第110話:カタンが怪しいんだが①
◇
翌日の昼。
いつもこの曜日のこの時間は外に出かけ、その後行方を眩ませるのだという。
後を追おうとしてもいつの間にか振り切られてしまうので、どこに行ったのか不明なのだとか。
ともかく、カタンがいったいどこで何をしているのかを確認しなければならない。
それによって対処方法も変わりそうだからな。
俺たちはカタンが住む家に張り込み、出てくるのを待った。
今日もいつものメンバーに加えて、ミーシャがついてきている。
「ユーキ、カタンに気づかれずにどうやって追いかけるつもりなの?」
アイナが小声で尋ねてきた。
「ああ、それなんだが……これを用意してきた」
「……何これ?」
「ガムですか……?」
声に出したのはアイナとアレリアだけだが、ミーシャも同様に怪訝な顔をしている。
「このガムは、昨日ミーシャに教えてもらった通信結晶を埋め込んであるんだ」
「え? でも通信結晶はもっとゴツゴツした石みたいなもののはずだけど……。それはただのガムでしょ?」
「違うんだな、これが」
信じがたいようなので、俺はアイテムスロットからガムと通信結晶を取り出す。
「俺には『アイテム合成』っていうスキルがあるんだ。ガムの性質と、通信結晶の性質を合成することで、ガムの見た目をした通信結晶が出来上がる」
まったく別の物でも合成できるというのは、ちょっとした驚きであると同時に、これは使えると思った。
ポーションのように同じ見た目をしたものだとほぼ見た目は変わらないが、ガムと通信結晶のようなまったく別の形、材質をしているものだと、任意の精神を組み合わせて合成することができる。
単にポーションを一まとめにするスキルかと思いきや、思ったよりも汎用性が高そうなスキルだった。
「この通り、合成されただろ? ちゃんと通信結晶として使えるんだ」
「す、すごいわ……」
「こ、こんなの見たことないよ……」
「いつの間にそんなことできるようになったんですか⁉︎」
驚愕の声を上げる三人。
「スキル自体はちょっと前に覚えたんだ。そんなことより、準備をしよう」
カタンが出てくるであろう場所にネバネバのガムを設置し、出てくるのを待った。
しばらくすると話の通りカタンが出てきた。
「あっ、踏みましたね……!」
アレリアが小声で呟く。
どうやら、作戦は成功したようだ。
通信結晶には俺の魔力を覚えさせている。
都度カタンや、カタンの話し相手との会話が俺に送られてくるし、俺自身の魔力なので、今どこにあるのかもわかる。
こうすることで、追跡せずして追跡することができる環境が整った。
俺たちは動かずに何か行動を起こすのを待つ。
しばらくすると、通信結晶から声が聞こえてきた。
『おい、門番。今日の謝礼だ』
『うひょー! どうもどうも。通っていただいて結構です』
『うむ』
その後、キィーという、帝都の門が開く音が聞こえてくる。
「村の外に行ったんですか……?」
「みたいだな。何が狙いなのかわからないけど……」
ユリウスさんからさらに詳細に聞いた話では、カタンは帝都に外に出ることはかなり厳しく制限されているとのことだった。
会話の内容からは、おそらくカタンが賄賂を渡して外に出ている。
帝都に閉じ込められるような感覚が嫌になったとかで、単に外に出たかっただけなのか?
それとも、何か狙いがあるのか?
「ひとまず後を追いかけよう。どこに行ったのか気になる」
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