親愛なるおばあちゃんへ


おばあちゃん

世界でただ一人の

おれの親愛なるおばあちゃん

力尽きないでくれ

おばあちゃん

おれ、山でどんぐりを拾ってきたよ

おばあちゃんに全部あげる

それはおばあちゃんの大好物

人工呼吸器を一時的に外し口の中に押し込んだ

おばあちゃん

おれ、おばあちゃんのために永遠にどんぐりを拾っていてあげる

就活なんてそっちのけだ

他の誰のためにもそんなことは出来ないけれど

おばあちゃんのためならそれをしたっていい

だっておれはおばあちゃんの孫

そして一人の人間としておばあちゃんのことをリスペクトしてるんだ

一体、どうやったらそんなに皺々になれるのだろうか?

実際に横たわったまま何も発しないおばあちゃんの皮膚をなぞってみた

「すげえまるで迷路だ!」

永遠に辿り着くことのないゴール

「しかもガサガサじゃんかよっ」

驚愕した

保湿成分がそろって投身自殺していた

それがおれのおばあちゃんだった

死神はおばあちゃんのすぐ側まで近付いていた

だがおばあちゃんは死神と仲良くなって一緒にしぶとく生き延びた

残された方の我慢にも限界がある

「そろそろ、死んでくれねえかな」

ついにはそのような言葉まで飛び出した

「福祉とか全然、興味ねえし」

おばあちゃんはますます元気

ますます元気に意識を失いながらスパゲッティナポリタンを噛まずに吸い込んでいた


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