第18話:錬金術を使ったらポーションのレベルが上がったんだが

 ◇


 宿に帰還した俺は、シャワーで汗を流してすぐに錬金術に取りかかった。

 今日覚えたばかりの新スキル『錬金術』。

 俺のレベルではまだスキルレベルを上げることはできないが、レベル1でどこまで使えるものなのか確認しておきたい。


 アイテムスロットから、『聖花』『青い薬草』『赤い薬草』を取り出す。

 そして、錬金術を使ってみた。

 なお、ポーションを入れておく瓶は帰りに買っておいた。


 魔力ポーションは、『聖花』と『青の薬草』。

 生命力ポーションは『聖花』と『赤の薬草』。


 まずは、魔力ポーションを試してみよう。


 『錬金術』を使用すると、『聖花』と『青い薬草』が淡い光に包まれていく。

 そして——


「できた。どこからどう見ても魔力ポーションだ」


 使用MPは10ほどだった。

 次に、生命力ポーションの製作に取り掛かる。

 これも問題なくできた。


 ・魔力ポーション×10

 ・生命力ポーション×10


 それぞれ10個ずつ作ってみたが、失敗なくできた。


 なかなか有用なスキルだ。

 だが——ポーションの値段はさほど高くない。ポーション1本の値段は銅貨5枚ほど。

 日本に住んでいた頃の基準で言えば500円。ワンコインだ。


 冒険者がよく使うアイテムだけに、供給過多で安いのだ。


 供給不足の時に自分で作れるのはメリットだが——

 はっきり言って、現状ではコスパが悪すぎる。


 売れば儲かるが、他のスキルに比べてなんだか地味すぎる気がする。


「そういえば、錬金術ってことは……」


 『錬金術』という言葉の意味を考えてみる。

 今俺が作ったポーションは、スキルがなくても普通に作れるものだ。

 材料をそのまま合成したに過ぎない。面倒な過程はバッサリ無くなっているみたいだが、錬金術ではない。


 俺は、魔力ポーションに錬金術を使ってみた。

 2本の魔力ポーションを消費する。

 すると——


「なんだこれ……!?」


 魔力ポーションは魔力ポーションなのだが、普通のものとは違う。

 わずかに輝いているのだ。

 光に反射しているのではなく、発光している。


 生命力ポーションでも試してみる。

 2本の生命力ポーションを消費して、錬金術を使う。


「え……?」


 消費した生命力ポーションだけが消滅し、輝くポーションは現れなかった。

 魔力ポーション限定なのか……?


 いや、まだ結論を出すのは早い。

 もう一度試すと、今度は輝く生命力ポーションの製作に成功した。


「失敗することもあるってことか」


 錬金術というものが、どういうものなのかだんだんと分かってきた。


 ・通常の製作ができる

 ・同じアイテムを合成することができる

 ・失敗することもある


 現時点でわかるのはこんな感じだ。


 それから色々試した。

 輝くポーションに錬金術を改めてかけてみたり、同じものを何個も作った。

 そこで分かった検証結果としては——


 ・ポーションLv1(通常)からポーションLv2(輝く)の成功率は50%

 ・ポーションLv2(輝く)からポーションLv3(さらに輝く)の成功率は25%


 新しい服の購入資金のため、素材不足でLv4へは挑戦できていないが、さらに成功率が下がるのだろう。

 もしかすると、『錬金術』のレベルを上げることで成功率が上がったりということがあるかもしれない。


「ユーキ、シャワー終わりましたよ。そろそろ夕食の準備を——って、なんですかこれ!? ポーション……に見えますけど、こんなの初めて見ました!」


 シャワーを終えたアレリアが出てきた。

 アレリアが驚くのも無理はない。俺も最初は驚いたのだから。


「ポーションのレベルを上げてみたんだ。まだ試してないけど、普通のポーションよりも性能が高い……と思う」


 じゃなけりゃわざわざ錬金術で本数を減らす理由がないしな。


「何か変なものとか入れてないですよね……?」


「原料は『聖花』と『青い薬草』と『赤い薬草』だけだ。普通のポーションと変わらない」


「それでこんなのが出来るんですね……! っていうか、なんの設備もなしでポーションが作れて、自分で素材を取って来られるって、ポーション商人になったら凄いことになりませんか!?」


 そう言われてみれば、確かにそうだ。


「自分で売るのは面倒だけど、ポーション商人に卸すって感じならいいかもな。商売のノウハウは商人の方が上だし、口に入れるものだから信用を得るまでに時間がかかる。おまけに売れる量の規模が違うから儲けも桁違いだ」


「ユーキは天才ですか!? なんでそんなことまで頭が回るんですか!?」


「ん? 常識じゃないか?」


 分業制の方があらゆる方面で効率が良いし、リスクヘッジになる。

 店を開くとなると初期資本が必要だが、卸すだけなら店を構えなくて良いのでその分も浮く。

 常識的なことだと思うのだが。


「全然常識じゃないですよ! 少なくとも私では思いつきません!」


「そうなのか……」


 大丈夫か? この国。というか、この世界。

 中世ヨーロッパっぽい雰囲気だから、教育がまだ未成熟なのかもしれない。


 アレリアが皇族だということを考えれば、庶民の水準を想像すると頭が痛くなるレベルだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る