第75話:伯爵が想像以上だったんだが①
そんなことを思いつつ移動すること約二十分。
大きな洋館の前まで来た。まるでパリの観光地にでもありそうな、趣のある石造りの屋敷だった。
「伯爵の屋敷はここか?」
「左様です」
恭しく答える長老。
「ご苦労だった。俺たちはこれからダスト伯爵に面会を申し込もうと思う。状況にもよるが……多分、この件が終わったら王都に直帰すると思う」
「もう戻られるのですか……」
「本当はもうちょっとゆっくりしたかったんだが、余計な仕事が増えそうな予感がプンプンするからな……」
ダスト伯爵の出方次第ではあるが、多分そうなる気がする。
このタイプの人間が素直に意見を聞き入れるとは思えない。何かしらの抵抗はあるだろうと考えておいた方が良い。
「だから、長老はこのまま村に戻ってくれないか?」
「わかりましたのじゃ……。この返しきれん恩、いつや必ず返させておくれ。それでは、失礼するのじゃ」
そう言って長老を村に返した。
「もともと二〜三日のスケジュール取りをしてましたよね……?」
長老の姿が見えなくなってから、アレリアが小声で尋ねてきた。
確かにもともとはゆっくりとロイジウス村を観光する予定と二人には説明していた。
「まあ、その通りなんだが……ダスト伯爵の一件はどうもちょっと拗れそうな予感がするんだよ。いや、俺が想定してるよりダストが賢かったら何の問題もないと思うんだが……」
「拗れそうな予感……?」
アイナが首を傾げた。
「いやなんていうかな、話を聞く限りでは勇者と同じ臭いをビンビンに感じるんだよ」
「あっ、もしかしてユーキはダスト伯爵が逆ギレして攻撃してくるって思ってるんですか?」
「そうならないといいなって思ってるよ」
穏便に解決できるなら、それに超したこたはない。しかし、そう願ったことで転生してから穏便に済んだことがないんだよなあ。
「賢者様の勘は当たるんだナー」
「ご主人様は頭いいからねー」
アースとスイが続けてそんなことを言ってくる。
「おいおい、嫌なこと言うなよな……?」
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