第9話 まほうのことば

冷たい雨にうたれながら

わたしの震える手を握りしめ

きみが ありがとうと呟いた


言葉とともにこぼれる涙は

ひとつ またひとつ

きみの頬をつたって 流れて落ちる


モノクロームの空の色

きみの瞳に それが映る

激しく揺れるこころの色

わたしの瞳が それを放つ


『ありがとう……』

その魔法の言葉が

わたしのこころを締めつける

わたしの想いを迷わせる


『ありがとう……』

繰り返される 魔法の言葉

忘れたくないのに

放したくないのに


それでもきみと

さよならしなければ いけないの

わたしがきみから

羽ばたかなければ いけないの


わたしを捕まえた

魔法の言葉

そのひと言が とても重い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る