第53話 上目使いで俺に聞いてくる

 ソフィアを送った後、宿に帰り風呂に入って普段着に着替え寛ぐ。


 今日は迷宮20階層までの攻略が終わった。

 クロードさんやソフィア達に追いつくにはあと10階層だな。

 21階層からは冒険者ギルドで受けたフレイムタイガーの依頼もあるから忘れないようにしないと。


 ◇◇◇


 昨晩は宿でぐっすり寝て目覚めも爽やかだ。

 昨日は北門前で待ち合わせたが、ソフィアをナンパしてくる冒険者がいたので万が一のトラブルを避ける為にやっぱりソフィアの屋敷まで迎えに行く事にした。

 宿を出てソフィアの屋敷に着くと、エミリアさんが今日も朝から庭の花の手入れをしている。


 エミリアさんは可憐で可愛いよな。


「おはようございますエミリアさん。ソフィアは居ますか?」


「おはようございますフミト様。少々お待ち下さいね」


 俺に会釈をして屋敷に向かうエミリアさん。

 エミリアさんの背はソフィアよりちょっと低いかな。

 ちょっと濃い目の金髪の髪型はミディアム・ロングだ。

 紺のスカートに白いシャツは清楚な雰囲気が漂う。


 エミリアさんが屋敷の中に入って暫く経つと、冒険者姿のソフィアと一緒にエミリアさんもソフィアに続くように出てきた。


「ソフィアおはよう」


「おはようフミト」


「いってらっしゃいませ。ソフィア様、フミト様」


「じゃあ、行ってくるわね」

「行ってきます」


 エミリアさんの見送りの言葉を受けながら俺とソフィアは並んで北門に向かって歩き出した。


「なあ、ソフィア。エミリアさんって可愛いよな。あと、ソフィアとどっちが歳上なんだ?」


「そ…そうね。歳は同じよ。エミリアは形式上はあたしの侍女で言葉使いもあんな感じだけど小さな頃からの友人でお互いに気心が知れた仲なの。もしかして…フミトはエミリアが気になるの?」


 ソフィアが不安気な顔をしながら上目使いで俺に聞いてくる。


「いや、一般的な印象を言ったまでだよ…汗。もちろんソフィアの太陽のような雰囲気が一番だけどね!」


 危ねー。何か地雷を踏みそうになったような気が…


「えへへ。ならいいんだ!」


 ふぅ、良かった。ソフィアの機嫌が直ったようだな。


 そんなこんなで、後は他愛のない話をしながら北門に到着。

 北門を出て迷宮の入り口横の転移魔法陣に向かう俺とソフィア。


「じゃあ、今日もよろしくな。パーティーの大事なパートナーさん」


「ふふ、よろしくね。あたしの大事なパートナーさん」


 そして二人して転移魔法陣の上に乗り、20階層の中ボスを倒した後に登録した魔法陣まで一気に転移する。


「ソフィア。21階層から30階層までの迷宮の説明をしてくれ」


「わかったわ。21階層から30階層は主に動物や爬虫類の魔物が出るわ。熊や虎、豹や牛、水のある場所はダイルが出るわよ。あと、たまにだけどリザードマンが出てくる。熊の魔物は力と耐久力が強いわね。虎は牙や爪の攻撃だけでなく魔法を使ってくるわ。豹は攻撃力が高くて素早いし隠密のようにこっそり忍び寄ってくるから油断しないで。牛の魔物は大きな角を持っていて突進力と破壊力が凄いの。ダイルは大きな口の噛み砕きと破壊力のある尻尾の攻撃が凄いわね。リザードマンはかなり強いわ。そんなとこかしら」


