第14話:納品物が簡単に集まってしまったんだが
宿に帰還し、アレリアに冒険者になったことを報告してから、すぐにギルドに向かった。
「最終試験の後なのに大丈夫ですか!?」と聞かれたが、「しっかり寝たから大丈夫だ」と答えると、「やっぱりユーキですね」と言われた。
何がやっぱりなのかわからない。
「せっかく冒険者になったんだからどんどん魔物を倒して稼ぎたいよな」
「うーん、でもEランクはほとんど討伐依頼は受けられませんよ。採集依頼がほとんどです。簡単な依頼でギルドの仕組みを理解せよってことらしいです」
「なんかガックリって感じだな。この依頼の報酬は——銀貨1枚か。酷いな」
「Eランク冒険者より普通の村人の方が稼いでいるのが普通ですからね。早くDランクになって討伐依頼を受けられるように頑張りましょう」
「そう言えば、アレリアのランクっていくつなんだ?」
「ユーキと同じEランクです!」
「そうか。ってことはアレリアが依頼を受けてもらうってこともできないか」
「役立たずでごめんなさい……」
「いや、いいんだ。採集依頼をいくつこなせばDランクに上がれる?」
「10回こなせばすぐに上がれるはずです。 DからCに上がるのは大変って聞きますけど」
「そうか、じゃあ依頼をとりあえず10件受けておこう」
「一気に10件も受けるのですか!?」
「もちろん選別はする。近くで手に入るものだったり、同じものを納品する依頼なら複数受けておいて同時進行で進めた方が効率が良い。まあちょっとしたテクニックだな」
ネトゲでは面倒なデイリークエストをいかに短時間で済ませられるかを考えていた。
目先の報酬よりも、こなしやすい依頼を選ぶというのも立派な攻略法だ。
「さすがはユーキです! 確かにその方が効率が良さそうです!」
「じゃあ決まりだ。全て王都の近くにある『カルロン平原』で採集できる依頼を受けていこう。依頼は、これと……これと……よし、こんなもんだろう」
掲示板に貼られている10枚の依頼書を剥がして、その全てを受注した。
受注した依頼は、いずれもポーション製作に使われる植物だ。
依頼内容によって集める種類や個数はまちまちだが、まとめると以下のようになる。
・聖花×400
・青い薬草×200
・赤い薬草×200
アレリア曰く結構ハードらしい。
◇
カルロン平原は、王都の周囲を囲むように広がっている。
門を一歩出れば、現地に到着というお手軽さである。
「カルロン平原って言っても広すぎてよくわからないな」
「おおよその生育地はここから北に向かったところだとガイドには書いてありますが……」
初めて依頼を受注する冒険者には、王都周辺の地図や依頼の手助けとなる情報が載っている分厚い冊子が支給される。
Eランク冒険者用のページに俺たちが受けた依頼の情報が載っていたので確認したのだが……。
「大雑把すぎるんだよな。北って言っても範囲が広すぎる。んー、もうちょっと効率が良い方法ないかな」
俺は、パラパラとガイドのページをめくっていく。
「そういえば、集めるアイテムに関する情報も載ってるはずだよな」
「載っているとは思いますが、調べるまでもなくポーションを作るためのアイテムのはずですよ?」
「いや、俺が気になってるのはそこじゃない」
索引から、『聖花』『青い薬草』「赤い薬草』をそれぞれ調べる。
————————————————————
【聖花】……王国全域で自生する。魔力を受け成長する。ポーションの材料になる。
【青い薬草】……王国全域で自生し、とりわけ森林でよく見られる。魔力ポーションの材料になる。
【赤い薬草】……王国全域で自生し、とりわけ森林でよく見られる。生命力ポーションの材料になる。
————————————————————
やっぱり、そういうことだったか。
「アレリア、向かうのは森だ。ここから一番近いのは——カルロン森林か」
「どうして森なんですか?」
