第16話 いい日旅立ち
部屋に射し込む光で目が覚める。
旅立ちの朝だ。
外は晴れていて絶好の旅立ち日和になりそうだな!
いつもの朝のルーティンを済まし、トイレにクリーンの魔法をかけ敷地内の建物の裏手側に取っ手を付けて持ち上げて持ってくる。
これで旅立ちの準備は完了だな。
中央の部屋へ行き、神様へ挨拶と共に「行ってきます」と声をかける。
装備を身に着け、昨日準備した荷物の点検をもう一度して確認する。
よし、準備はオッケーだ。
「さあ! 出発だ!」
そう、大きく声を出し東の方向に向けて歩き出す。
何で東に向かうのかというと、川の下流側が東なので人が住んでいるとすれば下流の方だろうという見込みからだ。
住み慣れた敷地を出ると、目の前の風景は森になる。
最初の頃は不思議で驚いたものだが、慣れた今ではごく当たり前の風景だ。
後ろを振り向き、建物のある方向に向けて軽く手を振る。
すると気のせいではなく、俺の身体が一瞬光った。きっと神様からの挨拶だな。
またここに来る日はいつになるのだろうか?
そんな事を考えながら俺は東に向かって走り出した。
俺の予想ではこの森を抜けるには最低でも500~600キロ以上の距離はあると思ってる。
途中、野宿をしながらこの森を抜け、あとは街を探しながら移動して行く予定だ。
いきなり街が見つかるとは俺も思っていない。
街に通じる道を見つけるのが最初の目標だ。
道がすぐに見つかればラッキーなんだけどね。
そんな事を考えながら走っていく。まだここらへんは普段探索していた庭みたいなものでそれほど変化もない。途中俺の進路の前に現れる魔物を道すがら倒したり、野草を採取したり、それこそ道草を食いながら移動。
ステータスも上がってこれくらいでは全く疲れはしないが、時々足を停めて辺りの風景を観察する。
この森には魔物だけでなく、鳥や普通の動物も居るんだよね。
たまに聴こえる鳥の鳴き声をBGM代わりに聴きながら移動していき、昼休憩を挟みながら予定の距離を消化して今日の野営地となりそうな場所を探す。
「あそこにするか」
少し開けた場所に背の低い木が生えている場所があり、近くに小川が流れている。その木の根元付近に土魔法で壁と天井を作り、ちょっとした小屋を作る。
結界魔法は覚えていないが、俺のマルチマップは自動でエリア内に魔物が侵入すると俺に知らせてくれるようになっているのでそこらへんは心配ない。
小川に行きザブザブと顔を洗う。
心地よい冷たさだ。
水筒の水を入れ替えて汲んでおく。
一休みした後、今日の晩飯の準備だ。
ここで拠点で作り置きしておいた焼いた肉をマジックバッグから取り出す。
火を起こして野営地で焼く事も考えたが、火の灯りと煙や匂いに誘われて魔物を呼び込むのも何だかなって思ったので作り置き弁当スタイルにした。
バッグの中に入れておけばいつでも作りたてだしな!
焼き立て熱々の焼いた肉を食った俺は暫く余韻を噛みしめながらまどろんだ。
風呂は我慢してクリーンの魔法で済ます。
そういえば、俺の身に着けているマントはいつでもマントの中を適温に保つのだ。
これマジ便利。
小屋の中に入り、入り口から見える空を眺めながら眠りにつく。
次の日の朝が来た。
外は曇ってる。
今日も東に向かって走りながら移動していく。
三日目
今日は朝から雨。
マントは雨を弾くが、地面が
予定の半分で諦めて野営する。
四日目
昨日の雨とは打って変わって今日は朝から快晴。
昨日の分の遅れを取り戻すべく、夜明けから出発して全力で距離を稼ぐ。
夜まで頑張った甲斐があって遅れを取り戻した。
五日目
今日も晴れ。
予定では今日か明日には森を抜けられるんじゃないかと思ってる。
とりあえず、東に向かってどんどん距離を稼ぐ。
残念ながら今日は森を抜けられなかった。
だが、何となく森の雰囲気が変わってきているように思える。
明日は抜けられそうな気がする。
六日目
今日も朝から晴れ。
何となく期待が持てる朝だ。
東へ向かって歩き出す。
昼近くになって木々の間隔が広くなってとうとう森が途切れ背の高い草が生えた平原の丘陵地帯が目の前に姿を見せる。
六日目になって、ようやく森を抜ける事が出来た。
「やったー、とうとう森を抜けたぞ!」
俺は喜びのあまりその場で叫ぶ。
しかし、この森どれだけ大きいんだよ? 拠点の反対側もべらぼうな広さだったもんな。
「さあ、次は道を見つけないと!」
安心するのはまだ早い。
人の痕跡を見つけないとね。
丘陵の尾根を移動しながら遠見スキルで道を探しながら歩いていく。
すると、道らしきものが前方にあるのを発見した。
嬉しさのあまり、全速力で駆け出していく。
それはやっぱり道だった。北の方向から来て緩やかに曲がりながら東に向かって通ってる道だ。
たぶん、その細さから馬車と思われる
馬車の
とりあえず、どちらに向かおうか?
やっぱり東かな。
俺は期待に胸を弾ませながら東の方向に伸びる道をゆっくり歩き出した。
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