あれ


天気予報を見た

現代に生きるおれたちは

まだやって来てはいない明日の空模様を事前に知ることが出来た

それは平安時代に生きる人々には信じられなかったことだ

「すごいのう」

おれの中の想像上の平安時代の人が呟いた

予想気圧配置に刮目しろ

テレビの向こうから森田は言った

「明日は曇りのちあれでしょう」

………あれってなんだ?

おれの疑問

早速、テレビ局に問い合わせた

「おい、森田を出せっ」

森田は尻を出して逃走した

そして明日という名の未来がやって来た

どしゃ降りのざんざん雨

「あれでしたね」

画面の向こうの森田はなぜか誇らしげ

続けた

「明日もあれですよ」

おれはキレた

「森田、殺すぞ!」

そう叫びリモコンを画面に叩き付けた


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