第十二節:情報提供

 サライの街が小さくなったころ、『ゲルハート』がいった。


「船内を見て回らないか?」といい出したのである。


 『セリア』が答えた。


「昼食までね」とくぎを刺した。



 『ゲルハート』は遊行室に興味きょうみがあったらしい。



 昼食はガイドのスケジュールでは、少し遅めの十三時からになっていたので私は構わないだろうなと思っていた。



 遊行室は二等船室の並ぶ、その中央にあるのであった。



 船内を右舷側から回って前方に回り、左舷側を回って後方に出て一階分降りるといった方式で歩いて行くと。


 前方にクルーが立っていた、「ここから先は前方展望室になります」と丁寧ていねいに答えてくれた。


折角せっかくなので、前方の展望室も眺めていきますか?」と私が興味深そうにいうと『ゲルハート』が折れてくれた、前方は珍しくガラス張りになっていたので、流石の『ゲルハート』も「金かかかってんなー、特注品だぜこりゃあ」といったのであった。



「こりゃ良いな涼しすぎないぞ」と『ウィーゼル』もいった。


「こういう使い道もあるのね」と『セリア』も感心していう。


「すべてが、最新鋭ですね。画期的です」と私がいった。


 後方デッキのにぎわいと違って、前方デッキに居るのは私たちのパーティーだけであった。


「この時間だから、他のかたは自室に戻ってるのかしら」と『セリア』はいった。


「昼食にはまだ早いですし、皆様落ち着いておられましたから自室に戻られたのではないでしょうか?」と私もいった。



 因みに前方の展望デッキを抜けて左舷側を歩くとクルーの部屋が弦側に食堂が、中央にあったのである。


 船内は白を基調にした綺麗なスタイルでめられており清潔感と清涼感が感じられた。


 そのまま後方展望デッキ前の中央後方階段で一階下に降り、同じように一回りして、さらに一階下に降りた。


 クルーの部屋が多かったように思えた、特等船室前には行かず手前の階段で一階また下に降りて一等船室の並びに入った。


 ここの中央はブロックは休憩室兼ラウンジと書いてありチラリとのぞくと広々としたスペースに他のチームや家族が、ゆったりとした雰囲気の中、歓談したりしていたのが特徴的だった。


 そしてまた一階下に降りた。


 今度は廊下にも椅子が据え付けられているところがあったりして一等の静けさとはうって変わって賑やかで、商人たちの話声やドアの比較的バタンと閉められる音が響いていた。


 そして前方、左舷側を回り中央の遊行室へ行くのであった。


 遊行室では大きくスリーブロックに分けられており、コイン換金サービスの受けられるバースタイル歓談室、中央にカードやルーレットを楽しめる大部屋があり、後方にスロットの並んだ遊行室があるのであった、一応区分があるが大部屋を三つのカーペットの色分けで区切っただけであり、壁などで仕切りが入っているわけでは無かった。


「これよこれよ」と『ゲルハート』がバーのエリアに入って行く。


 当然遊行室に入るのに、ハンドタッチが必要であったのはいうまでもない。


「とりあえず三十分よ」と『セリア』が『ゲルハート』に向かっていった。


「それと、私たちは歓談室に居るから」と『セリア』は『ゲルハート』にいった。


「『ウィーゼル』はしないの?」と私が不思議そうに聞くと。


『ウィーゼル』はふところから聖印を出して「戒律では無いんだが、自身の決めごとでなギャンブルには手を出さないことにしてるんだ」といった。


 因みに『セリア』にも聞いたがギャンブルは冒険だけで十分とのことであり、こういうギャンブルには手を出さないのだということであった。


 歓談室は人が少なく空いていたことだけは確かであった。


 ここに来ると、皆大抵は遊ぶらしい。


 師匠からいわれていたが、師匠はまれにすることがあるが、目押しや読みが利きすぎるため、いわゆる技を断って使わずに少しだけ楽しむことにするらしい。


 ということは、多分私にもスロットの目押しくらいはできてしまうに違いない、と思いみんなと一緒に歓談室にいることにしたのであった。


 とはいえ、なにもしないというのもかえって不自然になるかと思いメニュー表を広げてみることにした。


 すると『セリア』が突っ込んだ。


「後三十分で昼食ヨ?」といったのである。


 事実なので仕方がない。


「どんなものがあるのか? と思いまして」と正直に答えを返した。


「大体、おつまみとアルコール類と相場は決まっていると思うのだけど」という返答が帰ってきた。


 確かにその通りであった。


 ただ中には、珍しいものもあるにはあった。


 薬ではないし、麻薬などの常習性のキツイ薬物でもないため稀に売られていることがあるものではあった。


 だからといって、買うわけではないが。


 メニューを閉じながら話し出した。


「確かに、おつまみとアルコールやカクテル類しか載ってませんね。炭酸水などがあるかもと淡い期待を抱いたのですが、残念です」と私がいった。


 すると、この船の常連なのか比較的若い商人と見られる方が隣のテーブル席からだったが、情報を提供してくれた。


「食堂のメニューの中にありますよ? そんなに高価では無いはずですので、一度お試しになってみてはいかがでしょうか?」といってくれたのであった。


「ありがとうございます」と礼を返すことにした。


「大したことではありませんよ、私はサライのオシュル商会の者でワーシュルと申します。商会の支店のある、サラトに向かう途中なのです。ですのでこの船が、就航してからはかなり長く乗っていますので、お貴族様のお役に立てるならと思い大した情報ではありませんが、お知らせした次第でして」と一礼すると下がって行った。



「やっぱり、付いてるわね。『ウィオラ』ちゃんはお貴族様にしか見えないもの、たたずまいといい作法といい、板についているもの」と『セリア』はいった。



 バトッてるときは、別人だけどという印象があるようではあったが、そこまでは突っ込まれなかった。



「『ウィオラ』は本当にお貴族様では無いのか? 平民には見えん」と『ウィーゼル』にまで突っ込まれてしまった。


「やましいことがあってかくしているわけでは無いので、言いますけど。ウチは代々エフェメリスの伯爵家ですよ。エフェメリスには辺境伯と上級伯爵とが、居るのです。辺境伯はエフェメリス家ですがウチはテッラエ家ですから。少々お仕事が違うだけなのです」と、一応実家のことを少しだけ白状はくじょうした。



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