第四節:敵意

 シャルの宿のロイヤルスイートでゆっくりしていると、「情報を持ってきた俺だ『ゲルハート』だ入っていいか」と声を掛けられたので、「今『セリア』さんはお風呂ですよ、私はすでに入った後ですが、私だけで何とかなる情報なんですか?」と応対した。


 すると「『セリア』が上がったら急ぎこっちの部屋に来てくれ、結構厄介な情報なんだ」と返答があった。


「分かりました、上がったらそう言うことがあったと伝えます」と答えるに留めたのであった。


 それから少しの時間を経て『セリア』が上がってきた、のでそのように伝えると、「結構厄介な情報かー。どっちだと思う? 政治上の問題か? それ以外か」と問われたので「それ以外だと思いますけどね」と答えるに留め、「行ってみましょうか」と答えたのであった。


 そして男性陣の部屋の前まで行き「来たわよ」と『セリア』がいった。


 『ゲルハート』が私と『セリア』を部屋の中に導いた。


 すると『ゲルハート』がいきなり話を切りだした。


「シャルと城塞都市ミトスの前に空堀があってそこに橋がかかってるのは知ってるだろう。そこにドラゴンゾンビが出たんだ術師抜きで……」


「ドラゴンゾンビってこの前の位のサイズのですか?」と私が聞く。


「サイズはこの前のやつよりも二回りは大きいだろう、橋に来るものすべてを蹴散けちらしているらしい。明らかに意識を持ってる、しかも厄介な敵意ってやつを……」と『ゲルハート』はいった。


「どうする?」とも続ける。


「どうするってフレイに行くにはそいつを倒さないといけないわけじゃないの? どうするもこうするも」と、『セリア』はつとめて冷静にいった。


「作戦会議ってんなら乗るけど? 迂回するには遠くなるし、それに全ての橋に召喚されたら終わりでしょう? 迂回ルートは無いわ」と、『セリア』はいった。


あいての読み方次第だけど、ドラゴンゾンビくらいでどうにかなるようには、私たちできてないでしょう? 他に何か居るんじゃないの? 高位の悪魔とか?」と、極めて冷静な分析を『セリア』は行った。


「術師が居ないのではなくて、見えないだけでは無いのですか? 高位の悪魔には消えていられるものも居ると聞きます」と私も意見を出した。


「明らかにあちらさんは私たちにフレイには入ってこれなくしたいようじゃな」と『ウィーゼル』が意見を挟んだ。


「てことはやっぱり正面勝負か?」と『ゲルハート』がいった。


「そうね、『ゲルハート』が正面切って競っている間に周囲に何か居ないか調べるのが私たちの役目かしら、居たらそいつを何とかしないとドラゴンゾンビなんていくらでも復活させられてしまうわ」と『セリア』はいう。


「『ウィオラ』ちゃん向けの仕事だけど、心してかかってね、相手が何かわからないから」と『セリア』は私に向けそういった。


「私は今回は橋を壊せないから、御者をやってるわ。広域殲滅せんめつが私の仕事のようなものだし」と『セリア』はお手上げのポーズを取った。


「『ウィーゼル』は二人の支援を同時にお願い。私も支援はするけどあまり期待はしないでね」ともいった。


「それとこの話も相手に漏れてるかもしれないわね。相手に近ければ近い程、その効果範囲は大きいものよ」ともいったのである。


 そして次の日、宿屋一向に見送られながら、城塞都市ミトスに向かったのである。ここまでは順調な旅路だった。行く手をふさぐようにドラゴンゾンビが、出て来るまでは。


「エグジスタンス!」と私は術を唱える、すると暗黒界が橋の上に広がっていたのである。


「『ゲルハート』相手の体力は底なしだから気を付けていて!」と私が叫ぶ。


 そのまま橋の欄干らんかんを駆けのぼり一気に橋の上の暗黒界まで走り抜けた。

 橋の上そのものに大地が出来上がっていた。


 異界感覚と「全周レイダー」とを使う。

 すると橋の真ん中ほどにひとりローブ姿の男を発見した、そいつが首魁らしかった。


 見つかったと思った男は空間に溶けて消えるような素振そぶりをしたが、私の空間対象察知能力からは逃れる手は無い!


 橋の横桁の上に居るのを確認して、真空刃ソニック・ブレード二十六連撃を対象の空間に放つ射程は十分に取ってある。


 流石に襤褸ぼろ布をまとっているのが、わずらわしくなったらしい。


 一瞬で輝くとともに黒い闇のようなマントを纏った貴族とおぼしき姿に変わる。


「流石この姿を見られたのは初めてですね。人族のお嬢さん。私にさっきの技で傷を付けられますかねえ?」と聞いて来たので全力を尽くすことにする。


「マジックソードエクストラクション! 全力全開フルドライブ!」と私が叫ぶ!


「ヒイッ、近寄るな! 来るな! 来るなあ!」とあわてふためくオッサンの姿がそこにはあった。


 どうやら牽制と本気を勘違いしているらしい。


「プレッシャー!」と私はついでに叫ぶ!


 オッサンが動けなくなったようだった。


石化式視線ペトロケミカルロック!」とも追加する。


 オッサンは徐々に足先から石化していき、頭の先の髪の毛の先まで石化したのであった。


 それと同時にドラゴンゾンビも石化していき、巨大な彫像になったのであった。


 オッサンを橋下に蹴り落とす、と粉々に砕け再生不可能になったようであった。


 同時にドラゴンゾンビも砕け、石の山になったのであった。


 私は飛行フライトをコントロールして、『ゲルハート』の横に降り立った。


「どうしましょうね、この石屑」といったのではあったが。


 城塞都市ミトスの方から、衛兵が出て来て完全に石化しているのを確認すると砕いて空堀に落としていったのであった。


 私と『ゲルハート』は互いの馬のもとに戻り私は白馬に乗って、片付けられていく石屑を横目に見ながら城塞都市ミトスに入って行ったのであった。



第五章 第五節へ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る