2部 第3話
世界が破滅種(ハガル)によって蹂躙されたあの瞬間から人類が手にしたものが、もう一つある。
いや厳密にはもともとあったのだが、長い年月によって忘却の彼方へと追いやられたというべきものだ。
『精霊術』
遥か太古の時より受け継がれてきた力。
近代兵器が全く効果を出さなかった破滅種に対する武器を過去に求めた結果であった。
精霊術の古くは祈祷や占いなどで神託があげらる。
あるものは精霊と交信することで、吉凶をしり、国の在り方を決めていた。
見えないが傍に常に感じる存在を人々は畏敬の念をもって接していた。
しかし長い年月によって次第に忘れられ、やがて迫害の時代へとうつる。
その際たる例が中世などで行われた魔女狩りである。
人々は自分のわからないこと、知らないことに恐怖した所以ともいえる。
だが、過去に捨て去った力こそが今の人類を救う手助けになるとは皮肉というしかない。
さて、精霊術は誰しもがつかえる訳ではない。
『ノルン』と呼ばれる精霊因子を持つものだけが精霊術を使うことができる。
ノルンは一つ一つは大したことがない。空気のようにどこにでも存在してはいるが、それ単体ではなんの力も発生しない。
しかし、このノルンがひとたび結合すると大きな力を生み出すという性質がある。
術者がもつノルンを媒介し、大気中のノルンを感応し共鳴・結合させることが精霊術の根幹である。
その際より術者がより強大な力のイメージを持つことで、より結合させやすい、と言われている。
とはいえこれがなかなか難しい。
なぜなら、ノルンを通じて術者と力がダイレクトにつながるため術者が力の制御をしなければならないからだ。
当然強い力にはそれに比例するように扱いは困難になる。
精霊術はその難易度から5段階にわけられる。
1番下がランク5でよくおとぎ話などに出てくる妖精などがそれである。
そこから徐々に難易度はあがりランク1は幻獣・神獣などと言われている。
また未確認ながらさらに上の零ランクなるものも存在しているといわれている。
そのクラスはまさに天災レベルである。
「では、精霊士諸君、召喚開始せよ」
試験官の号令により精霊召喚が開始される。今回の試験は二人一組で行われる。
内容も実にシンプル。
精霊士が召喚した精霊と霊子融合を行い、速やかに目標物を攻撃するというものだ。
精霊士は召喚の規模、スピードと正確さなどが見れる。
霊装士は融合スピード、エネルギー変換率、対象物への攻撃過程などが見られる。
ランクの低い精霊ほど早く召喚され、融合しやすいが、SCAEのエネルギーも少ない。結果、SCAEの稼働時間も短くなる。
では数を多くすれば、となるがその場合も数が多くなればなるほど精霊の制御に負担がかかる。
そのため、より強い精霊を召喚したのと変わらないのだ。
「精霊士、さっさと召喚しな」
複数いる組み合わせのなかで傲慢な言い草ではあるが、そこには揺るがない自信に満ちた言葉が精霊士に向ける少女がいたのだった。
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