第74話:そんなに褒められると照れるんだが

「よし、飼えることになったぞ。名前は、そうだな……地属性の竜ってことだし、アースでどうだ? お前の名前はアースだ」


 これまた安直な気がするが——


「アース……良い名前ありがとナー!」


 喜んでくれたようで、何よりだ。


 ◇


 当初からは想像もつかない形にはなったものの、スイにアースを説得してもらうことで問題は解決することができた。


 おまけにもう一匹ペットが増える結果になってしまったわけだが……。


 まあ、スイにも同じ竜仲間(?)ができたのは悪いことではないはずだ。


 サァ——と雨が降る中、ロイジウス村に戻ると、村人たちが両手を上げて歓喜の声を上げていた。


「だ、大公爵様が戻られたぞ……」


「と、ということは……!」


「大公爵様が我らの村をお救いくださったのだ……!」


 ここまで持ち上げられると、何となく顔を出しづらいな……。


 いつものことではあるので、多少は慣れたものだが……。


 ロイジウス村の村人たちがずらり、その中心に、さっき俺が話した爺さん——長老がいた。


 ちょうどいいな。一度話したことがある相手だと話しやすい。


「よく帰られましたな……」


「ああ、なんとかなったよ」


 短時間で上手く行ったのは、村長から聞いていた事前情報によるものも大きかった。


「おや……? 連れている動物が増えているような気がするんじゃが……?」


「ああ、こいつか。こいつは話すと長くなるんだが……まあ、要するに、この村で言う、竜神様……ってやつかな?」


 俺が紹介すると、


「そうなんだナー、えっへん」


 と、アースも同調した。


「な、な、な、竜神様ですと!?」


 まあ、詳しいことは後でじっくり話すけど、端的に説明するぞ。


 俺は、ロイジウス森林に向かってから、黄眼の翼竜が出てきて、そいつを俺の配下に置いて、諸々の問題を解決して戻ってきたことをかいつまんで説明した。


「す、素晴らしい……。やはりすごいお方じゃ……」


 そんなに褒められるとちょっと照れるんだが……今はそんな場合じゃないんだった。


 村の危機を起こしたのはアースの仕業であり、もう問題は解決したかのようにも思われるが、まだやるべきことは残っている。


 ロイジウス領の領主——ダスト伯爵への責任追及である。


 アースが怒って人間に反旗を翻したのも、元を辿ればダスト伯爵の浅はかな独断が招いたこと。


 王国の中央政府が各地方の運営にあまり口を出さないのは、各地域の特性を深く理解できていないからだ。


 逆に言えば、地域特性に応じた政策ができないのであれば、領主として残しておく必要もない。


 小さな問題だったら注意して改善を促すなりもできたが、今回は問題が大きすぎた。


 守るべき民を守らず、王国政府への救援も怠った責は大きい。


 特別な事情がないのであれば、引導を渡さなければならない。


「村長、ダスト伯爵の屋敷まで案内してもらえるか?」


「あのアホ領主の屋敷じゃな……。うむ、ついてくるんじゃ」


 俺たち三人と二匹は、村長に連れられて屋敷に向かった。


 しかし……前代の領主まではまともだったことを考えると、貴族の世襲制というのもちょっと考えなくちゃいけないかもな。

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