第11話:アイテムスロットが使えて草すぎるんだが

 『システム操作』を試してみる。

 すると——


「ゲームと同じだな……」


 SMOの見慣れたユーザーインターフェースが表示された。


 ・ステータス(詳細)

 ・アイテムスロット

 ・スキルツリー


 マップと環境設定、ログアウトボタンは跡形もなく消えている。

 指で操作できるようなので、試しにアイテムスロットを開いてみる。


 当然というべきか、アイテムスロット内は空だった。

 アイテムスロットにアイテムを収納する方法がわからない。

 AR画像に銅貨1枚に放り投げてみた。


 すると——


 ・銅貨×1


 と、アイテムが追加された。

 アイテムが入ったのはいいが、取り出せなくなると困る。

 画像に触れながら、画像の外にアイテムを取り出すイメージで引っ張る。


「なるほど、これで具現化できるのか」


 操作方法は簡単だった。

 マウスでの操作とさほど変わらない。


 このアイテムスロット、ゲームでは気にしていなかったが、現実に使えるとなるとかなり便利だ。

 例えば重い剣を必要な時以外はしまっておくことができるし、旅をするにも大量の荷物を無理なく持ち運べる。


 念のため、魔剣ベルセルクを収納できるか確かめておく。

 ——問題なくできた。



 次に、ステータス(詳細)を試してみよう。

 ステータス・オープンで見られるステータスとは何が違うんだ?


 ————————————————————————

 名前:松崎祐樹 Lv.1

 クラス:賢者

 スキル:『システム操作Lv1』『神の加護Lv1』『気候操作Lv1』『大陸共通語Lv1』『結界魔法Lv1』

 HP:97795/97795

 MP:216950/216987

 SP:120


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 ————————————————————————


 SP——スキルポイントが追加されている以外には、目立った変化はないな。

 確か、スキルのレベルを上げることができたはずだ。

 もしかして、スキルツリーからレベルを上げられるのか……?


 さっそくスキルツリーへ……の前に。


「これ、1ページだけじゃないのか」


 [次へ >>]とあるので、押してみる。


 ————————————————————————

 攻撃力:SS

 防御力:S

 攻撃速度:S

 移動速度:SS

 魔法攻撃力:SS

 魔法抵抗力:SS

 精神力:S

 生命力:S

 魔力:SS


 [<< 前へ] [TOP]

 ———————————————————————— 


 このページではSが1つか、Sが2つかという違いしかなかったが、これは確かキャラの評価だ。

 E〜Sランクまでだったはずだが——ああ、賢者だけは限界突破していたんだったな。


 俺がキャラを動かしていたときはレベル99でこの評価だったはずだが、なんか色々ネジがぶっ飛んでるな。


 さて、能力評価を眺めていても仕方ないので、次はスキルツリーを開くか——

 と、その時。


「ユーキ、ご飯できましたよ!」


 アレリアが、手料理を作ってくれたのだ。

 この宿には、各部屋にキッチンがついている。その代わり、料理の提供がない。

 冒険者たちは外食するか、自炊をする。そのおかげで宿泊費が安くなっているという事情があったりもする。


「おおっ! これはすごいな。アレリアは料理が上手いんだな」


 見たことがない料理だが、赤、黄、緑がしっかり揃っていてとても美味しそうだ。


「ユーキに褒められると嬉しいです!」


 さて、スキルツリーについてはまた後でということにしよう。

 目の前にこんなに美味しそうな料理が並んでいるのだ。


 出来立てのうちに食べないとバチが当たる。


「思った通りだ! 美味い!」


 素材の味を生かしつつ、絶妙な味付けがされている。

 そういえば、ずっとコンビニ飯か外食だったから、手料理なんて何年ぶりだろう。


 大学入学と同時に東京に出てきたから、十年くらいか。


「喜んでもらえて良かったです……! 明日も頑張りますね」


「作ってくれるのは嬉しいけど、大変なら無理はしなくていいんだぞ?」


「いえ、私、やりがいを感じてるんです! 冒険よりも楽しいかもしれません」


「そうか。アレリアが良いなら、俺としては最高だよ。手伝えることがあれば、なんでも言ってくれ。多少はできるしな」


 一人暮らしを始めてすぐの時は多少料理をかじったものだ。

 一人分だと苦労して作っても大した節約にならないのでバカバカしくなってやめたが。


「ありがとうございます! 皮むきとか擦り下ろしとかお願いするかもしれません」


「ま、任せておけ。それは……得意分野だ」


「ふふっ、得意じゃないのバレてますからね!」


 なぜかアレリアにはバレてしまっていた。

 嫌いというわけじゃないが、そういう細々した作業は苦手なんだよな……。


 こうして、アレリアとの幸せな同棲生活を過ごし、すぐに最終試験の日はやってきた——

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