第11話 第一章 風薫る⑪

 カナちゃんとカズマがぽかんと私の後ろを見ていて、二人の視線の先を追うように振り返ると、陽に透けた金髪が目に飛び込んできた。

(……え、)

 びっくりして目を見開く。

「ミズキ?」

 制服姿のミズキは目が合ったとき無表情だった。全くの無表情を初めて見たのと、その整った造りからか表情のない顔が場違いにも綺麗だと思って思わず固まった。しかし目があった途端ミズキはハッとしたように手を放した。

「ヨーコ、知り合い……?」

 カナちゃんの声に現実に引き戻されたような感覚がした。

「あ、うん」

「他校の人?」

 その言葉で、カナちゃんたちが特別支援学校の制服を知らないことに気付いた。どう答えていいのか分かりかねてミズキを振り返ると、首を横に振られた。言うな、ってことなのかな。

「うん」

「彼氏?」

 カズマの言葉に「え」と声が漏れた。

「いや彼氏とかじゃない。友達」

「ふーん」

 カズマはなぜか思いっきり不信感を丸出しにしてミズキを見ていて、ミズキもそんなカズマに眉をひそめた。あまりよくない雰囲気を感じて、取りあえず状況を打開しなければとカナちゃんに向き直った。

「ちょっと話してくるから先行ってていいよ、ごめんね」

「え、でも」

 学校を目の前にして申し訳なく思いつつ「ノート適当に回していいから」と言うと、カナちゃんは少し迷う素振りをしてから頷いてくれた。

「ほらカズマ行くよ」

「んだよ、こっちが先約――」

「お邪魔虫でしょ!」

 カナちゃんが小声で一喝するのを聞いて、なんか勘違いされていることに気付いたが、時すでに遅し。思いっきりクラスメイトたちの視線を浴びていた。後で訂正しようと思いつつ、手を振ってみんなが校舎に入っていくのを見届けてから、ミズキに向き直った。

 途端に冷たい手で、手首を再び掴まれる。

「ミズキ」

 どうしたの、と見上げると、何とも言えない顔をしていた。

 どうしてここにいるんだろう。特別支援学校から、自分たちが歩いているのを見かけてわざわざ来てくれたんだろうか。今まで図書室で会うだけだったので、そんなイメージがなくて意外に感じた。

 手に持っていたシェイクを飲む? と差し出しながら聞くと首を振られる。

(……ていうか、きれいすぎる)

 ストローをくわえながら改めてミズキを見つめると、陽に透けた金髪がきらきらしていて思わず見惚れた。あまり同級生にはない色合い。切れ長の、少しつり気味の目が伏せられて、睫毛が白い頬に影を落としていた。

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