第18話 オルノバの街への誘い

 こちらの戦闘が終わり、斜め後ろを振り向くと、丁度同じタイミングで魔法使いのおっさんが残った通常種を倒したようで倒された魔物が地面に横たわっていた。


 念の為に、魔物がまだ生きていないか確認して、全部の討伐を確かめた後に俺はここで出会った連中と向き合いお互いに挨拶する。


 巨漢戦士がまず口を開く。


「加勢してもらって本当に助かった。俺は戦士と盾職を兼ねた冒険者で名はゼルトだ」


 そして向こうのメンバーや同行者が次々に名乗りを上げる。

 次は美人剣士さんだ。


「あたしはリーザ。剣士をやってる。このゼルトの妻で同じパーティーの冒険者さ」


 おお! まさかの美女と野獣のカップル! これは予想外だ。


 次の自己紹介は魔法使いのおっさんだ。


「私はトラン。魔法職だ。ゼルトのパーティーのメンバーだ」


 苦み走った渋いおっさんだぜ。


 そしてふくよかおばさん。


「おほほ、私は回復担当のポーラと申します。トランは私の主人ですのよ」


 こっちもまさかの夫婦なのかよ! でも、おっさんとこのおばさんお似合いの夫婦だな。


 ゼルトと名乗った大男が他の人達を紹介する。


「そっちの若い二人は荷馬車の御者と護衛を兼ねているマテオとエルナンだ」

「そして、そちらの方が俺達の依頼主でモルガン商会のモルガンさんだ」


 そしてゼルトさんは続けて言う


「モルガンさん、危ない場面を見せちまって申し訳ない。その責任を取って俺達への依頼料は半分に減らしてくれていい」


 その言葉を聞き、モルガンと紹介された商人が話し出す。


「いえいえ、結果的に私も荷馬車も守られたのですから依頼料は全額お支払いしますよ。見れば先程の魔物はこの街道筋では滅多に見ないような相当な強さの変異種のようですし、ゼルトさん達が苦戦するのも仕方のない事です」


「モルガンさん、そう言ってもらえるとありがたい」


 彼らの契約がどうなのか知らないが、どうやら話はまとまったようだ。


 商人のモルガンさんが俺に向かい口を開く。


「私からもあなたに礼を言いますぞ。加勢して頂きありがとうございます」


 そう言ってモルガンさんは深々と礼をする。


「いや、俺はたまたま通りかかっただけですし、加勢という程の働きもしていませんよ。それに、最後に変異種に止めを刺したのはリーザさんだし。俺は油断してた通常種を倒しただけです」


 そうしてお互いの自己紹介やお礼の言葉などが終わり、ここに居る人達がどんな人達なのか俺の鑑定眼でこっそり鑑定したら、商人のモルガンさんが鑑定スキル持ちだった。


 こりゃ俺のステータスを鑑定されたら色々と面倒だな。


 そんな風に焦っていたら、《完全偽装》スキルを獲得した。

 ゼルトさんや他のメンバーのレベルやステータスを参考にして今のうちに偽装しておこう。


 だけど、この中でレベルが劣る御者の二人とモルガンさん以外は皆レベルが30台なのに俺と比較してもステータスがそれほど高くないな。

 偽装を済ましてホッと一息ついていると、モルガンさんが俺に話しかけてきた。


「ところであなたのお名前をお伺いしてもよろしいかな?」


「あっ、すみません。申し遅れましたが俺の名前はフミトって言います。ここからずっとずっと西にある森の小さな集落に俺の爺さんと自給自足で二人で住んでいたのですが、先日その爺さんが亡くなったので、俺は街へ出ようと決心して森を出てきました。父も母も居たのですが、母は俺が10歳の時に病で亡くなり、父は俺が子供の頃に出稼ぎに行ってくると言って森を出ましたがそれっきりで…。集落には最初5家族居たのですが、皆街へ出てしまって残ったのは俺の家族だけだったんです」


 一応、俺の経歴的なものは考えてあったのでそれを説明する。


「おー、そうなのですか。それは大変でしたな。だがずっと西にある森というと、もしかして迷いの大森林ではないでしょうな? あそこの森は別名、帰らずの森と呼ばれていて一度森の中に入ると方向感覚が全て狂い、中に入った人は迷い人となって出てこれなくなり死んでしまうと言われています。あそこに住むと言われる魔物があの森から全く出て来ないのも不思議ですが、我々には人外魔境の地として認識されていますな」


 えっ? あの森ってそんな風に思われてんの?


「いやいや、たぶんその森じゃなくて、俺が住んでたのはもっと手前の小さな森だとオモイマスヨ」


「そうですか、それなら納得ですな」


 ふー、何だか知らんけど乗り切ったかな…汗


「ところで、街へ出ようと旅をしているのなら目的地は決まってるのですかな?」


「いえ、これといって決めてきた訳じゃなくて、森から出た事もなかったので最初に見つけた街で一旦落ち着こうなと…」


「なら、私達一行が向かっているオルノバの街へ一緒に行きませんか?」


 それを聞きゼルトさんも同意するように


「おう、フミトさえ良かったら俺達と一緒に行かないか? オルノバは俺達が住んでる街でもあるしよ」


 他のメンバーもそれがいいと口々に同意する。


「わかりました。同行させてもらいます」


 俺の異世界初の訪れる街は『オルノバ』という街になりそうだ!

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