2部 第1話
その頃私は何も知らなかった。畑仕事に精を出す父。家事をこなす母。そして私の後ろをいつもついてくる弟。
私の世界のなんと小さいことか。
しかし、そんな小さな世界であっても私はよかったのだと、あの時の私はそう思っていたのだ。
なんと愚かしいことか。
なんと浅ましきことか。
そしてなんと無知なることか。
その対価を身をもって知らされる。
突きつけられる。
そして対価によって得たものが、今も私を縛り付ける。
それを人は『呪い』という。
***********************
待つ、ということは苦手だ。何もせずにただただ無意味に時だけが過ぎていくようで。くだらないことを考えてしまうから。
もっともこうして待たされているのが、私だけではないのは救いといえば救いなのかもしれない。
周りを見渡せば十代半の男女複数人、皆緊張した表情をしている。なかには顔面蒼白の者までいる。
物思いにふけっているのは私くらいだろう。
まぁ、気持ちがわからないでもない。なにせこれから始まることが、自身の人生を左右しかねないのだから。
そうこうしている間に、数人の大人がやってきた。それと同時に空気がピーンと張りつめる。
「これより、実技試験を開始する。諸君らの日頃の鍛練の成果を存分に発揮してもらいたい。尚、これは試験ではあるが極めて実戦に近いものである。その事を各自今一度留め置き臨んでもらいたい」
「総員、抜錨!」
「「「「「SCAE展開」」」」」
変化は一瞬のうちに訪れる。
右腕の腕輪が輝きだす。そして光が全身を包みこむ。光が収まるとそこには灰色の甲冑をまとった集団があらわれたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます