第32話


 二日お休み&今回短めで申し訳ない( ̄▽ ̄;)


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 ゴブリンジェネラルは接近する俺の事を蹴り上げようとしてくる。だがそのデカい当たり判定を回避はせずに、跳躍してゴブリンジェネラルの足へと上手く乗ってしまえば、それは俺を浮かび上がらせる為のカタパルトでしかない。


 体が大きいからこそ、上手いこと体への着地が可能なのだ。そういった部分は巨体故の弱点だろう。


 そしてもう一つ、こちらの攻撃が避けにくいこと。


 「『轟爆ブラスト』」


 飛び上がった俺は、空中で向きを整えてゴブリンジェネラルへと手を向けた。

 目線の先、ゴブリンジェネラルのがら空きの腹。宙を舞いゆっくりとなった認識の中で、その場所に小さな光が生まれた。


 その光はやがて膨張していき、仄かな光ではなく閃光へと変わっていく。その一連の過程が現実では一秒未満に進行した。


 ドンッ───単一の、本当に一瞬の、しかし酷く重苦しい鼓膜を震わすような爆発音。


 長く響くほどではない。だがそれは爆発の範囲が狭かっただけで、威力が低いことと同義ではなかった。板金越しとはいえ爆発を直接当てられたからか、ゴブリンジェネラルはくの字に体を折り、低い苦悶の声を上げる。


 それを確認すると同時、俺はその隙を詰めるために


 別に凄まじい勢いで蹴って、体重を支える以上の空気抵抗を生み出した訳では無い。ただ時空魔法でだけである。

 

 固定された空間は、外部の空間と区切るために壁を発生させる。その壁は個体と同じように蹴ることが出来るため、空中で足場を作るような感覚だ。


 空中で加速した俺は、傷を負い怯むゴブリンジェネラルの顔面へと接近した。なんのために剣に魔法をかけたと思っている。当然より斬りやすくするためだ。

 魔法で攻撃してそれだけで終わるなんて有り得ない。


 そして斬るなら、より致命的となる急所を───。


 「───狙うに決まってるよな」


 ゴブリンジェネラルの、俺と同じくらいの大きさを持つ顔がこちらを向いた。痛みを感じているからか苦痛に細められた目が俺のことを見る。


 正面を向いてくれるなら、こちらとしてもとても狙いやすい。


 すれ違うように、俺は剣を振り抜いてゴブリンジェネラルの背後へと抜けていく。

 斬り裂いたのは左眼。先程までの斬れ味であれば一度立ち止まる必要はあっただろうが、魔法をかけた今となっては勢いで無視出来る程度。


 ゴブリンジェネラルが片眼を押さえて大きく体を仰け反らせた。


 口や鼻、耳と違い、眼は脆弱故少ない傷でも機能を失ってしまう。

 特に刃物で刺されたり斬られたりなんかすれば、そのダメージは考えるまでもない。片眼を失ったゴブリンジェネラルは確実に視界が狭まったはずで、二度の傷は苦痛そのものだ。


 しかしそれでも、やはり魔物で守護者ガーディアン。痛みで悶えていた状態から、その痛みを怒りへと変えたのか背後の俺に対して腕を振るう。


 腕自体がデカいため回避しなければ当たりそうだが、空中の回避は難しい。今から魔法が間に合うかどうか───そんなことを考えていたが、スパンっと軽い音を立てそうな勢いで、ゴブリンジェネラルの腕が


 どうやら隙を見て攻撃を入れてくれたらしい。ゴブリンジェネラルの左肩辺りに跳躍したルリの姿が見える。


 ちなみに十メートルもあるとその分腕も太い。細身とはいえ直線で見た場合の太さは一メートル程度だろうか。

 その上骨もあるにも関わらず簡単に斬り捨てている。鋭利な切断面からは血が吹き出し、腕を振るっている最中だったため、斬り捨てられたそれは部屋の外側に向かって吹き飛んでいく。


 返す剣で、ルリはゴブリンジェネラルの肩を大きく斬り裂いた。縦二メートル強の巨大な裂傷を作り上げ、血飛沫が上がる。


 大鉈ごと振り払うように右腕を振るうも、左眼が負傷しているのもあるのか、ルリはゴブリンジェネラルの肩の上だけで華麗に攻撃を回避する。その間に地面へと降り立った俺は、暴れるゴブリンジェネラルに下手に追撃はせず一度下がって体勢を整えることに。


 「意外と……すんなり行きそうだな」


 最初はどうなるかと思ったが、やはり身体能力が上がったのもあって比較的余裕だ。

 ルリが肉薄しているのもあり、この分なら直ぐに倒せそう───と、そんなことを考えていたからだろうか。


 有利なポジションで、攻撃が出来そうなのにも関わらずルリが飛び降りてくる。その光景に違和感を抱く時間すらなく、ゴブリンジェネラルは突然体を縮こまらせていった。

 

 「一体なにを───」


 しようとしているのか。その言葉を俺は確かに放ったはずだったが、自身の声が耳に届くことは無かった。


 閃光と衝撃が、俺の感覚を支配していく。先程『轟爆ブラスト』を放った時のような、しかし俺のそれとは段違いの、そんな生易しいものではない圧倒的なパワーが前方から襲ってくる。

 

 自らの意思に反して体は宙を浮き、そうなればあとは流れに逆らうことすら許されない力の奔流に身を晒すこととなる。


 「カハッ!?」


 結果としてどのくらいの時間が経ったのか。一瞬の混乱でまともに把握することなどできず、気がついた時には背中を強く打ち付けていて、その衝撃に肺の中が瞬時に空っぽになってしまう。

 口から乾いた空気が漏れ、ジンジンと体中が痛みを訴え出し、骨か軋むような感覚に襲われた。それが未だに謎の衝撃が放たれ続けていることの証明だと理解した時、ようやく痛みの中で思考を取り戻すことが出来た。


 体感で恐らく十秒程度。やがて光が弱まると共に体にかかっていた力が弱まる。


 磔状態から解放されればそれもまた更なる痛みを呼び起こし、体がそのまま倒れそうになってしまうが、俺はどうにか片膝を着いて体勢を整えることに成功した。


 「はぁ、はぁ……はぁ…………くそ、痛いな」


 荒くなった呼吸を無理矢理整える。体中を駆け巡る痛みに顔を顰めながら立ち上がるが、幸いにして怪我などはしていない。衝撃と壁への激突による体への負担が痛みとなって表れているようだ。

 普通ならどこかしらを骨折していそうな攻撃だったが、体もやはり丈夫になっているらしい。


 ゴブリンジェネラルの方を見れば、勝てないと悟った故の自爆覚悟の一撃だったのか、体を大きく破損させた状態で横たわっておりピクリとも動く様子がない。


 先の一撃を放ってそれで死んだのかどうか、それを確認したいところだが、それよりも先にルリはどうなったのかが心配だ。



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 いやぁ、最近ストックゼロで執筆遅れ気味なので投稿頻度がまた延びてるのは申し訳ない……次回も明後日辺りというかこれはもう確定で明明後日以降ですかね(--;)

 また調子が上がってくるのを待ちつつ、気長に書いていきますんで。これがね、一週間に一回とかになっていくと、もう大変なんですよ。

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