運命の出会い編
第36話 『君だよ!君!君!』二人の運命の出会い
あの三人組はその後、衛兵に捕らえられ牢屋に収監されたようだ。
調べたら余罪がいっぱい出てきてあちこちの街で同様の被害が出ていた。
取調べ後は刑が確定して犯罪奴隷になり鉱山に労働者として送られるらしい。
俺としても、あんな連中が街中を
さて、今日はモルガン商会から連絡があって今向かってるところだ。
たぶん、マヨネーズの製品化の目処が立ったのだろう。
店に着くと息子のアランさんが俺を出迎えてくれた。
モルガンさんは用事で商人ギルドに行ってるようだ。
「やあ、フミトさん」
「アランさん、お久しぶりです」
「あれから工場を手配して原材料の用意も済んでようやく生産体制が整いましたよ」
「それは良かったですねアランさん」
「従業員にも食べさせてみたのですがすこぶる好評でした」
良かった。こっちの世界の人達の味覚も元の世界と似てるみたいで。
「で、今日のご相談なんですが、売り出す前に何か希望みたいなものはありますか?それと、利益の配当先はフミトさんの冒険者ギルドカードに振り込みという形で宜しいでしょうか?」
「配当先はカードで構いませんよ。俺はモルガン商会を信頼してますから」
「そう言って貰えるとありがたい。売り出す前の希望の方はどうですか?」
「うーん、そうですね…特にこれといって…ああ、売り出す時は実演試食販売をしてはどうですか? 新しい商品は取っ付きにくくて様子見しちゃうじゃないですか。売る方でお客に食べ方、調理の仕方などを実演すればお客も安心して購入出来るじゃないですか」
「おー、それは良い考えですね。父にも伝えておきます」
俺もどういう結果になるのか楽しみだ。
「じゃあ、モルガンさんに宜しく伝えておいて下さい」
そう言ってモルガン商会を後にして俺は久しぶりに街のお店巡りに行く。
何軒かの店を冷やかした後、その次に入った店で面白いものを見つけた。
おろし器だ。
「あっ、これ欲しかったんだよな。岩塩もおろせるし、これであれをすりおろせばアレも出来るはず」
とりあえず一個買っておこう。
何でこんな物と思うかもしれないが、俺的には大満足な買い物だった。
おろし器をマジックバッグに仕舞い、気分を良くした俺は鼻歌を歌いながら歩いていく。
途中の露天で焼いた肉の表面を削ぎ落としてパンでその肉を挟んだ食べ物を買い、広場のベンチに座って食べ始めた。
やわらかな陽射しが上から降り注いでちょっとしたピクニック気分だ。
水筒の水を飲みながら肉挟みパンを食べ終わったタイミングで、ベンチの俺の座ってる場所のすぐ隣に後ろから近づいてきた誰かが座ったのだった。
ふと、なにげなく隣に座った人物を確認してみる。どうやら女性のようだ。
マントのフードを取って乱れた髪を直している。その横顔はひと目見ただけで凄い美人だとわかる。
リーザさんも美人だが、隣の女性はもっと神秘的な感じだ。
俺がその横顔を眺めていると、隣の女性がこちらを見てお互いに真正面で向き合う形になった。
透き通るような金髪のショートボブ。瞳の色はアメジスト色でミステリアスな雰囲気だ。年齢は俺よりも若干若く見える。たぶん二十歳前後くらいか?
すると、その子がこちらに向かって「こんにちは」と挨拶してきた。
驚いた俺は慌てて後ろを振り向く。
だって、俺に挨拶してきたと思ったら後ろの人だったってよくあるパターンじゃん。元の世界でも可愛い子が手を振りながら俺に向かって走ってきたと思ったら、実は俺の後ろに居る男に向かって手を振っていたという事もあったしな。
後ろを振り向いたけど誰も居ない。
もう一度、その子の方へ向き直る。
そしてその子からの二度目の挨拶。
「こんにちは」
俺は目が点状態で固まったままだ。
えっ? この街で俺にこんな美人で可愛い子の知り合いっていたっけ?
「あたしが挨拶したのは君だよ!君!君!」
「えっ、俺なの!?」
「うん、そうだよ。前からずっと気になっていたんだっ!」
これって何かの勧誘? もしかして何か売りつけられるの? こんな子から前から気になってたんだって言われるなんて一生に一度あるかないかだぞ。そんなの急に信じられるか? でも、そういえば誰かの視線を感じていたけど…まさかね。
「まさか、人違いじゃないよね?」
「もう、何言ってるのよ! あたしは誰よりも君に凄く興味があるの!」
「どうして? どうして俺なんかに…俺はどこにでもいる平凡な冒険者だよ」
「ねえねえ、それよりもお互いに自己紹介しない? あたしの名前はソフィア。君は?」
「俺の名前はフミト。一応冒険者をやってる」
「じゃあ、フミトって呼んでいい? あたしの事もソフィアって呼んで。あと、フミトが冒険者なのは知ってるよ。この前孤児院の依頼を受けてたよね」
「ああ、その通りだソフィア。孤児院で子供達に色々と教えてたんだ」
「そう、あたしもずっと前に孤児院の依頼を受けたことがあるの。その時は礼儀作法を教える依頼だったけどね」
「そうなのか。君も孤児院で教えてたことがあったんだね。ところで、ソフィアに聞きたいんだけど…何で俺なんかに興味を持ったの?」
「あたしね、エルフ族なの。あたしの周りに居る精霊達が普段は澄まして大人しいのにフミトを見るとテンションが上ってるのよ。ねえ、君は一体何者なの?」
エルフ族? この子はあの有名なエルフ族なのか!? どおりで無茶苦茶神秘的で可愛いはずだ。でも、俺がラノベで読んだ知識のように耳が尖ってないな?
