した。
「そこには何があるんだ?」
「魔法兵器の研究所があるはずだよ。あの区域だけは普通の帝都民じゃ入れないようになってて、セキュリティも厳重」
魔法兵器。立場上聞いたことはある。
戦争用の魔道具であり、ものによっては小さな村くらいなら吹き飛ばせる代物である。
発動時間とコストの問題で小規模の対魔物や対人ではあまり役には立たないが、無防備な状態で相手を狙うなら破壊力は抜群。
「そうなのか……」
カタンの狙いはわからないが、少なからず俺に恨みを持っていることは確かだ。まさかとは思うが……王都を攻撃するために、帝都の研究所と手を組んだのか……?
いや、それはさすがにおかしいか。
「一応聞くんだが、魔法兵器の研究所がカタンと手を組むなんてことはないよな? 国の機関なんだし……」
「いや、そうとも限らないよ。帝国内では保守派と改革派の両方の帝国民がいるから。改革派の方が少数派だし、思想の調査も一応はしているけど、人の心の正確なところは誰にもわからないわ。研究所にも、改革派の人間が……それも、それなりのポストにいたとしてもありえない話だとは言えない」
「そういうもんなのか……。ということは、カタンは何か帝国を揺るがすような危ないことを考えてるかもしれない……と考えて方が良いのかもしれないな」
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