スカイツリー
スカイツリーをもぐことにした
邪魔だから
根元からもいでやることにした
かなりバリバリやった
地元住民がうるせえっておれに怒鳴って来た
おれは腹が減っていたから「勤労青年に何かよこせ馬鹿やろう!」って逆に怒鳴り返してやった
そうしたら昼飯時にほかほかの肉が届けられた
「これ、なあに?」
おれはなるべく可愛らしく見える角度で呟いた
連中の一人が言った
「カラスに決まってんじゃねーかこのバカ! てめえのお友達でも食ってろ! 毎日毎日バリバリ音たてやがって、唯一のお楽しみである『おじゃる丸』がよく聞こえねえじゃねえか!」
そのおっさんは今にもおれを殺さんばかりの勢いだった
「おじゃる丸って………なんだよ! てめえはキチガイか!」
おれは直ちに反論した
当たり前だ
このような意味不明なクレームに屈する必要などまるで無いのだ
おっさんは目をくりくりとさせて言った
「てんめえは………おじゃる丸も知らねえのか、遠く平安時代からタイムスリップしてきた愛らしい幼児のこともよお!」
こりゃ駄目だ
まともな会話が通じない
「おじゃる丸なんかヘッドフォンで聴いてろこのボケナス!」
そうしておれは仕事に戻った
早くスカイツリーをもがなくては
おっさんは道の離れた場所からおれを観察していた
「もっと腰を入れろよ!」
おれは言った
「うるせえなあ家に帰っておじゃる丸でも見てろ!」
おっさんは勝ち誇ったよう笑った
「バーカ! こんな時間からおじゃる丸がやってるわけないだろ、そんなことも知らねえのか、毎日、決まった時刻に放送が開始されるから視聴者だって安心して見られるんじゃねえか!」
ここでおれの殺意は臨界点を突破した
「そこにいろ今ぶちのめしてやるからな!」
「やなこった!」
おっさんはおれを論破したという思い込みを抱えそのまま勝ち逃げしようとした
だが直後、足元の石につまずいて転倒
「いてー、いてーよお! おっかあ助けてくれえ!」
おれは思った
このおっさんにおっかあなどいないだろう
つまり架空のおっかあにすがり付いている状態なのだ
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