第九節:ラウンジで

◆ 俺『ウィーゼル』視点


「朝は何にする朝食を取るか?」と俺がいった。


「軽いものでいいだろう」と『ゲルハート』が答えを返す。



 そのまま濃い目のコアドーレがツーグラスとサンドヴィレッジ四切が運ばれてやってくる。


「朝はこれがいいな」と『ゲルハート』はコアドーレを飲みながら、サンドヴィレッジにかぶりついた。


「それには同意だ」といいながら俺も同じように食べだした。



 この時点でまだ八時半だった。



「船着き場はどこになるんだ?」と俺が食べながら聞いた。


「宿屋の目の前だ。十一時半には入港してくる」と『ゲルハート』は時間も伝えた。



◆ 私『ウィオラ』視点


「朝食どうするー」と『セリア』がいった。


「今からだとギリギリですね、軽いものがいいのでは?」と私が答えた。


「そうね今が九時半だから、軽いのにしましょう。濃い目でいいよね?」と『セリア』はいった。


「はい、それで大丈夫です」と私は即答した。


 直ぐに、濃い目のコアドーレがツーグラスとサンドヴィレッジ四切が運ばれて来たのであった。


「朝はやっぱ定番よね」と『セリア』がいった。


 朝の定番として市民権を得た苦みのある独特の味のする後味のみさわやかな、コアドーレはワングラス二百ミリリットルほどだろうか。


 コアドーレは元々種なしの果実なのであるそれを魔法ミキサーで粉砕しミクロン単位で砕いたものなのである。


 一粒で大体二百ミリリットルが標準で取れることからそれがそのまま規格になったという。


 そして同じく朝の定番として定着しつつあるサンドヴィレッジ、外が固めで中はふわっふわのパンに肉を数切れとレタス系のグリーンボールの葉が二・三枚挟んであり、独特なソースで味付けされている。


 ショッパイ系の少しキツメの味付けで人気が、出たヴィレという種類の薄切りローストミートが標準で三切れほど入っていて魔法圧着されているため。


 こぼれない、中のふわふわ感も死んでない不思議な工程で作られる魔法の料理の一種でもある。


「定番ですよね、どこに行っても大体同じ味がする」といって私は食べだした。


 『セリア』は食べながらいった。


「コレは大抵どこでも入手で居るから同じ味なのよね。たまに違う国に行った際に肉質が違う物が出て来て若干違和感を感じるけれども。ヴェルゼニア国内では生産が一定だから。安心よね」と。


 私は、すぐに二切れを食べ尽くした。その後でコアドーレを一気に飲む。


 人によって順序や食べ方は異なるためどれが正解とはいえないが、私が取っている手順が比較的早く食べられるモノとして有名であったりする。


……


 量的に言えば、コアドーレは二百ミリリットル基準だが、サンドヴィレッジは国によって形状が違ったりするが重量が決まっており一切れが二百グラムくらいあるのだ。


 だから、簡易的な朝の食事はグラム換算で六百グラムになるのである。


 なので、比較的パンチ力も併せ持っていると高評価なのである。


 そして、もう一つ繁盛はんじょうしている理由ワケもある。


 全ての材料が通年を通して取れる材料で、栽培や育成が比較的簡単なものだからである。


 そして機材もまた単純な機材しか使って無いからである。


 そんな理由だからこそ、愛され食べ続けられているのであったりする。


……


 私が食べ終わったのが、丁度九時五十分だった。『セリア』も同じくらいに食べ終わる。


「さて行きましょうか」荷物を背負ったまま食べていたのでそのまま、立ち上がると全ての装備が付いてくるのである。


『セリア』もまた足元に荷物を置いて食べていたので、そのまま荷物を持って立ち上がった。


 鍵そのものは部屋にはなく魔導生体認証キーでのみ開くので高級な宿だといえた。鍵で管理されているのはローだけでありビッグには元々ベッドが只並んでいるだけの大部屋のことであった。


 男性陣もほぼ同時に出て来たので仲良く一緒に階段を下りていくことにした。


 そしてホテルのチェックインサインもアウトサインもハンドタッチ一発でできるため、魔導生体認証は好評ではあった。


 安宿はいまだに鍵式が多いが、高級な宿はほとんどがこの方法に変わりつつあるといってもよかった。


……


「さて、チェックアウトしたとは言ってもまだ船が入港するまで一時間はある、ラウンジで何か飲みながら休憩でもしないか?」と『ゲルハート』がいった。


「船が入港してきたら、ここのラウンジから出て、乗船すればいい。そういう方式だ」と『ゲルハート』が追加した。



 皆一塊になって四人席に座り、時間が来るのをうずうずしながら待っていた。


「チケットはもう取ったの?」と『セリア』が聞いた。


「ああ、バッチリな」と『ゲルハート』は内懐からチケット二枚を出して見せた。


 二枚はそれぞれが半券となり二人で一つを持つのではなく、一人で一枚持つようになっているのである。


 それは宿と同じ様式だった、つまり魔導生体認証式だったのである。


 船でその方式を採用しているのは、まだそんなに多くは無かった。


 つまり最新鋭の船ということになるのである。


「鋼船かな? それとも木船かな?」とハヤル気持ちを押さえながら『セリア』がいった。


「そこまでは分からんが、木船ではないかな? 四本マストの大型船だと聞いているし」と『ゲルハート』がいった。


「軍船以外で鋼船は少ないと思うぞ、流石に」と『ウィーゼル』が突っ込んだ。



第三章 第十節へ

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