第48話 秘密の場所を見つけるのは面白い

 6階層でゴブリンの集団を倒し、俺とソフィアは7階層へ繋がる階段のところまでやって来た。


「次が7階層ね。出てくる魔物は似た感じよ」


「うん、了解」


 8階層への階段を目指し、俺とソフィアは出発する。

 ゴブリンを見かけると俺を追い抜かしてゴリゴリと倒していくソフィア。


 あの…俺も試しにゴブリンと戦いたいんですけど……


 角を曲がる。今度はゴブリンとは違う魔物だ。頭が犬の二足歩行の魔物だ。


「あれはコボルトね。たまにコボルトアサシンという上位種の魔物が出るわ」


 まあ、そうは言っても俺達の敵ではない。

 コボルトを難なく蹴散らし俺達は進んでいく。


 丁度、中程まで進んだところでマップに紫色の点の反応が出た。

 この紫の点は俺がある程度近づくと反応するみたいだな。


「ちょっとソフィア、また宝箱らしき点が俺のマップに現れた」


「本当? 今度は何が出るかしらね」


 マップに示された場所まで移動する。


「ここっぽいな。なあ、ソフィア。今度は俺がやってみたいんだが…」


「いいわよ、フミトにお任せするわ」


 目の前の壁を調べてみる。岩の溝を覗き込んだり、手を岩の溝に入れて中を探ったりしてみる。


「さっきはスイッチになる突起みたいのがあったんだっけ」


 突起のように思える部分を何ヶ所か指で摘んで左右に回したり、引っ張ったり押してみたりする。

 そして、その一箇所が当たりだったようで俺の指に押されて反応したのか隠し扉が横に開いた。


「おお! 開いた!」


「やったわねフミト!」


 中の隠し部屋は10畳程の広さか。その真ん中に銀色の大きめな宝箱が鎮座していた。


「ねえ、フミト。今度の宝箱は銀色よ!」


 この前が銅色の宝箱だったので、銀色って事はそれよりも上位の宝箱のようだ。


「なあ、ソフィア。今度は俺が開けていいか?」


「大丈夫? もしかしたら罠があるかもしれないよ」


「たぶん大丈夫だと思う、ちょっと俺にやらしてくれないか」


 俺は宝箱の周囲を確認する。どこにも違和感はなさそうだ。

 そして慎重に宝箱の留め金を外した…時だった。俺の左腕に壁から発射された針が突き刺さる!


 すぐに針を抜き鑑定する。どうやら毒が塗られた毒針だったようだ。

 俺の耐性がお仕事をして毒の効果を打ち消す。ついでに例のスキルが発動して『罠無効化』と『解除』スキルを獲得したようだ。


「えっ! ちょっとフミト大丈夫?」


「ああ、大丈夫だよ。仕切り直して宝箱を開けてみよう」


 ゆっくり宝箱の蓋を開けていく。中にあったのは大盾だ。


「あっ! 今度は盾なのね」


 試しに鑑定してみる。


『鑑定結果』

〈品名:大盾〉

〈名前:怪力の盾〉

〈材質:強靭鋼〉

〈付与:怪力〉

 ◆高硬度な金属で出来た大盾。

 怪力の効果が付与され使用者は通常時の1.5倍の力を出せる。


 なかなか良い盾だ。俺は使わないし、ソフィアにも必要ないからゼルトさんにでも使ってもらおうかな。


「ソフィア、これ俺が貰ってもいいか?」


「いいわよ、フミトの好きにしていいよ」


「ありがとうソフィア」


 アイテムボックスに大盾を仕舞い隠し部屋を出る。

 二人が出て暫くすると部屋へ通じる扉が自動で閉まった。


「あたしは今まで迷宮で隠し部屋を見つけた事がなかったけど結構面白いわね」


「ああ、そうだな。秘密の場所を見つけるのは面白い」


「フフフ、確かにそうね」


 その後遭遇した魔物を蹴散らし、俺達は8階層へ降りる階段の場所に辿り着いた。

 午前中に続いて午後も良いペースだ。


「ソフィア、一気に10階層まで行くぞ」


「はーい、全然疲れてないから大丈夫よ」


 俺達は10階層を目指して駆け抜ける。広い迷宮内も行き止まりの道に当たる事もなくマップのおかげでスムーズに進める。

 およそ2時間後、10階層を走破して、これよりも下層に行くには突破しなくては行けない中ボス部屋の前に辿り着いた。

 どうやら中ボス部屋には冒険者の先客がいるようだ。そして、ボス部屋に入る扉の横には例の転移魔法陣がある。俺は早速その魔法陣の中に入り登録を済ませた。


「ソフィア、俺達よりも先にここに到着した先客がいるようだね」


「そうね、あたし達より先に到着したか、魔法陣に登録していた冒険者が転移してきたかのどちらかでしょうね」


「ああ、なるほど。登録だけしておいて一旦戻り、また転移してきてチャレンジするパターンもあるよな」


「そういう事ね」


 俺とソフィアがそんな話をしていると、準備が出来たのか先客の冒険者パーティーが中ボス部屋に入って行くようだ。

 見たところ5人組のパーティーで、大きな盾を持った戦士風のひとが一人、剣士風の人が二人、魔法職と回復職が一人ずつとバランスの取れたパーティーに見える。


 彼らがボス部屋の中に入ると扉は自動で閉まった。


「俺達はどれくらい待てばいいんだ?」


「最短で20~30分くらいかな…長ければもっとね。仮にボスを瞬殺したとしても前のパーティーが素材を剥ぎ取ったり、宝箱が出たらそれを確認したりするじゃない。そしてそのパーティーがボス部屋から出て5分後に倒されたボスが復活するの。あと、言いにくいけどパーティーが全滅する場合もあるから…その時はギルドカードだけが地面に散らばってるらしいわよ」


「そうか…全滅って事もあるのか」


「そう、それも冒険者を選んだ宿命だからね」


 そういう現実もあるんだなと俺は身を引き締める。


「ところで、ここのボスはなんなんだ? ソフィアは一度経験してるんだろ?」


「確かオーガだったかしら。手下を周りに従えてるけどあたし達ならそれこそ余裕で勝てるわ」


 中ボス部屋の前でソフィアと話していて30分程経っただろうか。

 ようやく中ボス部屋の扉が開いた。


「終わったみたいね。次はあたし達の番だわ」


「ああ、よろしく頼むな。パーティーの大事なパートナーさん」


「フフフ、あたしこそ。あたしの大事なパートナーさん」


 二人並んで中ボス部屋の中に足を踏み入れる。俺達が中に入ると後ろの扉は自動で閉まった。

 中ボス部屋の広さは100メートル四方くらいの大きさだ。ざっと見たところ、ギルドカードは落ちていなかったので前のパーティーは無事だったようだ。

 真ん中にオーガと思われる大きな体躯で上半身が筋肉ムキムキの魔物がおり、その周囲にオークが5体控えていた。オーガはハルバードのような大きな斧を持っていて、オークは剣や槍を構えている。


 俺は隣にいるソフィアに言葉をかける。


「さて、行くとしますか」


「そうね、行きましょうか」


 二人同時に中ボスに向かって駆け出していった。



 うん、結果は瞬殺でした。


 相手に攻撃させる隙も与えずに俺が3匹のオークを倒し、ソフィアは2匹のオークを過剰とも思える攻撃で仕留める。そして残った中ボスオーガを俺とソフィアが同時に斬りつけ首を刎ねた。サクサクと魔物の身体ごとマジックバッグの中に放り込む。


「あっ、フミト。宝箱が出てるわよ」


 ソフィアの指摘で確認する。入り口とは反対の出口前に銀色の宝箱が出現していた。


「今度も俺が開けていい?」


「いいわよ」


 ソフィアに承諾を得て俺が宝箱を開ける。

 中から出てきたのは美しい剣だ。


 早速鑑定してみる。


『鑑定結果』

〈品名:両刃剣〉

〈名前:ソルジャーブレイド〉

〈材質:強靭鋼〉

〈付与:斬撃強化〉

 ◆高硬度な金属で出来た剣。

 この剣の使用者は斬撃力が1.5倍にアップする。



 これもなかなかの剣だ。

 一瞬、俺のサブの武器にしようかなと思ったけど、とりあえず保留だな。


「ソフィア、この剣も俺が貰っていいか?」


「いいんじゃない、あたしは使わないし」


 了承を得たのでアイテムボックスの中に仕舞う。


「よし、忘れ物はないな。じゃあこの部屋を出よう」


 俺とソフィアは中ボス部屋を出る。

 後ろでは出口の扉が閉まる音が聞こえてくる。

 中ボス部屋を出ると下層へ降りる階段がある部屋だった。

 階段の横に転移魔法陣が描かれている。

 俺はその魔法陣の中に入り登録を完了した。


 さて、今日の目標はクリアした。

 ソフィアと拳と拳を合わせ称え合う。


「今日はこのへんにして外に出よう」


「そうね、あたしお腹が減ったわ」


 迷宮の10階層までの攻略を終えた俺達は転移魔法陣を使って迷宮を後にしたのだった。

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