第五節:門前町に召還

 そしてまた多分だが、先頭車と最後尾の九号車にはランプが灯っているんだろうな等と話しながら、「今回は休憩なしと見えるな、と二十二時を過ぎたので二交代制の休憩をするか」と『ゲルハート』がいったところであった。


 不意に“ゾクリ”とした感覚が走り抜ける、『セリア』も同じ感覚を得たらしい。

 私はそこまで顔色はひどくなかったが『セリア』は真っ青になっていた、何だこの感覚はまるで悪魔にでも魅入られている様な心臓を鷲掴わしづかみにされている様な感覚は……。


 しかし、その感覚は途切れた。門前町に入ったからである、門の前まで来たはいいけれども門が締まっているので明日の早朝六時まで門が開かないので仕方なくそこでキャンプを張って寝泊まりしている人々がかなり居るので門前町ができてしまうのである。


 これはこの西方ヴェルゼニア王国では珍しくない光景であった、そしてその上客も居るのでその上客を探して商売する事も目的にした建物も十数軒有るのであった。



「さっきの感覚は一体」と私が口にする。


 『セリア』がいう「まるで心臓を鷲掴みされている様だった」と。


「何かあったのか?」と『ゲルハート』と『ウィーゼル』がこちらに振り向いた。


 私と『セリア』は思わず顔を見合わせた二人が感じられていないのは魔導的感覚を持たないせいだと直感したのである。


 とそこへ『キルヒャ』がやって来た、「目一杯走ったのですが門が締まる前には間に合いませんでした申し訳ない。今日はここ門前町で円陣を組みます、少し離れたところに円陣を組みますので、野営の準備をお願いします。勿論もちろん可能なら馬車の中で交代見張りをしていただいても構いませんが」といった。


「我々は荷物と一緒に交代見張りをする事にしましょう」と『セリア』がいった。


 馬車の方が安全であるからではあったが、さっきの嫌な予感の事もあったのである。


 人ならざる者に、見られてるような感覚。


 アレは魔導的感覚を持たない人には、分からない感覚であるのだ。


 よっぽど感覚が優れているか、そういう手合いと戦ったことがあるかによって異なるのだ。



「何かよっぽどお宝でも積んでいるのですかね?」と私がいった。


 『セリア』もいった「悪魔に魅入られるくらいの荷物ですかありそうですね、宝石類とか魔法の品とか他にも聖遺物などですか、考えるだけでキリがないくらい上がりますね」と。


「最もすべての計画をしたのが中級クラスの悪魔で、それが牛耳ぎゅうじっていると言うんなら話は通るんですが」と私がいった。



「何の?」と『ウィーゼル』が寝る支度をはじめながら聞いた。


「荷物の中に魔物や悪魔に魅入られるような荷物でも入ってるんじゃぁないかと言う話ですよ」と私がいった。


「この話は、無事に朝を迎えられてからしましょう」と『セリア』がいった。


「では先に休憩に入りますね」と私がいった、目標は朝の六時三十分である。


 そしてその感覚が馬車の円陣の中央に降臨した。流石に嫌な気配全開で目が覚める


「良く飛び起きれたわね」と『セリア』がいった。


「この嫌な感覚はまた円陣の中央ですか」と私がまたか的な意味合いでいう「昨日の朝もこうだったのよね、この感覚には慣れてしまったけど」、「また飛ばされるんですかね? 異世界での戦闘は物凄く疲れるのが早いので推奨すいしょうは出来ませんが」、『ゲルハート』がいった。


「どうする飛び込むか、昨日は二人だけに任せきりだったからな」今の時間を確認する。


 朝の五時だった、『ウィーゼル』も起きて来た「何じゃ、このおびただしい禍々まがまがしい気配は」といった、『セリア』に聞いた「今日は何だと思います?」というと返礼が返って来た「昨日は何だったの?」といわれたのでその問いに私が答えた「ヒトでない術者と、死霊騎士でしたが」と。


「今日のは一段上がって禍々しさが増してますから別物だと思いますし、もう外は多分異界でしょう。エグジスタンス!、イケナイ今日は現世に顕現してるみたいです。早く行かないと皆が危ない!!」と私が叫んだ。


 刀を抜きながらマジックソードエクストラクション!と魔導剣に変化させる、「私と『ウィーゼル』で、橋頭保きょうとうほを確保します。そのあとに続いてください。『ウィーゼル』構いませんね」というと。


「よっしゃ任せとけ」と『ウィーゼル』が答えた。


 そういうと今日は夥しい気配の中に、身をおどらせ術を展開し橋頭保を築くべくソード・プレス!! と着地より少し前に技をり出した。



 ぱっと見で分かった事が四点在った、小悪魔が無数にいること、中央にいる何かをまつって直径六メートルクラスの円で踊っているでこと、中央の悪魔と思しき存在は未だ顕現けんげんの最中であること、その小悪魔の列の真上から仕掛けたことであった。


 いきなり上からソード・プレスが降って来たので回避のしようもなく、半径二メートル以内の小悪魔が消し飛んだ。


 いきなり三分の一程度が消し飛んだのである。


 そのまま踊ってくる回って来る小悪魔の集団と視線を交え、次の技を繰り出した。プレッシャー! 小悪魔の隊列が動きを止めた。


 金縛りにあっているのである、瞬間でにらみを利かせ対象を集団でも構わずに動きを止められる数少ない術技である。



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