第23話:やっと気付いたんだが
◇
Cランク依頼はサッと見ていたので、どんな内容だったのか少し覚えている。
確か、ゴブリン討伐の依頼があったはずだ。
だが、その前に——
「アレリアの武器を買おう。なるべく良いやつをな」
さっきの依頼の報酬が、1件で銀貨5枚。
100件こなしたから、金貨50枚の収入だ。俺的には50万円の方が感覚的にしっくりくるが——
ともかく、これだけのお金があれば、普通に買える武器の中ではかなり良いものが手に入るだろう。
以前に火事を抑えた武器屋を訪れた。
「おおっ、ユーキではないか! 顔を出してくれて嬉しいぞ」
「久しぶり……ってほどでもないか。今日は、アレリアが使う剣を用意して欲しいんだ。予算は金貨50枚。できそうか?」
「武器屋の店主に何を言っておる! 金貨50枚あれば、うんと強い武器を用意できる。少し待っておれ」
店主は店の奥に引っ込み、数分で戻ってきた。
「今日仕入れたばかりの剣じゃ。この武器、ちょっとした秘密があってな」
「秘密?」
「魔石が埋め込まれておる。対人戦ではちと力不足じゃが、魔物を相手にするのなら強力じゃろう」
「それは都合がいいな。でもそれ、金貨50枚で足りるのか……?」
「恩人のユーキのためじゃからのう。少しくらい無理はさせてもらおう」
「そうなのか……本当に助かった。大切に使わせてもらうよ」
アレリア用の剣を手に入れることができた。
思っていたよりも良いものが入手できたのは嬉しい誤算だったが、やることが変わるわけではない。
ゴブリンはガイドによればカルロン平原の端にある洞窟に巣を作っている。
巣は無数にあるらしいが、そのうちの1つに殴り込みをかける。
◇
「私が前を歩くなんて……本当に大丈夫でしょうか?」
洞窟の入り口。
剣を持ったアレリアが、俺の前に立っている。
「ダメなら俺が助ける。でも、大丈夫だと思うぞ。自分の力を信じてみろ」
「……わかりました!」
アレリアは観念し、洞窟に足を踏み入れた。
念のため、俺はアレリアに『神の加護』をかけておく。さらに念には念を入れて、魔剣ベルセルクをいつでも振れるようにしておく。
一歩入った瞬間。
キキキキキ!
待っていたかのように、ゴブリンが飛び出してきた。数は2体。
ゴブリンの見た目は、イメージ通りの緑色に、棍棒を片手に持っている。
俺は手出ししない。
アレリアに任せる。
「ってい!」
アレリアが剣を横薙ぎに振る。
——ゴブリンの腹にヒットし、絶命。
背後のゴブリンの障害物となり、勢いにブレーキがかかった。
アレリアは、その隙を見逃さなかった。
今度は剣を振り下ろし、頭に直撃。
キ、キキキキ……。
ものの一瞬で、2体のゴブリンを対峙することに成功した。
これは、俺が付与した『神の加護』の効果もある。
しかし、それは本質的ではない。
もともと、アレリアのステータスは高かった。
「私……倒せた……?」
「なかなかの手際だな。どうだ? いい加減強いってことがわかったか?」
「信じられないです! ユーキ、どういうことなんですか!? この武器のおかげですか!?」
「そうだな、ヒントとしては、国によって冒険者のランクは違うってことだな」
「国によって?」
「実はちょっと聞いた話なんだが、帝国のEランク冒険者は、王国基準だとCランクだったりする。さらにランクが上がればあまり違いはなくなってくるみたいだが、評価基準が違うから、アレリアが思っているより王国でのCランクの魔物は強くないってことだ」
「なるほど……そうだったんですね!」
「加えて言えば、帝国から国境を超えてこの国に来られたってことは、知らず知らずのうちにCランクよりも強い魔物を倒せているかもしれない」
「どういうことですか?」
「どこかの村にたどり着く前には、必ず人が少ない場所を通ったはずだ。でも、そういうところにいる魔物は強いことが多い」
「たしかに、人が少ないところの方が魔物が強かった気がします……。結構ギリギリの戦いでした」
「人里離れた場所の魔物の方が強い。……というより、強い魔物がいる場所に人は住みつかないってことだな」
だいたい、ゲームでもそんな感じだった。
村の近くのモンスターは弱い。でも、離れれば離れるほど強くなっていく。
インフレ対策のアップデートで超強化! みたいな開発陣のご都合も絡んでいたりするが、根底にはそういった現実に即した考えがあったのだろう。
「そんな強い魔物を倒して王国にたどり着いた冒険者が弱いと思うか?」
「思いません! ……そっか、私って実は強かったですね! でも、盗賊には簡単に捕まってしまいましたが……」
「まあ、いくら強いとは言っても、上には上がいるからな。その盗賊がアレリアを無傷で捕まえる余裕があるくらいの手練れだったってことだ」
捕獲するのは、倒すよりも難しい。
それも、傷を付けずにとなると難易度は跳ね上がる。
「でも、そうだとすると、その盗賊を一瞬で片付けてしまうユーキって……?」
「ん、なんか言ったか?」
「い、いえ……! やっぱりユーキはすごいと思っただけです! でも、私も自信を持ってランクアップできます。ユーキのおかげです」
「そうか、それなら良かった」
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