第17話:普通に集めただけなんだが
《新スキル『魔眼』を習得しました》
また新しいスキルを覚えたみたいだ。
スイを迎えた直後に新スキル。狙ってタイミングを合わせることはできないが、出来事が起こってからの予測はできるので、突然声が聞こえてきて驚くことはなくなった。
王都のギルドまで戻る途中で、『魔眼』を使ってみた。
カルロン平原は魔物が少ないが、いないということではない。ちょうど魔物を見つけたので、使ってみた。
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名前:スライム Lv.1
クラス:魔物
スキル:なし
HP:586/586
MP:420/420
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なるほど、魔眼っていうより、鑑定スキルみたいなものか。
2ページ目も確認する。
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攻撃力:E
防御力:E
攻撃速度:E
移動速度:E
魔法攻撃力:E
魔法抵抗力:E
精神力:E
生命力:E
魔力:E
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ステータス(詳細)で見られるのは自分だけだったが、魔眼なら魔物のステータスも確認できるってことだ。
初見でもバッチリどこが強いのか分析できるので、これは優秀なスキルだ。
しかしステータス(詳細)も無意味というわけではない。
視界に入っていないと魔眼は使えない。鏡がない場所が大半なので、使い分ければいい。
道中にいろいろな魔物のステータスを確認したが、今のところ全ての魔物に通用するようだ。
もしかしたらと思って、アレリアのステータスも覗いてみたのだが、なんとステータス評価まで全て見ることができた。
パーティメンバーのHPとMPは以前からも見られたが、さらに詳細な情報まで把握できるようになったということだ。
ステータス・オープンの呪文で見られる他人のステータスは非公開のものが多かった。
しかしこの魔眼があれば、スキルや評価まで見られる。
あまり他人の個人情報を覗くのは気が引けるが、ここぞという時には役に立ちそうだ。
◇
王都のギルドに戻ってきた。
依頼を終えたら、依頼内容のアイテムをギルドに納品することで達成になる。
ギルドの職員は交代制らしいので、今日はいつもの受付嬢ではない人だった。
朝は働いてたんだし、今までいたらさすがにブラック労働すぎてドン引きするからそれでいいのだが。
「『聖花』『青い薬草』『赤い薬草』の納品をしたいんだが」
「えっと……アイテムはどこでしょう?」
「ああ、ここだ」
俺はアイテムスロットに収納していたものを、納品用の数だけ取り出してカウンターの上に置いた。
かなり広めのカウンターだが、合計で800本の植物を置くと隙間はもうない。
「え、ええええ!? なんですかその魔法! っていうか、なんですかこの数は!」
質問が多い受付嬢のようだ。
「これは魔法なのか分からんが……数に関しては受けた依頼分だけだぞ。在庫はもう2〜3セットあるけど」
「こんなに大量の依頼があるはずが……って、一度に10件も受けていたんですか!? 朝に受けて昼にこの数を納品……しかも、まだ余分に持ってるって……絶対おかしいですよ!」
なぜか、疑いの目を向けられてしまう。
普通に回収してきただけなのだが。
「でも買ってきたにしては新鮮だし、他の冒険者に依頼するとなるとコストが合いません。……うーん、信じるしかありません」
「それで、依頼は達成したことになるか?」
「はい、もちろんです。数は正確に数える必要がありますが、まず間違いないでしょう。ギルド証をお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだ」
俺とアレリアはそれぞれギルド証を手渡す。
依頼はソロとパーティ、どちらでも受注できる。達成した時の報酬はパーティ内で分け合うことになるが、全員が達成した扱いになる。
「マツサキ・ユーキさんに、アレリアさんですね……え、もしかしてあなたが噂の!?」
ガバッと顔を上げて、受付嬢は俺をマジマジと見た。
やれやれ、こいつも勇者ではない俺のことを虐げるか。
「そうだが——」
「レグルス様を倒して最終試験では無戦闘勝利してしかもイケメンな新人がいるってことで話題が持ちきりなんですけど、これなら納得です!」
「お、おう」
イケメンかどうかは議論の余地があるが、それ以外はその通りだな。
ちなみに俺の自己評価はフツメンなのだが、異世界では基準が違うのかもしれない。
「あっ、しかも10件の依頼達成でお二人ともDランクに昇格です! ……って、ユーキさん今日初めて冒険者になったんですよね!? 初日でDランクに昇級って、前代未聞ですよ!?」
まあ、あのガイドに従ってたらそうなるよな。
あまりにも効率が悪い。
「前代未聞って言っても依頼10件くらいならすぐこなすやつもいたんじゃないか? 褒めてくれるのは嬉しいが、偶然だぞ」
「今までの最速記録は3日で、それがレグルス様です!」
「あ、うん……」
でもまともにやって3日ならかなり早いと思う。多分。
「これが新しいDランク用のギルド証です! これからもご活躍を期待しています!」
Eランクのギルド証はチタンっぽい感じだったが、Dランクのギルド証はエメラルドのような淡い緑の金属プレートだった。
ランクが上がるたびにちょっとずつ重厚感が増し、デザインもカッコよくなっていくのはゲームみたいで面白い。
さて、銀貨10枚が手に入った。余分に集めたポーション素材を少し売れば、新しい服が買える金額ではある。
明日はひとまず休んで、さっそく買いにいくとしよう。
もちろん、アレリアも一緒に。
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