第三節:主役

 朝になった、朝食を食べながら『ゲルハート』はいった。


「『ウィオラ』君が今日の主役だ! 馬車陣の先頭に居てくれ。その直後に『ウィーゼル』、『ウィーゼル』の左側に俺が付く、『セリア』には『ウィーゼル』の右側に付いてくれ。それで俺らが先頭を突っ切る、衛兵が何か言っても皆無視だ。王位継承権が、なんて言ったら戦闘を味わいたいかどうか聞いてやれ」と。


「それと飛ばすなら! 最初よりは中盤で飛ばしてくれ。遺跡が近いところの方が効果は出やすい!」と『ウィーゼル』がいった。


「特にいつもより白が映えているわね」と『セリア』が私にいった。


「そういう『セリア』さんも紅が映えて見えますよ」とお返しした。


「白き伝説の乙女みたい」と『セリア』がいった。


「それは何の伝説ですか? 聞いたことないんですけれども」と私が問う番だった。


「最近の若い子は知らないかー、フレイニア王国に伝わる伝説のお話しなんだけどね、フレイニア建国の際に関わった一人で、色白金髪紫眼白装束の魔導剣士だったってお話があるんだけれども。まあ今は話している時間が無いわ、また今度話してあげる」というと『セリア』は手早く荷物をまとめ始めた。


 私の荷物は、元々広げていなかったため。

 そのまま出る事が、可能だったのである。


 今は護衛と、道を埋め尽くす魔物を斬り裂くのが、私の役目と思えたためそのことは心の片隅に置いておくとして、全力を尽くすことにした。


 白馬には戦闘用の白い鎧が纏わされていた。


 荷物は『ウィーゼル』の馬車に預けた、それだけ戦闘に集中したかったからでもあった。


 白馬は少々気は荒いが、先頭を走るには丁度よい子であった。


 マルチロックのエイギスの盾イージス・シールドをフルロックから撃てる回数はおおよそ七回だった。


 単射であれば数多く打てて数が数えられないくらい撃てるのだ。



 案の定、先頭は我が馬車が行くと王位継承権を振りかざしてきたので「じゃあ私たちは何もしませんから一人で突破してくださいね? 私たちが先頭でなければ露払いができないではないですか?」と問うた。


「それは……」と兵士隊長が、口ごもる。


自信が無いのだ、数千もの魔物の中を突っ切る自信が。


「できないことをできると言うのは勝手ですが、貴方はすべての責任を取られると言うことで宜しいですのね?」と私が最後通告をする。


 兵士隊長のランクはどう見てもランク七に届くかどうかといったところ、王位継承者第二位が無理をいったのだろう。


「無理を承知でお願いつかまる、どうか先頭は我が馬車にお譲りいただきたい」といったので。


「では私たちは何もしませんから、勝手にどうぞ、付いて行くのも辞めにします。何もせず従うのが今回の私たちの役目ではございませんから!」といい切った。


 その段階で向こうが折れた「無理を言いまして申し訳ありません、先頭での戦闘をお譲りします。到底我々では勝ち目がありません」といったのであった。


 そしてごねる王位継承権第二位を、兵士隊長がなだめるのであった。


 実際に私たちも前に鈍い馬車が居ては、守れるものも守れなくなってしまうのである、事実であった。


「『ウィーゼル』は最後の最期で馬車を抜かれないように気を付けて、シャルへの先頭は私たちで入らないと意味がないわ」というにとどめたが事実である手柄を総取りされるのと同じであるからだ。


 そしてファルト城塞都市を私たちを先頭に出た。


 そして魔物の駆逐が始まった。


 『ウィーゼル』のいう通り中盤から速度を上げ一気にエイギスの盾をフルロックで放つ。


 右側では『セリア』がレンジギリギリのエネミー隕石雨メテオ・レインで文字通り薙ぎ払っていた。


 そしてシャル目前で後ろの馬車が速度を急に上げた、「『ウィーゼル』!」と声をかけ阻止する。そしてシャルには私たちの馬車を先頭にして入るのであった。


 シャルの人々の声援や歓声を一番に私たちが受けることになり、王位第二位の野望はもろくも崩れ去ったのであった。


 そして人々の目の前で近衛騎士団に王位第二位を馬車ごと渡す儀式が行われた。


 王位第二位がねて馬車から降りてこなかった為であった。


「こたびは誠に申し訳ない、本来我々の役であるところを押し付けてしまったこれは我々からのの正式な報奨金だ。白き伝説の乙女よ受け取って欲しい」と二百プラナをいただいたのであった。


 それにはかしこまって答え「当然のことをしたまでです。冒険者の務めですから」と答えるに至った。


 シャルからミトス城塞都市、王都フレイにまでこのうわさが広まるのはかなり早かったらしい。


 白き伝説の乙女現る! コレだけではあるがこの噂は即刻伝わったのであった。


 シャルでの宿は「すでに御代金は近衛騎士団の方からいただいております。当宿へそうぞ」といわれてしまったので仕方なく皆の歓声に答えながら。


 シャルで特級の宿の最上階スイートツインに泊ったのであった。


 宿で「明日はようやくミトス入りですね」という話をしたところ王都の検問で時間を喰われるので「丸一日はかかるわよ」と『セリア』からいわれたのであった。


 そして宿で皆に報奨金を分けたのである、五十プラナ一人十枚分であった。


 私の現額が、六百九プラナ二百九十七ゴルト七十七シルズ八十ブロスとなったわけである。


 旅行財布の中身[1.812kg]

 五十P×十二[1.02kg]、十P×零[0.00kg]、五P×一[0.03]、一P×二[0.012kg]

 五十G×四[0.24kg]、十G×九[0.27kg]、五G×一[0.025]一G×二[0.03kg]

 五十S×一[0.05kg]、十S×二[0.07kg]、五S×一[0.025kg]、一S×二[0.04kg]


 旅行小銭入れの中身[0.16kg]

 五十B×零[0.00kg]、十B×八[0.16kg]、一B×零[0.00kg]

 五十Ca×零[0.00kg]  貨幣全重量一.九七二キログラム、


 体重を除く全備重量が六十六.八四二キログラムとなったのであった。


 また少しずつ重くなったのであった。


 そしてランクだが皆この戦いで二づつ上がってしまい、私がランク二十六、他の皆はランク二十三まで上がったのである。


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