第五章 白き伝説の乙女

第一節:白き伝説の乙女

 その日は静かに始まった、早朝村長宅から村長婦人に送られ皆が出て来たからである。


 起こすのが手間なくらいぐっすり寝てたとは『セリア』の言葉であり私もそれくらいぐっすりだったということであろうと考え、昨日の夜の件を伝えた。


 村長婦人に神殿には決して近づかない方がいい、封鎖して欲しいという旨の話を『ウィーゼル』はしていた。


 死霊アンデッドと化している可能性が高いからであった。


 丁寧ていねいに説明し村の若い男衆と一緒に封鎖だけしてくると『ウィーゼル』が出たため、出発はお昼くらいになった。


 戻ってきた『ウィーゼル』は「まだ死霊化は起こしていないが、いつ起こしてもおかしくない状況だった」と語ってから御者を担当した。


 ベータまでは、平常通り四日の工程だったが、スタレタで補給した分をマーティンで、再補給するはずだった食料が、非常食まで落ちてしまったため皆元気はなかった。


 非常食はこうなんというか味が一定で水でふやかしてから食べるため美味しいわけでは無いのである。




 その日ベータにはファルト遺跡から持ち込まれた大量の金品で沸いていた。


 その日にベータに到着した私たちは食事を再補給できていた、私たちにとっては何が沸いているのかわからないが、良い予感では無かった。



 遠くはベスト、モルガナ辺りから行商が買い付けにやってきていたのである。


 ファルト遺跡はまだ比較的発見されてから新しい遺跡であるということだけは知っていた。


 もぐれば一攫千金を合言葉に冒険者や盗掘師が殺到していたのであった。


 その盗掘師の一団十数名ほどがベータの村にとあるぎょくを一つ持ち込んでいたのであった。


 その玉が問題だったのだ。


 私たちにたとえるなら、脳に該当する指令を司る玉のうちの一つだったのだ。



 次の日の朝問題は発覚する。


 無数の魔物がベータを取り囲んでいて東西南北全ての街道が封鎖されていたからであった。


 脳の出した指令は我を取り返せだけだったが無数の生体兵器を擁するファルト遺跡の出した答えは、脳一個を犠牲にするがベータ村を全て滅ぼせだったのである。


 ファルト遺跡が知らない情報は私たちだけだったのだ。


 ファルト遺跡は気軽に王都から行ける距離にあるし周囲に街も二つあり安全でランクの低い冒険者でもお宝にありつけることで比較的有名であった。


 このため冒険者のランクは高くても五であった。


 ベータ村を根城にしている冒険者はランク四が最高位でありそれ以上の冒険者などいないという情報しか持っていなかったのである。


 もとより通り過ぎるだけという条件の我々にはよく分からない状態であった。


 冒険者ギルドの出張所もあるにはあるが、そんな所に顔を出す余裕はなかった訳である。


 私たちはベータ南方の門から出ようとすると衛兵が、荷物のチェックを行っていた。


 何かあったのかと『ウィーゼル』は聖印を見せながら話を聞くと、どうやら何か大変なものを持ち込んだ奴らが居るらしい、それで厳戒態勢げんかいたいせいなんだという話が聞けたのであった。


 それに今出るとモンスターに攻め滅ぼされるぞというありがたいお言葉もいただいたが、「急ぎではないがいちいち構っていられん。自分の事は自分で何とかするんだな」と『ゲルハート』は一蹴いっしゅうした。


「誰彼構わず襲ってくるんだ、何かの怒りに触れる様な事が、あったのかもしれない」とその衛兵はいった。


「神は盗人が居ると言っているぞ」と『ウィーゼル』がいった。


「盗掘師が居るのか! チクショウ! 奴らのせいでなんで我々まで死ななきゃならないんだ」と衛兵が怒りに任せて壁を思いっきり蹴って自爆した。


「今日私たちはファルト城塞都市に向けて出発するんですけれど、それに釣られて動くモンスターがいるかもしれませんよ?」と御者台まで出て私がそういった。


「馬車は頼みましたよ『ウィーゼル』」というと御者台から右側に降りる。


「アンタ登録冒険者なのか? この街では見ない顔だが」と衛兵がいった。


「俺の顔も知らんだろう」といいながら御者台の左側から漆黒の大剣を背負った長身の闘士『ゲルハート』が降りた。


「『ウィオラ』右側は任せた、俺は左側をヤル、『セリア』は撃ち漏らしか大群を薙ぎ払ってくれ、車速は歩速で頼むぜ『ウィーゼル』」といって漆黒の大剣を抜いた。


「『セリア』付与をくれ、フレイまでに壊れてもらっても困るからな」と『ゲルハート』が追加した。


 そして街を出ようとする。

「入り口で一戦か」と『ゲルハート』がいった時には私は疾風ハヤテで瞬間に飛び出していった白い風のように。


 倒れた冒険者と思われる装備の騎士に向かって正にいまその大鎌が振り下ろされようとしていた。


 が、


◇ 倒れた騎士視点


“ガラン”という大きな落ちがしたかと思ったら。


 腕ごとその大鎌が俺の横に落ち白い閃光が走り抜けた。


「避けてなさい!」と女の声がした。




◆ 私『ウィオラ』視点


 すでに全開駆動フルドライブ魔法剣創出マジックソードクリエイション、マジックソードエクストラクション、過剰出力オーバーロードはかけ終わっている。


 街から出た、そこに襲い来る魔物の集団。


エイギスの盾イージスシールド!」と唱えた次の瞬間に二百は居ようかというモンスターが全て今の一撃で吹き飛んだ。


『セリア』も負けてはいない「荷電粒子砲チャージパーティクルカノン!」と初撃から派手な魔法をぶっぱなす。


 今のでも五十体は破壊されたはずである。


「グダグダやってると集まってくるぞ!」と左側を受け持った『ゲルハート』は十五体目を斬り裂いたところであった。


「『セリア』! 隕石雨メテオ・レインお願い左側中心で!」といいながら「エイギスの盾!!」とさらに二百体を蹴散けちらす。


 『セリア』は軽い詠唱から「範囲レンジ隕石雨!」とかなりの広範囲をせん滅した。


 さらに射程を長くとると「エイギスの盾!!」といってさらに遠くの集団までも薙ぎ払い始めた。


「俺らいらんな」と『ゲルハート』がいうと「違いない」と『ウィーゼル』が合わせた。


 その後も術の乱射でほとんどのモンスターを片付けたため。


 衛兵からは白き伝説の乙女とまで名を付けられているということを知るのはかなり後になってからである。


 ランクはこの戦闘に置いて私が二十四、『セリア』が二十一男性陣は揃って二十一という結果だった。



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