第10話 便利なスキルを覚えていく

 複数の魔物相手の戦闘に勝利した俺は、魔物の処理を終えバッグに収納した後ステータスとスキルを確認してみる。


 名前:フミト ウエノ

 種族:ハイヒューマン

 年齢:24

 職業:森の探索者

 状態:普通


 Lv.5

 HP:477

 MP:539

 筋力:491

 魔力:539

 精神:453

 敏捷:481

 運 :1023


《スキル》

 言語理解(アーク語)

 マルチマップ

 並列思考

 剣術 Lv.2

 斧術 Lv.1

 格闘術 Lv.1

 調理 Lv.1

 造形 Lv.2

 解体 Lv.2


《耐性》

 麻痺耐性

 毒耐性


《魔法》

 生活魔法

 火魔法 Lv.1

 水魔法 Lv.1

 風魔法 Lv.1

 土魔法 Lv.2

 白魔法 Lv.1


《加護》

【アーク神の加護】


《ユニークスキル》

【神の気まぐれな力添え】


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 スキルも魔法もかなり覚えてきた。

 レベルも5になりステータスも上がってるようだ。


 マルチマップと並列思考のスキルを手にした事により、探索や戦闘の幅も広がって来そうなのが何よりの恩恵だ。複数相手の戦闘もどうやら目処が立ちそうだし、後は経験を積み重ねていくしかない。まだ魔法攻撃をしてくる魔物に出会っていないのでそこが課題かな。まだまだ勉強する事は多い。


 さて、引き続き森の中の探索をしよう!


 マップを手にした事により探索範囲も広がった。

 魔物の位置が表示されるのも安心材料だな。


 周囲の様子を観察しながら歩いていると、拠点から3キロ程離れた場所にちょっと広めの岩場を発見した。ここは魔法の訓練に良さそうだな。


 火魔法のファイアボール

 風魔法のウインドカッター

 水魔法のウォーターボール

 土魔法のアースボム

 などなど…


 イメージを作り上げ大きさや威力を変化させて岩場に向けて放ち、訓練を重ねながら魔法を自分のものにしていく。こういう積み重ねが大事だからね。


 初級魔法なのだが、俺が魔力を込めると威力が結構半端ないな。何かしら加護の効果があるのだろうか? 小一時間ほど魔法の訓練をした俺はまた探索に戻る。


 すると、暫くしてマルチマップ上に赤い光点が3つ出現した。

 赤い光点だから魔物で間違いないだろう。

 今度はどんな魔物だろうと、気配を消しながら近づいていく。


 木々の陰に隠れながら徐々に近づいていくと魔物が見えてきた。

 顔は醜悪な豚のように見え、二本足で歩く太った魔物だ!


 もしかして、あれがオークって魔物か?


 三個体の内、二個体は腰巻きのような布を身に着けて大きな棍棒のような物を持っている。

 もう1個体はローブのようなものを着て手には杖のような物を持っている。

 何となく、杖を持っている方が厄介そうなので先に魔法で先制攻撃をして戦力を削っておくか。


 そう考えた俺は、剣を抜き構えながらウインドカッターを杖を持つ魔物に向けて放った。だが、その攻撃に気がついた杖を持つ魔物は俺の攻撃が当たる前に、ギリギリの時点で同じウインドカッターの魔法を放ち俺の魔法の軌道を反らしたではないか!


「やるなコイツ!」


 棍棒を持った2個体の魔物が俺に向かって突進してくる。

 一体の攻撃を躱し、もう一体を下から掬い上げるように剣で斬り上げる!

 手応えを感じた俺はもう一体の魔物にも攻撃を加えようと素早く身体を向け剣を振り上げた。


 よし、その首貰った!


 そう確信した俺だが、いきなり思考が混乱してその場に棒立ちになってしまう。

 辛うじて少しだけ見える視界の先に、杖を持った魔物がこちらに杖を向けているのが目に入った。


 もしかして…アイツが何かやったのか?


 そう考えたと同時に俺の脇腹に強い衝撃が来て吹っ飛ばされた。

 斬るはずだった魔物の棍棒攻撃を受けたらしい。


 幸いな事に、俺の身に着けている黒革の鎧は棍棒の衝撃を吸収してくれたみたいで、派手に吹っ飛んだ割にはどこも痛くない。


 ここに来て、ようやく混乱が解けて正常に戻ったようだ。

 そして《混乱耐性》のスキルを獲得したらしい。


 俺は杖持ちの魔物の混乱攻撃を受けて、一時的に混乱状態になっていたようだ。


 混乱さえ収まれば大丈夫だ。

 仕切り直しで並列思考をしながら棍棒持ちを袈裟斬りで仕留め、少し離れた場所にいる杖持ちにウインドカッターを放ちながら走って向かっていく。

 杖持ちはもう一度混乱魔法を詠唱して俺に放ってきたようだが、混乱耐性がある上に高速でジグザグに走る俺に魔法を当てるのは無理だったようだ。


 間合いを詰め、驚く杖持ちの顔を見ながら一気に剣を振り抜く!


「あばよ!」


 そう言って首を刎ねられ崩れ落ちた杖持ちの魔物を俺は見下ろすのだった。


 混乱攻撃とは厄介だったな…


 一応、念の為に自分にヒールを掛けておく。

 魔物の死体の処理をしてバッグに仕舞い人心地つく。

 杖と棍棒も仕舞っておく。


 ところでこの魔物、豚顔だけど食えるのかな?

 肉は旨いのかな?


