第9話 マルチマップスキル
部屋の中に差し込む光で目が覚めた。
ベッドの上で起き上がり大きく伸びをする。
「ふぁあ」
今日も外は晴れているみたいだ。
神様への挨拶など朝のルーティーン作業を済ませ、昨日作り置きしていた肉を少しだけバッグから取り出し齧りつく。
肉は昨夜仕舞った時と変わりなく、温かいままなのでとても旨い。
水を飲み、クリーンの魔法をかけると口の中もさっぱり爽快だ。
「さて、今日も一日探検だな」
そう呟いた俺は準備を整える。
とにかく、ガラッと変わってしまった世界や生活に慣れる為にも何かしら行動していた方がいいだろう。目標があると日々の生活にもメリハリが出来るし、何よりもこの世界で生きていくために俺自身が強くならなければな。
巨大うさぎから剥ぎ取った毛皮はクリーンの魔法をかけて外に天日干ししておく。
ベッドに敷いたり、掛け布団にも使えそうだしな。
準備を終えた俺は森の中に歩きだしていく。
「今日も頑張るぞ!」
そう掛け声を掛けながら。
森の中を探索しながら、ふと「地図があれば便利なのにな」と呟く。
山や森の中では地図のあるなしで危険度や行動範囲が大きく違ってくるからだ。
そんな事を何気なく考えていたら新たなスキルを獲得した。
《マップ》スキルだ!
オン・オフが切り替えられて魔力の消費もいらないようだ。
表示範囲は今のところ半径500メートル程で、一度通った場所は自動でマッピングされるらしい。
「凄い機能だな」
これは便利なスキルだぜ!
早速、オンにしてアクティブ状態にしてみる。
車のナビみたいに上空から俯瞰してるように地図が見える。
そして拠点の建物がランドマークのように白く点滅して光っている。
俺自身の位置は同じ白色だが、常時点灯で点滅はしていないようだ。
これなら森の中で迷う心配はなさそうだ。
「よし、今日はちょっと遠くまで探索範囲を広げてみるか」
そして俺は歩き出すのだった。
素材を収集しながら暫く探索を続けていると、右方向に動くものの姿がチラッと見えた。
よく見ると、猪のように見えるが、普通サイズの何倍もの巨体を持ち大きな牙を生やした魔物の姿が見えた。
そいつと目が合い、戦闘開始のゴングが鳴らされる。
巨大うさぎと同様に凄い速さで突進してくる。
しかも、身体はうさぎと比較にならない程大きいので迫力というか圧力が凄い。
すかさず剣を抜き俺も臨戦態勢になる。
そして、今日の俺は試したい事があった。
剣と魔法のコンビネーションだ。
俺は心の中で念じ、突進してくる巨大猪の前方に土魔法で堅い壁を作る。
猪が土の壁に当たり『ドッカーン!』という大きな音が辺りに響く。
その魔法と時を同じくして俺は走り出し、ジャンプして壁にぶち当たって動きが止まった巨大猪の上から剣を振り下ろす。
『ズバッ!』
切れ味が最高な俺の剣は巨大猪の首を刎ねて戦いの決着が着いた。
「ふぅ、上手くいったな」
剣と魔法のコンビネーションプレイは大成功だ!
巨大猪は血抜きをしてバッグに収納する。
欲を言えば、戦闘前から相手の位置を特定して戦いを有利に進めたいものだ。
まあ、贅沢な欲求だが…。
すると、例のユニークスキルのおかげかまた新しいスキルが俺に降臨したようだ。
確認してみると《索敵探知》スキルだった。
どうやら、これは魔物などの位置を索敵探知して正確な位置を特定するらしい。
木や岩の陰にいても魔物を探知出来るのはありがたい。
スキルを確認していると、たった今確かめたスキルがいきなり変化した。
《マップ》スキルと《索敵探知》スキルが統合されて《マルチマップ》スキルに昇格したようだ。
「スキルが統合されるパターンもあるのか」
これの機能の一つとしてマップ上に魔物の位置が赤い点で表示されるらしい。
これはマップがオフ状態になっていても地図上に魔物や任意で設定した特定の対象が現れると自動的にオンになって俺に知らせてくれる機能もあるようだ。
これで不意打ちされる危険性が大幅に減って俺の探検探索活動にも大助かりだな!
気分を良くした俺はどんどん探索を続けていく。
暫くするとマップに赤い点が表示された。
しかも複数だ!
今までは敵の魔物も単独だったので1対1で戦闘が出来たが、複数相手の戦闘は初めてなのでちょっと緊張する。
赤い点は4つだ、どうやら向こうには俺の存在はまだ気づかれてないようだ。
足音を忍ばせながら気配を消し、敵の魔物に近づいていく。
複数相手の魔物には先制攻撃が効きそうだしな。
目視出来る位置まで近づくと、それは見た目が以前図鑑で見たような狼のような魔物だった。
森の中なので火魔法は使いづらいしなぁ…
何か相手の目に見えにくいような攻撃魔法はないものかな。そんな事を考えていたら…
あっ、《風魔法》を獲得した!
大盤振る舞いありがとうございます。
今日は特に多いもんな。
よし、早速ウインドカッターという魔法を使ってみるか。
俺から見て一番左に居る魔物に狙いをつける。
「ウインドカッター!」そう心で唱えると、半透明の風の刃が高速で魔物に向かっていく。
『ギャン!』
風の刃は魔物の身体に命中して魔物はその場に倒れ込む。
だが、急所を外れたのか一撃で即死とはいかなかったようだ。
仲間が攻撃された事に気がついた他の三頭の狼型の魔物は敵意を剥き出しにして俺に向かい突進してくる。
俺も土魔法で壁を作り足止めする。
だが1頭は足止め出来たが、壁の両脇を掻い潜った2頭が俺に牙を向けて迫る。
1頭の攻撃は剣の腹で弾き、もう一頭の攻撃は身を躱して避ける!
さすがに動きの速い複数相手の魔物との戦闘は厄介だな…
壁で足止めした魔物も戦列に復帰して、戦闘は1対3の局面になる。
複数相手に魔法を唱えながら剣を振るい、自身の身体の動きも考えるとどうしても行動がワンテンポ遅くなる。
現実の戦闘の難しさを再認識する俺。
すると、またしてもスキル獲得!
《並列思考》というスキルだ。
一度に複数の事を同時に考えられるという便利スキルだ。
早速、このスキルを使用して複数の思考を同時に処理していく。
剣で斬りかかりながら、土魔法で足止めし、ウインドカッターを同時に放つ。
一頭は剣で仕留め、ウインドカッターが直撃して倒れる1頭を横目に、ジャンプして足止めした最後の一頭の首を刎ねる。同時に複数の思考や操作が出来るのは凄いアドバンテージだ。しかも、魔法の同時発動も出来るしな。
「よっしゃ、上手くいったぞ!」
最初にウインドカッターでダメージを与えた魔物に近寄りとどめを刺す。
異世界初の複数相手の戦闘だったが、俺は何とか勝利を収める事が出来たのだった。
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