パンダ師匠


あなたはパンダを知っていますか?

笹を食べて生きている

………らしいですけど

そんなことはこの際どうでもいいことなので敢えて触れません

重要なのは

全身が白でもあり黒でもあるという点です

そこに尽きます

なんて生き物なのでしょう

わたしはパンダという生き物に未知の領域を教えられた気がします

だからパンダ師匠です

実際にパンダ師匠に逢いに行くことにしました

動物園からの脱獄に手を貸しました

やり方は至って単純です

まず最寄りの動物園に公共移動手段を使って行きます

そこで飼育員を脅します

自宅に連れ帰り軟禁しました

師匠はまずわたしに正しい笹の食べ方を教えてくれました

「まず、こうして笹を持ってだな」

毛むくじゃらの太い腕で笹を持ちました

そしてそれを口にあてがい、まるでしゃぶるように味を堪能し始めたのです

わたしもそれに倣いました

けれど内心、焼き肉が食べたかったのです

正直にその胸の内をさらけ出すことにしました

「お肉が食べたいです」

すると師匠は興味無さそうにこくんと頷きました

「師匠も、一緒にどうですか?」

提案しました

パンダ師匠は困惑した表情を見せました

「でもおれパンダだしなあ………」

パンダが焼き肉を食べるのは自然界的に問題があるそうです

結局、わたし一人で焼き肉を食べることになりました

けれどパンダ師匠は店の中まで付いてきてじっとその一部始終を見ています

「うまいのか?」

わたしは首を縦に振りました

すかさず師匠が畳み掛けてきました

「笹とどっちがうまいんだ?」

師匠の顔は真剣そのものでした

答えは既に出ています

けれどあまりにうまそうに笹をしゃぶっていた師匠のことを不憫に思い

「笹には勝てない………」

と呟きました

師匠はその嘘を見破りわたしを半殺しにするために立ち上がりました


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