第九節:刀匠と剣匠

 朝食をすますと即その足で、行こうと思ったが『ゲルハート』が一緒に行こうといってくれた。


 理由は冒険者ギルドの近くで行く途中に剣匠の店があるかららしかった。


 剣匠『ディオメル・ワルストマ』、フレイだけでなく他の周辺国にも名の知れ渡る剣の匠であり、気にいった相手しか相手をしないといわれる噂まで付くくらいの偏屈者だが腕の方は確かであると聞く。


 どんな人物か見てみたいという気が持ち上がったので、少し寄ることにしたのであるがそれが更なる問題を呼ぶことになるとはこの時は思ってなかったのであった。


 荷物を最小にすると少し長めの特級の刀と小太刀を左に二本、もう一本の予備の刀を右につる。


 そしてサーコートをマントのように引っかけると、『ゲルハート』に「準備はいいですよ」と伝えたのであった。


 そして白装束の冒険者と漆黒の装束の冒険者が出来上がったのであった。


 更に私を先頭で歩いて行こうといったため。事件は起こることになる。


 たまたま店先でくつろいでいた、剣匠と刀匠の目に私が入ったのである。


 噂には尾ヒレというモノが必ず付くのは、どこの世界でも変わりはない。



 道の、ど真ん中を歩いていたという事も災いしたのかもしれない。


 『ゲルハート』に至っては、何が起こっているのかよくわからん状態だったらしい。


 宿から冒険者ギルドに向かうとすると刀匠の店が左側に、剣匠の店が右側に来るのである。そして中間点に来た時それは起こった。


 刀匠と剣匠が私の前に進み出てきて、深々と一礼すると「使」と二人同時にハモったのである。


 そしてその後「ウチが先だ」、「いいや俺の方が先だ」といういい争いに発展したのである。


 少ししたら落ち着くかと思って、少し眺めていたわけではあるがそう簡単には落ち着かず三十分はいい争いが続いていた。


 そこでこちらから声をかけることにしたわけである。


「私は、今の使い馴染んでいる武器を手放すつもりはありませんが、私ではなく、私の後ろに居る黒衣の剣士に剣を創ってもらえないでしょうか?」と切り出したわけであった。


、依頼いたしますがそれで手を打っていただけないでしょうか?」とも追加した。


 すると二人の争いが収まり、「」とまたもやハモったが、今度はいい争いは起きなかった。


 因みに二人のいい争いはここでは名物になっているらしく遠巻きに眺められていたので、そういう物言いをしたわけであったのである。


 そして刀を二本と小太刀を刀匠に預け、そして黒衣の剣士こと『ゲルハート』を剣匠『ディオメル・ワルストマ』に紹介し、刀匠に名前を聞いたのである。


 刀匠は『ケナギ・マサヒコ』と名乗り事なきを得たのであった。


 修復の方はいつまでに終わるか『ケナギ』に聞くと三日ほど待ってほしいといわれたのでそれには同意し、貸し出しの刀二本と小太刀を受け取ったのであった。


 そこで、『ゲルハート』といったん別れ、冒険者ギルドに行ったわけである。


 冒険者ギルドの案内所で冒険者証を提示して、情報通を紹介してもらった。


 そして、情報通のベンスという者を探し二階に上がっていったのであった。


 大抵の冒険者ギルドは二階は食事処兼酒場になっており、端の方で食べていることが多いといわれている『ベンス』を探した。


 赤毛で比較的目立つという事であったのですぐ見つかり、情報を聞きたいという旨を伝え落ち着いた低い声で、「情報の詳細次第では、百ゴルト払おう」と一気に話したため。


 『ベンス』がのどを詰まらせかかったというのも小さな事件ではあった。


「誰の情報が欲しいんだ」といわれたので、単刀直入に「『ウォン・ウィリアム』の情報が欲しい」と斬り込んだ。


「特に今いる場所が知りたい」と伝えると。


「分かった、二日ほど待ってくれ伝手つてをあたる」といってくれたので少し心の重みが取れたのであった。



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