「ありがとう、ソフィア。助かるよ」


 お互いの装備を確認して21階層への階段を降りていく。

 21階層に降り立つと周りの景色は11~20階層とあまり変化はないが、所々に大きな岩や小高い丘、川や沼地があるようだ。

 俺とソフィアは互いの顔を見て頷きながらそれを合図に駆け出していく。

 暫く走ると、この階層最初の魔物と出くわした。

 牛の魔物、ブレイブバイソン。大きな頭に生えてる二本の大角、そしてその巨体は迫力満点だ。


「フミト、ブレイブバイソンの攻撃は破壊力はあるけど、直線的で単調な攻撃だから直前まで引きつけておいて攻撃が当たる前にヒラッと躱せば大丈夫よ」


「わかったよ。じゃあ、早速始めるか!」


 俺達を見つけたブレイブバイソンは姿勢を低くして突撃態勢だ。

 後ろ足を蹴り出して角を前に出し猛烈に加速して突っ込んでくる。

 確かにあの突進をまともに受けたら大きなダメージを食らいそうだな。

 だが、こちらもただ突っ立ってる訳じゃない。

 小手調べでファイアーボールをぶつけてみる。ファイアーボールはブレイブバイソンの頭部に命中したが、硬い頭蓋骨に弾かれてしまう。


 なるほど、少しくらいの魔法ではびくともしない…と。


 ブレイブバイソンの突進を余裕で回避した俺とソフィアの二人は、魔物が振り向く前に後方から同時に攻撃を仕掛ける。

 後ろ足に斬りつけその足を斬り落とす!

 あとは動けなくなったブレイブバイソンの首を俺が斬り落として戦いは終了した。

 アイテムボックス回収してすぐに走り出す。


「ソフィア、この調子でどんどん行こう」


「わかったわ」


 その後もウォーベアーやアサシンレパードと遭遇したが、俺とソフィアの息の合ったコンビネーション攻撃で次々と粉砕していった。


 21階層、22階層を次々とクリアしていき、23階層でようやく冒険者ギルドの依頼のフレイムタイガーと遭遇する事が出来た。


「フミト! フレイムタイガーよ」


 フレイムタイガーは自らの身体に炎をまとっている。


「口から炎の魔法を放ってくるから気をつけて。でも、その前に口を開けて頭を軽く上下に動かす予備動作をするからそれを見逃さなければ避けるのは簡単よ」


「了解した!」


 俺の場合、魔法の腕輪を盾に変化させれば魔法も防御出来る。

 フレイムタイガーに正面から近づき一気にケリをつけるつもりだ。


「フミト、大丈夫!?」


「大丈夫だ、全く心配はいらないよ」


 正面から無防備に近づく俺を見てフレイムタイガーは勝てると思ったのか、口を開け軽く頭を上下に動かし始めた。

 そのすぐ後に猛烈な炎の塊が俺に向かってフレイムタイガーの口から吐き出されるが俺は腕輪を盾に変化させ、その炎の攻撃を余裕で受け止める。

 そして、一気に詰め寄った俺は目にも留まらぬ速さでフレイムタイガーの首を下から上に斬り上げた!


 自分の魔法攻撃が決まったと思っていたであろうフレイムタイガーは、自分がどうして敗れたのかわからないまま俺に倒されたのだった。まあ、この程度の魔物なら余裕なんだけどね。


「よし、これでギルドの依頼もバッチリだな」


「そうね、これで一安心ね」


 フレイムタイガーはギルドの依頼で素材を渡すのでマジックバッグの中に入れる。

 23階層をクリアして24階層へと進む。

 24階層では銅の宝箱を発見してチェーンメイルをゲットした。


 ここらへんの階層まで降りてくると、魔物のレベルも高くなってきて単体としての強さもかなり強くなってくるのでCランク級のパーティーじゃないと苦しいだろうな。

 だが、俺の能力とソフィアの能力を合わせればまだ全然余裕で二人一緒に軽く運動して少し汗をかいたくらいの感覚かな。

 25階層も難なくクリアして、予定通りお昼前に転移魔法陣に登録する事が出来た。


 俺とソフィアは昼食と休憩をしに一旦街へ戻る事にした。

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