第96話:本物の大公爵なんだが②
「な、なんだその魔法は……⁉︎」
「驚いてないで手紙を確認してくれ……」
「う、うむ……帝印はあるな。しかし、帝印は有名なのだ。このくらいは事前に用意していてもおかしくない。しかしな? この帝印は特殊な魔道具で刻まれているのだ。こうして魔力を少し当てると、本物は赤く輝いてだな……って、なんだと⁉︎ 輝いてやがる……!」
「当たり前だろ……? 本物なんだからさ」
ちなみに王国の王印も似たような仕組みになっており、魔力を流すと青い輝く。
意外と一般の村人には知られていないのだが、どこの国も似たようなものを用意しているのだ。
「つ、つまり……本物の大公爵様か⁉︎」
「と、ということは隣にいらっしゃるのはアレリア様……‼︎」
「しかもその隣にいらっしゃるのはエルフの里の王女様ということに……⁉︎」
二人の門番が次々に悲鳴のような声を上げた。
「最初からそう言ってるだろ?」
「「た、大変失礼いたしましたああ——‼︎」」
「まあ、そっちは仕事をしてるだけだし、気にしてないよ」
「私も気にしていませんよ」
「疑うのは仕方がないわ」
「な、なんとお優しい……。いやはや、これほど早く到着されるとは……」
確かに、速達の使者ですら三〜四日かかるのだから、貴族の移動はもっと時間がかかると考えてるのは自然なことだ。
偽物だと疑ってしまったのも無理はない。
アレリアを保護しながらの移動ともなれば護衛の数も増え、普通なら大所帯になる。
短く見ても一週間、日程調整などもあるので、普通に考えれば二週間ほどはかかると思うのが当然と言えば当然ではある。
「それより、陛下に繋いでもらってもいいかな?」
「は、はい! かしこまりました! 案内の者がすぐに参りますので、今しばらくお待ちいただければ!」
「うん、ありがとう」
そう言われたので、帝都の中に入って、入り口で迎えが来るのを待つことに。
急に押しかけてしまった形なので、バタバタさせてしまった。
俺は全く気にしていないのだが、門番たちは待たせていることを気にしているようなので、少し心苦しい。
「すごく栄えた街並みだな。人も街も、活気がある」
「王都に来たときも思ったけれど、本当に都会って感じね」
「ええ、懐かしいです」
碁盤の目のように綺麗に整頓された帝都は、中心に帝城があり、四つの入り口のどこからでもアクセスできるようになっている。
入り口から帝城までは大通りになっており、横に少し小さな通りが分岐している。
計画された街並みゆえに、商店や人の通りが活発で、すごく賑わっていた。
王都もこの辺は見習いたいものだ。
前国王はあまり政策に積極的ではなかったから、諸々の問題が取り残されてしまっている。
本来の目的は白い魔法書に近づくため、アレリアを両親と再会させる——ことだったのだが、思いの外実のある旅になりそうだ。
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