第49話 この格好は破壊力がありすぎる

 迷宮10階層の中ボスの攻略を終えて、ソフィアを屋敷まで送り宿に帰ってきた俺。

 装備を解き、風呂に入ってさっぱりする。

 普段着になった俺はある事を思い出し、ナイフとマジックバッグだけの装備を身に着けて銅の口髭亭に向かう事にした。


 銅の口髭亭に顔を出すと、ハンスさんにリーザさんとゼルトさんは宿に居るか聞く。


「おう、たぶん居ると思うぞ。あいつらの部屋は二階の6号室だから勝手に上がっていっていいぞ」


「わかりました。じゃあ、お邪魔させて頂きます」


 そうハンスさんに言って宿の二階へ続く階段を上がっていく。


「えーと、6号室だったよな」


 部屋の前に行き6号室なのを確認してドアをノックする。


『コンコン。コンコン』


「こんちは、フミトです。ゼルトさん居ますか? もしくはリーザさん居ますか?」


 暫く経つと部屋の中から応答があった。


「ドアは開いてるよ、入っておいで」


 どうやらリーザさんの声のようだ。


「お邪魔します」と言いながらドアを開ける。

 部屋は二人部屋のようでそこそこ広い。

 ベッドが二つあり、テーブルや椅子もある。

 リーザさんは自分のベッドで上半身だけ起こしていた。

 もしかして寝てたのかな?


「結構広くていい部屋ですね」


「まあね。ところでフミト、今日はなんの用だい?」


「そういえば、ゼルトさんは?」


「ああ、ゼルトは風呂に行ったよ。たぶん長いと思う」


「そうなんですか、どうしようかな…またの機会にするかな」


「せっかく来たんだからゆっくりしていきなよ」


「いや、下で待ってますよ」


「そんな事言わずにこの部屋で待ってればいいのにさ」


 と、言いながらリーザさんはベッドから出て俺の方に歩いてくる。

 ふとリーザさんをよく見ると、上はぴっちりとしたタンクトップで下はパンツ一丁じゃんか!

 ただでさえリーザさんはスタイル抜群でセクシーなのにこの格好はさすがに破壊力がありすぎる。


「いやいや、やっぱり下で待ってますって!」


「駄目だよ! ここで待ってな!」


 部屋を出て行こうとした俺を後ろから抱きつく形で捕まえたリーザさんは俺の足に自分の足を絡めて部屋から出さないようにしてくる。

 わざと胸は押し当ててくるし、手は俺の身体を弄ってるし、足は絡ませてくるわで、ふざけて遊んでるのか本気なのかも分からないし、こんなところを他人に見られたら絶対に誤解されるって!


 リーザさんに絡まれながらベッドの方にジリジリと引っ張られていくので、こんな場面で使うとは思わなかった格闘術スキルを駆使してようやくセクシーダイナマイトなリーザさんから抜け出し、ほうほうの体で下の階に降りていった。


 危ない危ない。いくら俺の精神値が高くて賢者モードでも、リーザさんの天然の魅了攻撃はその精神値を抉ってくる可能性があるからな。


 そして、下の階に降りて行くとハンスさんが俺に声をかけてきた。


「どうだった? 居たかい?」


「いや、リーザさんは居ましたけど、ゼルトさんは風呂に入ってるらしくて、風呂から上がるまで食堂で待たせてもらっていいですか?」


「ああ、いいよ」


 30分くらい待ってたら風呂上がりのゼルトさんと何食わぬ顔をしたリーザさんが食堂に入ってきた。

 リーザさんが「もうちょっとだったのにな…」とか言ってるけど、ここは完全スルーしよう。俺はまだ死にたくないからな。


「よう、フミト! 今日は何の用だ!」


「どうも、ゼルトさん。実は今日初めてこの前一緒に連れて来た子とパーティーを組んで迷宮に行きまして」


「フミトも迷宮デビューしたのかよ」


「それでですね、アイテムというか装備品を発見しましてね。付与が付いていて結構良いものなんですけど、装備的に俺は使わなそうなものだったのでゼルトさんやリーザさんにどうかなと思って…」


「本当かよ、この前マジックバッグを貰ったばかりなのに無理しなくていいんだぜ」


「いや、無理してる訳じゃなくて俺が持つよりもゼルトさん達の方が良いと思って」


 そう言いながら、俺はマジックバッグの中から大盾と剣を取り出す。


「大盾はゼルトさん、剣は良ければリーザさんが使ってください」


 二人はびっくりした顔で大盾と剣を手に取ってしげしげと眺めている。


「えーと、大盾の方は怪力という効果が付与されていて、剣の方は斬撃強化という効果が付与されてるようです」


「凄いじゃねーか! そんな物を俺達が貰っちまっていいのかよ?」


「構いませんよ、俺の運の値が高いおかげで付与付きの武器や防具を手に入れちゃって…その代わり俺から貰ったのは大っぴらに言わないでくださいよ」


「ありがとうよ、フミト。恩に着るぜ! しかし、運の値が高いのは羨ましいぜ」


「あたしはこの身体で払ってもいいんだよフミト」


「いえいえ、リーザさん身体で払わなくても大丈夫ですから!」


 二人に感謝された俺は今度はトランさんとポーラさんに何かあげられたらいいなと思いながら銅の口髭亭を後にした。

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