「青い薬草と赤い薬草はガイドにも森林でよく見られるって書いてあるし、聖花に関しては魔力を受けて成長するって風に書いてある」
「あっ、確かにそうですね!」
アレリアも気づいたようだ。
「森林は平原よりも魔物が多い。——っていうか、見たところ平原には魔物が全然いない。受ける魔力が少ない平原よりも、魔物の魔力が溢れてる森林に向かった方が効率が良いってことだ」
魔物の魔力云々は、覚えたばかりの知識だが、多分これで間違いないだろう。
ゲームでも序盤は手に入れにくかったアイテムが、後半になると容易に手に入るようになったりする。
そこで最初から後半の狩場でアイテムだけ回収してしまおうと考えたわけだ。
まあ、カルロン森林は王都に比較的近いということもあって、そんなに強い魔物はいないらしいが。
「ユーキさすがです! でも、どうしてガイドには平原で集めるよう書かれているのでしょうか……」
「Eランク冒険者は討伐依頼が受けられないって話だったから、なるべく戦わずに依頼を達成できるようにと考えたんだろうな。普通の冒険者はガイドに書いてあったらそのまま信じるだろうし」
「確かに私たちも最初ここに来ましたもんね。……あっでも」
アレリアは、何かを思い出したかのように、居心地悪そうな表情になった。
「私……盗賊に武器を盗られて、そのままです。戦わないのなら大丈夫かなと思っていたのですが」
そう、アレリアは今武器を何も持っていないのだ。
カルロン平原は自分から攻撃を仕掛けない魔物しかいないので、これでも平気だという想定だった。
「なんだ、そんなことか。その点については大丈夫だ。俺の近くにいれば、敵は絶対に俺たちを攻撃できない。そういう魔法があるんだ」
俺には、結界魔法Lv2がある。
Cランク以上の冒険者が突破できなかったのだから、カルロン平原の魔物くらいなら平気だろう。
敵からの攻撃を全て防ぎつつ、落ち着いてガッポリとアイテムを回収すればいい。
「ユーキがそういうなら、信じます」
◇
徒歩で30分。それなりに遠い場所ではあったが、カルロン森林に到着した。
「す、すごい……! いっぱいあります! 聖花も、薬草も! 取り放題じゃないですか!?」
「やっぱり、思った通りだったな。よし、根こそぎ摘んでいくぞ!」
「はい!」
途中、魔物から攻撃を仕掛けられることもあったが、結界魔法のおかげで採集に集中することができた。
俺たちに近づけないと悟った魔物たちは、そのうち諦めて去っていく。
「よし——これで依頼分は全部だな。余分にちょっと集めておきたいが——」
《新スキル『錬金術』を習得しました》
「どうしたんですか?」
「いや、なんでもない」
このスキルの名前からして、俺はピンと来た。
もしかして、普通のポーションよりも強力なポーションが作れるんじゃないか……?
よし、材料となるものは集められるだけ集めておこう!
俺とアレリアが依頼量を超えて採集していたところ——
ピカッ!
空が一瞬煌めいた。
その煌めきは連続して発生し、その頻度はどんどん高くなっている。
「落雷……でしょうか?」
「落雷だが……ちょっと変だな。頻度が高すぎる」
「あっ、雷が止まりました。……でも、黒い雲はそのままですね」
そして、次の瞬間——
オオオオオオオオォォォォ…………。
甲高い叫び声が聞こえてきた。
結界魔法を張っているから叫び声程度に聞こえるが、なければ轟音に等しいだろう。
「ちょっと、気になるな。確かめようと思うが——アレリア、どうする?」
「私も、気になります。……でも、もし強力な魔物だったら……」
「なるべく遠くから確認しよう。王都の近くに強い魔物はいないとは思うが……」
俺は念のため、しまってあった魔剣ベルセルクをアイテムスロットから取り出した。
採集した全てのアイテムをアイテムスロットに収納してから、叫び声の正体を暴きに向かった。
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