 真っ先にこれは食い物になるのかと考える俺は、異世界に来てどうやら精神的にも図太くなって成長してるようだ。


 オークらしき魔物との戦闘を終え、俺は木陰に行き遅い昼食を取る。

 バッグから肉を取り出し食べていく。

 水を飲んで胃に流し込んだ俺は立ち上がり午後の探索を続ける。


 魔法を使う魔物相手の戦闘は良い経験になったし、複数相手の戦闘も経験が付いてきた。


 そんな事を考えながら歩いていると地面から草がなくなり目の前にちょっとした崖が視界に入ってきた。

 上に伸びる崖の高さは5メートル程で横幅は50メートル程か。

 ここ一帯は草が全く生えていない。

 別に俺の能力を持ってすれば、障害物にもなりゃしない何の変哲もない崖だ。


 だが、俺が気になったのはそんな事じゃない!


 崖の一部分が白っぽいのに気づいたからだ。

 もしかしたらと少しだけ期待にワクワクする。

 指で白っぽい部分をなぞり、鼻に近づけて匂いを嗅ぐ。

 次に意を決してその白いのが付いた指先を舐めてみる。


「しょっぱい!」


 そう、たぶんこれは『岩塩』だ


 うろ覚えだが、元の世界のヨーロッパには風光明媚で山に囲まれた綺麗な湖があり、世界遺産に認定されるような場所に世界最古と言われてる岩塩坑があったと記憶している。

 とにもかくにも、これが岩塩なら凄い発見だ。

 土魔法を駆使してどんどん掘っていく。

 掘ったそばからバッグに収納のルーティン作業だ。


 しかし、バッグは手のどこかが触れていないと収納出来ないところが歯がゆいな。


 岩塩を収納しながらそんな贅沢な悩みをしていると……


「あっ、何か来た!」


 新たに獲得したスキルは何と《アイテムボックス》だった!

 しかも、普通のスキルじゃなくてユニークスキルだ。

 自分専用の異空間を作り出し、念じるだけでその異空間に収納が出来るようだ。


 いやぁ、贅沢な要求を叶えてくれて神様申し訳ない。


 アイテムボックスとマジックバッグは収納の点ではあまり違いがないが、アイテムボックスの場合はインベントリ機能付きで中の物がオートでソートされ、触れていなくても思い浮かべただけで物の出し入れが簡単に出来るので更に便利になっている。


 これで岩塩を掘るのに専念出来て効率がグーンと上がった。


『ザクザクザクザク』


 一心不乱になって1時間くらい掘り続けていたらさすがにMPが減ってきた。


 一旦休憩するか。


 既に崖の下は掘り続けた後が坑道のようになってきて、かなりの量の岩塩が手に入った。

 たぶん10トンダンプに換算して10台分以上。おそらく、100トン以上あるんじゃないかな。

 まだまだ埋蔵量はありそうなので、もっと掘るつもりだ。

 問題はMPの残り量だが、こればかりは仕方ない。


 自動で回復すると楽になるのにな…


 そんな事を考えていたらスキルを獲得しましたよ。

《HP・MP自動回復》というスキルだ。

 MPだけでなく、HPも急速に自動回復出来る優れもののようだ。

 あっという間にMPが全回復してしまった。


 これで悩みも解決。

 休憩を終えた俺は採掘作業に戻る。

 無我夢中で掘り続けた俺は「こんなもんかな」と作業を終了する事にした。

 たぶん、量にして400トン近く掘ったと思う。

 掘った岩塩は不純物が少なくて質がすこぶる良さそうだ。

 これだけあれば充分かな。

 採掘現場は坑道みたいになってしまった。


 魔物が坑道に入り込まないように土魔法で頑丈に蓋をする。


 岩塩を手に入れた俺は意気揚々として拠点に戻る事にした。

 途中、複数の魔物と遭遇してこれを倒し経験値も稼いだ。


 帰り道の途中、薪の材料になる倒木や枯れ枝を採取しながら歩いていてふと思った。

 そういえば、魔物を含めて色々な素材や材料を集めているが、それがどんな種類でどんな物なのか正確な情報が不明なんだよね。

 今日仕留めたオークらしき魔物もどんな魔物なのかだけでなく美味しく食べられるのか知りたいし。


 この世界の図鑑や辞書を持ってないしネットもない世界らしいので調べようがない。

 簡単にわかるような方法はないものだろうか?


 歩きながらそんな事を何となく考えていたら新しいスキルが降りてきた。

 なんと!《鑑定眼》のスキルだ。

 これも通常のスキルじゃなくて神のきまぐれな力添えやアイテムボックスと同じでユニークスキルらしい。


 早速鑑定眼のスキルを使い、ステータスボードにある《鑑定眼》スキルがどんなスキルなのか鑑定してみる事にした。


 無詠唱でも大丈夫らしいが、最初なので「鑑定」と声を出して詠唱してスキルを発動する。


《鑑定眼》

 アーク神から与えられたユニークスキル

 通常の鑑定と異なりMPを使用しない

 偽装や隠蔽、隠密や気配遮断なども絶対看破出来る(戦闘にも適用される)

 対象に鑑定を絶対に気づかれない



「えー、これって凄いな!」


 特に、偽装や隠蔽、隠密や気配遮断などをされていても絶対看破出来る

 対象に鑑定を絶対に気づかれない


 この二項目は凄い。

 戦闘でも有効に使えそうだし、鑑定を気づかれて余計なトラブルになるのも避けられそうだ。


 今日はユニークスキルが二個も手に入ったし、岩塩も採掘出来たしでとても嬉しい。気分上々で拠点に戻ったのだった。

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