「ソフィア、君はエルフなのか。でも、エルフって耳が尖ってたりしないの?」
「はぁ、フミト何言ってんの? エルフも人族も見かけはほとんど変わらないよ。外見上の違いはエルフの方が肌の色がより白くて日焼けしにくいかな。あとは…そうねぇ、精霊との親和性が高いし、長寿の種族だから人族の三倍くらい生きるわね。それよりもさっきの答えを聞かせてよ。君は何者なの?」
とりあえず、長寿の種族ってところは俺知識で合ってるようだが、ドワーフの時と同じで実際はラノベ知識とは若干違ってるようだ。たぶん、同じ異世界でも種族ごとの外見が人とそれほど変わらない世界がたまたま俺の波長と合ってたのだろうな。
「ごめんごめん、もの凄い田舎から出てきたばかりだから聞いたことはあるけどエルフ族と会うのは君が初めてなんだよ。ところで、何者って言われても…Eランクの平凡な冒険者としか…」
「もう、嘘言わないで! あたしも鑑定が使えるからわかるの! フミトのレベルやステータスとあたしがフミトから感じる強さや魔力の大きさが全然一致しないのよ。それに精霊達が君のところに寄っていきたがるの。精霊達がフミトを好きになってるし、孤児院の依頼を受けてたから悪い人じゃないのはあたしにもわかるわ」
へえ、ソフィアは鑑定持ちなのか。どんなステータスなんだろう?
試しに鑑定眼で鑑定してみるか。
おや、ステータスに超強力な偽装が施されているけど看破してみる。
名前:ソフィア エルヴィス
種族:ハイエルフ
年齢:70
職業:エルヴィス国第三王女 冒険者Cランク
状態:普通
レベル Lv.66
HP:2537
MP:2609
筋力:1863
魔力:2931
精神:2084
敏捷:2612
運 :1069
《スキル》
言語理解(ドルナ大陸共通語)
鑑定
偽装 Lv.8
統率 Lv.2
双剣術 Lv.7
短剣術 Lv.3
弓術 Lv.7
格闘術 Lv.1
受け流し Lv.5
調理 Lv.4
解体 Lv.4
隠密 Lv.5
解除 Lv.3
礼儀作法 Lv.7
《耐性》
全状態異常耐性
《魔法》
生活魔法
精霊火魔法 Lv.7
精霊風魔法 Lv.7
精霊水魔法 Lv.5
精霊土魔法 Lv.5
精霊大魔法 Lv.3
《加護》
【精霊王の加護】
《ユニークスキル》
【以心伝心】
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なんだこれ!
ステータスは俺よりは若干劣るが滅茶苦茶強い!
しかも、種族のハイエルフってなんだよ?
もっと驚いたのがソフィアは王女様じゃないか!
魔法も剣術もバランスが取れてる上に弓術まで高レベルだ。
それに、精霊王の加護持ちでもある。
ステータスが普通より高いのはハイエルフという種族と精霊王の加護の恩恵だろうか。
精霊王の加護があるくらいだから悪者では決してないだろう。
むしろ、俺の方がソフィアに何者なのか聞きたいくらいだよ…汗
「うーん、そうだな。教えてあげてもいいけどそれには条件がある」
「なになに? どんなこと? さすがにここで裸になれとかいやよ!」
「いや、そんなことじゃないよ。ある意味それに近いかもだけど…先にソフィアがステータスの偽装を解いて自分の正体を明かしてくれたら俺も本当の自分を見せるよ。俺も鑑定が出来るからね。君こそ只者じゃないのも何となくわかるし、俺に話しかけてきた君に先に自己紹介をして欲しい。あとは君が俺を信用するかしないかだけだ」
「えー、どうしようかな…あたしが見せたらフミトも絶対に見せる? フミトが裏切らないって約束してくれるなら考えてもいいわ」
「ああ、ソフィアが見せたら絶対に見せるよ。神に誓って」
ソフィアは暫く考えていたが意を決したようだ。
「わかった、今偽装を解いたわ」
さっき見た鑑定結果が俺の目に写る。
「ソフィア、君は王女様なのか。しかもハイエルフだ」
「うん、それが知れちゃうと色々と面倒でしょ。だから普段はステータスを偽装してるの。それに気配を薄くしていて見かけは人族とそんなに変わらないからハイエルフなのはバレないけどね。でも、内緒よフミト」
「ソフィア、もう元の偽装状態に戻していいよ。そして約束だから俺も素のステータスをソフィアに見せよう」
俺もステータスの偽装を解く。
ソフィアが俺のステータスの鑑定を始める。
そしてソフィアの顔が驚きに包まれる。
「なっ! これ本当なの!? 神様の加護が二つもある!」
「ああ、本当さ。何の因果か二人の神様の加護を貰っちゃってさ」
「凄い、やっぱりあたしの勘は当たってたのね」
「でも、内緒だよ。これは二人だけの秘密にしてくれよ。俺は見かけ通り平凡な冒険者なんでね…」
「フフフ、わかったわ。そういうことにしておいてあげる。フミトとあたしの二人だけの秘密ね」
そう、これが俺とソフィアとの運命の出会いだった。
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