第25話 引っ越しのアルバイト
今朝も目覚めは快調だ。
起きて裏の井戸で顔を洗うと気持ちが引き締まるような気がする。
食堂で朝食を食べ、部屋に戻り身支度を整える。
部屋のドアに鍵をかけ、アルフさんに鍵を預け宿の外に出る。
今日の空は曇っているが、雨は降らなそうだ。
今日は朝から冒険者ギルドに向かうつもりだ。
暫く歩いていると、冒険者風の人達が俺と同じ方向に歩いていく姿を見かける。
パーティーらしき集団もいれば、ソロっぽい人もいる。
何か皆強そうに見える。
だけど、こっそり鑑定眼で数人を鑑定したら俺の方が無茶苦茶強かった。
うーん、俺って普通の常識から凄く外れてるのかな?
表面上のステータスは偽装スキルで常識的なものに修正してあるけど、もしかしたら俺ってこの世界で凄く強いのかもしれん。
ちなみに今の俺の素のステータス。
名前:フミト ウエノ
種族:ハイヒューマン
年齢:25
職業:森の上級探索者 冒険者Fランク
状態:普通
レベル Lv.52
HP:3491
MP:3846
筋力:3512
魔力:3737
精神:3226
敏捷:3202
運 :2151
《スキル》
言語理解(アーク語)
言語理解(ドルナ大陸共通語)
マルチマップ
並列思考
遠見
暗視
完全偽装
HP・MP自動回復
統率 Lv.1
剣術 Lv.8
短剣術 Lv.3
斧術 Lv.6
槍術 Lv.4
盾術 Lv.7
格闘術 Lv.4
調理 Lv.4
造形 Lv.5
解体 Lv.5
隠密 Lv.3
《耐性》
全状態異常耐性
即死無効
《魔法》
生活魔法
火魔法 Lv.6
水魔法 Lv.5
氷魔法 Lv.3
風魔法 Lv.8
土魔法 Lv.8
白魔法 Lv.5
無魔法 Lv.1
《加護》
【アーク神の加護】
《ユニークスキル》
【神の気まぐれな力添え】
【アイテムボックス】
【鑑定眼】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
この前、通常種のバトルウルフを倒したけどレベルは上がらなかった。
変異種にトドメを刺したのはリーザさんだし。俺はパーティーを組んでいないしな。あと、統率のスキルがいつの間にか付いていた。何でだろう…
さて、そんな事をしてるうちに冒険者ギルドに到着だ。扉を開けて建物の中に入る。
おー、結構人が居るな。その日の依頼を受けようと朝から多くの冒険者が来ているぞ。
俺も早速依頼が貼られた掲示板の前に行ってみる。
掲示板は依頼が各ランク別に分かれていて自分の対象の依頼が探しやすいようになってるな。
──俺はFランクだからこっちか。
Fランクの依頼が貼り出されている掲示板の前に行き、今日貼り出されている依頼を確認する。
依頼内容で多いのは力仕事やお使い、そして簡単な薬草の採取などだ。
薬草の採取はこの街の外へ行き、森や林、草原での採取になるのか。
普通なら薬草採取が定番なんだろうが、俺の初依頼は力仕事やお使いにしよう。
一枚の依頼書を剥がし、この前俺の冒険者登録をしてくれたジーナさんの受付カウンターの列に並ぶ。
暫く待ってると俺の順番が来たようだ。
「次の方どうぞ!」
ジーナさんの声に従い、受付の前に置かれた椅子に座り依頼書とギルドカードを出す。
「あっ! えーと、この前登録したフミトさんですよね。付き添いの綺麗なお姉さんがとても印象的だったので覚えていますよ!」
俺は朝から苦笑いする。
既にあのイメージが定着してるのかね。
「はは、そのフミトです。今日はこのFランク依頼を受けたいと思って」
「依頼書をお預かりします。えーと、荷物運びの依頼ですね。Fランクの依頼はとても地味なものが多いですが、冒険者としてこの街や人達に馴染み受け入れられるのも大切な事です。ギルドの方針としてもただ強いだけの冒険者ではなく、街の人達の役に立つような冒険者を育成するのも重要な仕事なんですよ」
「なるほど、皆に愛される冒険者ってやつですね。俺も同感です」
「はい、それでは受理しましたので依頼頑張ってきてくださいね。向こうにはもう一人お手伝いの方がいるらしいので宜しくお願いします」
俺は受理された依頼書を持って今日の仕事先に向かう事にした。
依頼内容は引っ越しのアルバイトみたいなものだ。
指定された場所のアパートらしき建物の二階のドアをノックする。
ドアの中から出てきたのはお婆さんだった。
「えーと、冒険者ギルドの依頼を受けて来たのですが、依頼を出したマリーさんのお宅で間違いないですか?」
「おぉ、来ましたか。そう私が依頼を出したマリーですよ」
どうやらここで間違いなさそうだ。
俺は依頼書に書かれた依頼内容を復唱して本人に確かめる。
「依頼内容は今住んでいる二階の部屋から空き部屋になった一階の部屋に移るという依頼でよろしいでしょうか? それと、俺の他にもお手伝いしてくれる人がいるって聞いてますけど」
「ええ、その通りです。近頃足が弱ってきて階段の昇り降りが辛くなってきてねぇ。丁度一階の部屋が空いたから大家さんに頼んで部屋を移らせてもらうんですよ」
なるほど、それは納得だ。歳を取ると階段の昇り降りが大変だもんな。
そんな話をしていると後ろから声がかかった。
「やあ、マリーさん。依頼がどうのと話し声が聞こえてきたんで見に来たが、依頼を受けてくれる人が見つかったのかい」
そう言って声をかけてきたのは俺より年上の隣の建物に住んでいる人のようだ。
「ええ、この人がそうですよ」
「どうも、依頼を受けたフミトです」
「俺は隣に住むウエルドだ、マリーさんに部屋を移る時は手伝ってくれと頼まれて約束してたので俺も一緒に手伝うよ。フミト君今日はよろしくな」
「わかりました。こちらこそよろしくおねがいします」
「よし、さあ始めよう!」
男手が二人居ると荷物の持ち運びも楽だ。
一人で大きな家具を背負って狭い階段を降りるのは、例え人間離れした力があっても難しそうだしな。
マリーさんは物をなかなか捨てられないタイプの人らしく、一人暮らしにしては荷物が少し多かったが、ウエルドさんと二人で荷物を運んで物の位置決めなどをしても昼頃には引っ越しが完了した。
以前の部屋の掃除をして一段落する。
ウエルドさんがマリーさんの大家さんのところまで報告に行ってくれて大家が確かめに来た。
大家さんがマリーさんの代筆をして依頼書にサインを書いてくれる。
これで依頼は完了だ。
人生初の冒険者の仕事は元の世界でもありがちな引っ越しのバイトだったが無事終了だ。人の役に立つ依頼は小さなものでも心が満ち足りるものがある。
帰りがけにマリーさんの「助かったよ。ありがとう」というお礼の言葉を聞けて、俺は短い時間だったが良い汗をかいたなと気分良くその場を後にしたのだった。
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