第十二節:鏡面世界
その日は明日出かけるまでに食料や水を買い込んで準備とした。
後は馬車そのものの点検などである。
特におかしいこともなく無事に食料や水類を補給し終えていた。
出立の準備は着々と進んでいたのである。
しかし微細ながら異変は起こった。
部屋に戻った瞬間だった。
『セリア』と部屋に戻って来たのだが、部屋の扉を開いた瞬間視界が若干歪み元に戻ったと思ったら、一人で部屋にいたのである。
『セリア』が消えた? のではなかった。
部屋がすべてが正反対になっているのである。
異界であった。
姿見の前まで行く、すると向こう側の世界が映った。
姿見に手を伸ばし触ろうとする。
何か見えない壁に
ただ、姿見までいくと『セリア』がこちらに気付いたようだった。
ハンドサインで会話をすることにした、逆に見えるはずなのでそこを変えながらだったので少々辛かった。
今はどこにいるの? という問いに対し「鏡面世界のようです異界です」と答えた。
どうすればそちらにいけるの? との問いに対し「異界術士以外では難しいでしょう」と答えを返した。
「どこかに術士がいるかもしれません、探し出して倒してください。そうすれば出られるかもしれません」と、長ったらしいので紙に逆書きして鏡に映したのであった。
「こちらでも出られるかどうか探してみますので」とこれも書いて鏡に映したのであった。
筆談はかなり時間がかかった。
「また一度ここで午後の六時頃に会いましょう」と書き見せた。
こちらの世界にも時計はあった、ただし逆方向に回転しているうえ文字盤も逆なのである。
午後六時頃は大体、今から八時間は先であった。
異界に紛れているものを探すのはそう難しくない、それは私の考えだった。
異界は行けるものが限られているのである。
そして滅多やたらと、生あるものが行く場所ではない。
異界とはそういう場所なのだ。
だから動いているものを探せば、良いだけなのであった。
レイダーを唱え、範囲を思いっきり拡大する。
ただこれは相手が動いているというのが条件ではあるが……。
難しいことをいわされたか? と思った時、レイダーの範囲内ではあるが頂点方向つまり空中に動的反応があったのである。
高さはおよそ二百メートルといったところであろう。
窓を開け、テラスに出て対象の位置辺りを目視でティルファーと唱え確認した。
異界の化け物が飛び交っていた、その数およそ十。
術者ではない、がこの空間を維持しているものかも知れなかった。
今の位置を維持しながら、対象の監視を強めレコグナイズを距離拡大で仕掛けた。
少し消費が大きかったがまだいけると思った。
“
ただ数は多かったのでどうするか思案していると、向こうの方が先にこちらに気付いたようであった。
数匹、二・三匹が下りて来ていた。
宿の上空数メートルを輪を書いて飛行している。
形状はワームそのものであった。
ミミズのような図体に体の太さと同じくらい開いた大きな口、その背に
目がどこにあるのか見えなかったが、多分異界であるため目は必要なく感覚器が優れているのであろうということがレコグナイズの効果時間中であるため答えとして帰って来た。
そしてその大きさから、かなり硬いであろうということは予測できた。
魔法戦を余儀なくされたのである。
それは、取捨選択の余地が無かったことを指していた。
つまり詰みかけていた、ともいえるであろう。
接近戦は著しく不利であったのだ。
しかも、宿のほうに損害をなくすのであれば私も飛行しながらということになるのであった。
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