第37話 あたしは自分らしく生きたいの
なんと、俺はエルフ族の王女ソフィアと知り合いになってしまった。
俺も彼女も何か運命的なものを感じたのか、初対面なのにお互いに秘密を打ち明ける事になった。
で、今はなぜか二人で歩いてる。
ソフィアの背の高さは俺より10センチ程低めかな。
ベージュのピッチリしたズボンに茶色のブーツ。上は厚めの生地の白いシャツ、シャツの上には革のベストを着ている。俺と同じようにフード付きのマントを羽織り、腰には両側にダガーのような少し長さ違いの剣をつけている。そして腰の後ろにベルトでマジックバッグを装着してる。冒険者の出で立ちだな。
「ねえねえフミト。フミトはどこに泊まってるの?」
「ん? 銅の帽子亭って宿だよ」
「あー、そこならたぶん知ってる」
「ソフィアはどこに住んでるの?」
「えー、やだー! いきなりレディーの住んでる家を尋ねるの?」
「いや、君が俺の泊まってる宿を聞いてきたから同じように聞いただけだよ…汗」
「ふふ…冗談よ。今度教えてあげる。フミトなら大歓迎だから遊びに来ていいわよ」
この小悪魔め!
「フミトって何でその強さでEランクなの?」
「田舎の森からつい最近このオルノバの街に出てきたばかりだからね。冒険者もこの街で初めて登録したんだ。だからまだEランクなのさ」
「へー、そうなんだ。つい最近って1ヶ月ちょっと前くらいよね? その頃からあたしの周りの精霊達がざわざわしてたから」
「あー、そのくらいかな。この街に来る途中で商人と冒険者のパーティーと知り合ってさ。その人達がこの街に来たらどうだいって薦めてくれたのでこのオルノバの街に来たんだ。ソフィアこそ、何でエルヴィス国の王女様がこの街に居るんだ?」
「まあ、あたしは王女様といっても第三王女だから…兄の王子達と姉の王女や第二王女に比べて凄く自由なのよね。エルヴィスのお国柄もあるし。それに王女という枷やしがらみに囚われずに、あたしは自分らしく生きたいの。エルフ族は世界中のあちこちに散らばって暮らしていて、あと意外かもしれないけどエルフ族は武と魔法の向上が奨励されてるの。この世界ではトップクラスに強いのよ。そしてあたしはこの街が何となく気に入ったのでここに滞在してるの」
「なるほど。枷やしがらみに囚われずに自分らしく生きたい…か。俺も同感だな」
「あたしも子供の頃はエルヴィスで師匠に付いて武芸を習ったり、魔法を習ったりしてたのよ。そして偽装スキルがしっかりと身についたからあたしはエルヴィス国を出る事にしたの。父は少し心配してたけど、母は若い頃お転婆で国の外に出て自由に暮らしていたからあたしが森の外へ行くのをすぐに賛成してくれたわ」
なるほど、ソフィアはお母さんの性格を引き継いでるのか。
ところで、ソフィアって人族に例えると何歳くらいなんだろう。
「ねえ、ソフィア。君って人族に例えると何歳くらいになるの?」
「そうねえ、エルフ族は長命種で寿命は300年くらいでしょ。ハイエルフになるとそれが更に伸びて350年くらいになるの。あたしを人族の年齢に例えると20歳前くらいかしら。精神年齢も人族に例えた時と同じくらいって言われてるわ。そしてあたし達エルフ族と同じ長命種にドワーフ族がいるわね」
「エルフ族は長生きなんだなー」
「そうなのよね。でも人族とお友達になっても人族の方が早く寿命が来ちゃうでしょ。それって凄く寂しいのよね」
「そういえば、俺は加護のおかげで寿命が300年に伸びたって鑑定で出てたな」
「えっ、それ本当なの? 今フミトは何歳だっけ?」
「俺は25歳だよ。だから残りの寿命は275年になるのか…」
「ちょっと待って、あたしの寿命が350年でしょ。今のあたしの歳が70だから………もう、計算面倒臭いわね」
「あー、ソフィア。君の残りの寿命は280年だな」
「ありがとフミト。という事はフミトが残り275年であたしが280年…何か釣り合いが取れてないかしら?」
「そういやそうだな。でも先の長い話だしあまり深く考えても仕方ないよ」
「そうね。とりあえずよろしくねフミト」
「ああ、よろしく」
ソフィアと二人で街中をブラブラと歩いていく。
途中の露天でソフィアがイチゴが食べたいと言ったので袋で買ってあげる。
王女らしからぬ食べ方でムシャムシャと食べているけど、ソフィアの礼儀作法のスキルは現在お休み中のようだ。
後で聞いたら、礼儀作法は公式な場の為に取得したので、普段は全く発動させてないらしい。
「フミトだって、普段のあたしが礼儀作法に煩かったら嫌でしょ?」と言われ納得。
「ねえ、フミト。早く冒険者Dランクになりなさいよ」
「どうしてさ?」
「だってフミトがDランクになれば、一つ上のCランクの依頼も受けられるでしょ。そうすればあたしとパーティーを組んで依頼が受けられるじゃない!」
「確かにそうだな」
「あたしって迷宮に行く時は付き添いが一緒に行ってくれるんだけど、それだけだとつまらないじゃない」
「そうだなぁ、考えとくよ。Dランクに上がればいいのか」
「フミト、頼んだわよ」
その後、お茶して時間を潰し他愛もない話をして互いに宿や家に帰ることになった。
「じゃあまたね。あたしから何か用がある時はフミトの宿に連絡するわね」
「おう、またな」
去っていくソフィアを見送りながら、何だか傍から見ればデートみたいな一日だったなと今頃になって気づく俺。
でも、相手は仮にもお忍びの王女様だからな。
どう相手するのがいいのか全くわからない俺だった。
ハハ、なるようになれ…だな。
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