時を越えた想い

 君の胸の奥に隠したものは何だったのか。


 5年前に隠したタイプカプセルが教えてくれた本当の気持ち。


 「好きです」


 言い出せなかったのだろう。


 周りの人の反応が、持病のせいで自分の余命が数年だということも知っていたのだろう。


 「ばか……」


 そんなの私は全然気にしないのに。

 知っていたら、寄り添えただろうか。


 同性だから。

 友達に、家族に知られたくないから。


 こうやって、タイムカプセルでしか本当の気持ちを彼女は言い出すことが出来なかった。


 それは私も同じだ。

 もっと、彼女と向き合えば良かった。


 もっと、話すことがあったんじゃないか。

 思い返せば、時折もの哀しい表情を浮かべていたのを思い出す。


 その意味が分かった後ではもう遅くて。


 屋上で一人でいる時や、放課後で教室で一人でいる時。

 君はどんなことを思って、考えてた?


 私も同じ想いだった。

 病室で想いを彼女に伝えれば何か変わっていただろうか。

 私たちはすれ違うばかりで何もお互いの事が分かっていなかったんだね。


 「好き」とたった二文字しか無い言葉なのに、なぜこんなに胸が苦しくなるんだろう。なぜ、こんなに息苦しいのだろう。なぜ、こんなにも伝える事が難しいのだろう。


 過去は消すことが出来ず、後悔の念のみが胸の傷を深く抉る。

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