第45話 どうかしら?

 俺の実力を試す試験が終わり俺達はソフィアの屋敷に戻ってきた。

 丁度、お昼を迎える時間だったので、うちでご飯を食べていけばとソフィアに言われ俺はご馳走になる。


 エミリアさんが調理を担当している料理はどれもとても美味しい。

 しかも、可愛いし武芸も結構やるらしい。

 俺がエミリアさんの料理の腕前を褒めると横でソフィアが膨れっ面をしながら


「あたしだってその気になればあれくらい作れるわよ」だってさ。


 ──いやいや、そこ張り合うとこなの?


「ところで、フミト殿。迷宮についての知識はどの程度ありますかな?」


 さり気なく話題を変えるクロードさん、マジ有能です。


 この前、冒険者ギルドの資料室で調べた知識を話す。


 10階層ごとにいるボス部屋の中ボスを倒さないとその下の層には進めない。

 最深部の50階層のボス部屋の大ボスを倒すと迷宮は3日間その機能を停止する。

 停止中は魔物も宝箱も現れない。

 そして3日経過した後、迷宮はリセットされて全ての機能が復活する。


 迷宮には稀に宝箱が出現する。

 隠し部屋だったり、小部屋にいきなり出たり。

 中ボスからも稀に宝箱が出る時がある。

 大ボスは必ず宝箱が出る。

 ボス部屋は1パーティーしか一度に入れない。


「よく調べてますな。フミト殿さすがです。だが、それだけでなく他にも色々と独自のシステムがあるのです」


「どんなシステムでしょうか?」


「迷宮は5階層毎に転移魔法陣があります。ボス部屋の前と後にも転移魔法陣があり、そこを冒険者が登録すれば迷宮の入り口横にある魔法陣に転移出来るのです。そして逆もしかり」


「なるほど、それは便利ですね。一々最初からそこに行くまでの手間が省けますね」


「その通りです。あと、迷宮内に出る魔物は倒してから一定時間そのままにしておくと迷宮に吸収されて消えてしまいます。だが、体内から魔石を取り出せば魔物は素材として活用出来ます。まあ、倒した魔物をマジックバッグにそのまま放り込むという手もあります…迷宮の魔物でも収納して迷宮の外に出れば消えませんからな」


「そうなんですか」


「これにはメリットもありますぞ。例えば、迷宮内に出る魔物でも素材にほとんど価値がないような魔物も居ます。それに倒した魔物の収納スペースの問題もありますので冒険者は魔物によっては素材として回収する物と、経験値だけ貰って素材は放置して迷宮にそのまま吸収させる物を上手く使い分け出来ます。魔物は迷宮に吸収されると一定時間後にまた出現しますので、後からその魔物目当てに来る冒険者が居たとしても何も問題ありません」


「迷宮のシステムは上手い具合に出来ているもんなんですね」


「迷宮は神が作りし物と言われる所以です」


 ──アーク様、セレネ様、お疲れさまです。


「クロードさんの説明は凄く参考になりました。ところで、クロードさんやソフィアはこの街にあるダリム迷宮の何階層まで攻略済みなんですか?」


「あたしは30階層の中ボスを倒してるわ」


「私はソフィア様の護衛兼お供で同行しておりますのでこの迷宮は同じく30階層ですな」


「へー、二人共30階層の中ボスを倒したところなんですね。なら俺もすぐそこに追いつかないといけないな。それでその後は魔物を倒して経験値を獲得しながら俺とソフィアがレベル上げするって感じでいけばいいかな。クロードさんもたまには手伝ってもらえるとありがたいな…」


「フミト殿、私の用事がない時に声をかけて頂ければ喜んで行きますぞ。遠慮なさらずに」


 食事も終わり暫く歓談した後、俺とソフィアは街中に買い物に行く事にした。

 ソフィアが屋敷内で着る普段着を買いたいというのでそのお付き合いだ。

 俺も、適当な普段着が欲しかったのでソフィアの買い物のついでに買う予定だ。


 街中の洋服屋にはオーダーメイドの店と、ある程度出来上がった既製品をその場で身体に合わせて調整してくれる店がある。

 ソフィアはてっきりオーダーメイドの店が御用達なのかと思ったら、屋敷で着る普段着は動きやすいラフな服装が好みなので後者の店をよく利用してるそうだ。


 俺の普段着は手頃な価格の店で適当に既製品を選んで買う。

 まあ、ほとんどはソフィアが選んでくれたのを追認しただけなんだけどね。


 次はソフィアの番だ。


「ねえ、フミト。フミトはあたしが着るとしたらどんなのが似合うと思う?」


 ──いきなりハードルの高い質問が来たな…汗。

 考えろ! 必死に考えろ俺!


 ソフィアを見ながら必死に考える。


「えーと… ソフィアはスレンダーで足がスラッとして長いよね。ミニのフレアスカートやキュロットパンツなんてどうかな…?」


 そう言って俺は薄いグリーンのミニスカートとブラウンのキュロットパンツを指差す。


「へー、フミトってこういうのが好みなんだ。ならちょっと待ってて、着替えてくるから」


 そう言ってソフィアはミニスカートとキュロットパンツを持って店の奥の部屋に入っていく。

 暫くすると奥の部屋からミニスカートを履いたソフィアが出てきた。

 白く透き通るような色の足にミニの薄いグリーンのスカート。

 調整の必要がないようでソフィアにぴったり合っている。

 ソフィアがスカートの端を両手で摘んで小首を傾げおどけた動作をしてる。


「どうかしら?」


 そう言ってくるくるっと回った姿は見とれてしまう程の美しさだ。


「いいんじゃないかな…うん」


「じゃあ、これにするわ」


 また奥の部屋に戻って着替えてくるようだ。

 俺はその間に店の店員に値段を聞く。


 ──うん、これなら払える。


 俺はソフィアが奥の部屋から帰って来る前に勘定を済ましておいた。


 着替え終わったソフィアが元の服を着て出てきて店員に何やら聞いている。

 店員から既に支払いは終わってると聞いたのか、俺の顔を見て満面の笑みを浮かべながら近づいて来ていきなり抱きついてきた。


「フミトありがとう! この服、大事に着るね!」


 ふっ、ソフィアが喜んでくれるならこれくらいの出費は大したことないさ。

 何だかリア充のデートみたいな感じになってるが気にしない気にしない。


 その後、ずっとご機嫌なソフィアを家まで送り届け、俺は自分の宿に帰るのだった。

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