第44話 ダンディーなオジサマは強かった
俺は自分の実力を認めて貰うべく、クロードさんと模擬戦をする事になった。
場所はソフィアの屋敷の庭でもよかったのだが、綺麗に手入れされた庭を破壊しそうなので、街から出て少し行ったところのちょっと開けた場所に行く事にした。
「念の為に聞くけど、フミト大丈夫よね? クロードは強いわよ」
「たぶん大丈夫だと思うけど、戦いはやってみないとわからないからね。もし俺が負けたらそこまでの実力ってことさ」
「もう、何言ってんのよ! あたしがフミトと一緒に行きたいんだから頑張ってよね。負けたら許さないわよ」
「わかったよソフィア。俺もソフィアと一緒に行きたいから頑張るよ」
街を出て暫くすると大きく開けた場所に着いた。
「着きましたぞ」
周りは草が少なく地面が剥き出しになっている。
「ここなら大丈夫でしょう。ここはたまに冒険者が魔法の練習をしたり模擬戦をして練習してる場所ですからな。幸いな事に今は他に誰も居ません。とりあえず、魔法なしで戦ってみましょう」
俺は屈伸したり伸びをして軽く身体をほぐす。
「俺の準備は出来ましたよクロードさん」
「では、そろそろ始めましょうかフミト殿。それではソフィア様、開始の合図を!」
お互いに木剣を持ち装備を身に着け対峙する。
クロードさんも剣が得意武器のようだ。
そしてこれがクロードさんのステータスだ。
やはりというかクロードさんはただの執事ではなかった。
名前:クロード バルジャン
種族:エルフ
年齢:148
職業:執事 冒険者Aランク
状態:普通
レベル Lv.82
HP:2378
MP:2125
筋力:1973
魔力:2619
精神:2155
敏捷:2973
運 :674
《スキル》
言語理解(ドルナ大陸共通語)
鑑定
統率 Lv.5
剣術 Lv.9
弓術 Lv.5
格闘術 Lv.4
調理 Lv.3
解体 Lv.7
隠密 Lv.7
解除 Lv.6
礼儀作法 Lv.9
《耐性》
全状態異常耐性
《魔法》
生活魔法
精霊火魔法 Lv.8
精霊風魔法 Lv.8
精霊水魔法 Lv.7
精霊土魔法 Lv.6
《加護》
《固有スキル》
【幻影】
◇◇◇
負けられない戦いが今始まる。
「わかったわ。それでは始め!」
開始の合図と共に、クロードさんが目にも留まらぬような速さで俺に肉薄してきて木剣を俺の胴目掛けて突き出してきた。もの凄い速さだ。
それを俺はサイドステップを使ってギリギリ躱し距離を取る。
「ほう、私のこの突きを躱しますか…やりますな」
今度はこちらからも様子見の攻撃だ。
胴を狙うと見せかけ、フェイントを使って剣を持つ腕を下から掬うように狙う。
決まったかと思った瞬間、クロードさんは身体を捻り俺の攻撃を躱す。
──むむ、剣術の腕も私と同等ではないか。いや、もしかしたら私より上かも……おそらくまだ本当の実力を出していない。フミト殿のあのステータスのどこにこんな力が隠されてるのだ?
「失礼、どうやら私はフミト殿を見くびっていたようです。謝罪させていただきますぞ。ではこれからは本気で参ります」
クロードさんはそう言ったかと思うと、連続攻撃を仕掛けてきた。
流れるような技の連続で動きに無駄が全く無い。
対する俺も剣術のレベルではクロードさんに一つ劣るが、そこは判断力と持ち前の速さでカバーしてその攻撃の全てを見切り正確に弾き返す!
そして、お互いに目にも留まらぬ速さで剣技を繰り出し体を入れ替えながらの攻防が続く。
──凄いわ! フミトが初めて戦ってるところを見るけど、あのクロードの攻撃を全て弾き返してる。しかもまだ余裕があるわ。
──私が全力で攻撃してもフミト殿にはまだまだ余裕があるように見えますな。息も全く切らしていない。まさかこれほどまでに強いとは……。仕方ない、こうなったら最後の切り札のあれを使うしかないか。
剣と剣を合わせた鍔迫り合いの状態から両者が飛び退き間合いから離れる。
俺の目から見て、クロードさんは何かを仕掛けてくるような予感がした。
その時だった。目の前に剣を構えたクロードさんの姿があるのに、後ろからもの凄い剣気が一瞬に押し寄せてきたのだった。その剣気に即座に俺の身体が条件反射で反応する。尋常ではない速さで振り向きながら俺に向かって突き出された剣の軌道を逸して受け流す。
そして、本来なら後ろに居るはずのないクロードさんの姿がそこにあった。
──どういう事だ!? 確かにクロードさんは俺の前方に居たはずだ。だが俺の死角になる後ろからクロードさんは攻撃してきた。もしかして、クロードさんの持っていた幻影というユニークスキルがこれなのか。
──この若者は私の必殺技まで躱すのか!
そのスキルがどういうものか理解した俺はマルチマップの立体投影を使い、常にクロードさんを補足するようにした。
クロードさんはもう一度幻影スキルを使った。今度は一人だけでなく三人のクロードさんが周囲に現れて同時に攻撃してくる。
だが、もうその攻撃は俺のスキルのおかげで見切っている。俺の左側に回り込んだのがクロードさんの本体だ。その本体が中段の構えから俺に向かって木剣を突き出してくるが、俺はそれを上回るスピードで屈みながら体を入れ替えてクロードさんの背後に移動した。
突然、目の前から消えた俺に向かって突きを放った姿のままのクロードさんの首筋に間髪入れずに俺は木剣を静かに押し当てる。
その事実に後ろを振り向き、驚愕の表情で俺を見るクロードさん。
少ししてクロードさんが口を開き俺に告げる。
「私の負けのようです。見事に完敗だ。フミト殿、その実力はまさしく本物だ。これならソフィア様をあなたに安心して任せられますぞ」
「いえ、クロードさんは凄く強かった。培われた剣技の素晴らしさ、流れるような連続攻撃の流麗さ、どれをとっても尊敬出来るものでありました」
「そう言って貰えると私も少しは浮かばれます。フミト殿のその剣技の強さからして魔法の方もさぞ強力な事でしょうな。私にはわかります。あと、フミト殿はもしやソフィア様と同じように本当の実力を隠していらっしゃるのか?」
「ええ、まあそういうところです。色々事情があって…… 俺はあまり目立ちたくないもんで…」
「わかりました、それなら私もフミト殿の強さに納得ですな」
──フミトとクロードの戦いを見ていたあたしは今でも胸がドキドキしてる。フミトが勝つと信じてたけどあたしの想像以上の強さだわ。胸の高鳴りが収まらない。この気持ちどうしたらいいの。
「ソフィア様、フミト殿の実力は私が保証します。ソフィア様とフミト殿が一緒に行く事を許可しましょう」
「ありがとうクロード」
模擬戦で俺はクロードさんに勝利して、ソフィアとの一緒の行動の許可を無事に貰う事が出来た。しかし、あの幻影スキルは凄かったな。俺も自分のスキルがなければ危なかったかもしれない。
「ところで、クロードさん。俺から提案があるんですけど」
「なんですかなフミト殿?」
「俺達がお願いした時にはクロードさんも一緒に戦ってくれませんか?」
「そのような要請があれば、このクロード喜んでお供致しましょう」
そして俺達三人は行きのピリピリとした雰囲気とは打って変わって、皆和やかな雰囲気で街へ帰っていったのだった。
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