第22話


 直前に話のミスに気がついて書き直してたらギリギリでした( ̄▽ ̄;)

 取り敢えず投稿!


──────────────────────────────




 前方から迫るブルーゴブリンの群れ。敢えて不意をつかず正面から堂々と姿を晒せば、鋭い殺意が向けられる。


 殺すという意志。それは紛れもない生物が放つそれそのもので、迷宮内で発生している魔物もやはり動物としての意識を持った存在なのだと認識できる。


 どこかゲーム的なシステムに通ずるところはあっても、これは現実。特に、彼らもまた生きているのだということは剣を突き刺した時に実感出来る。

 

 先頭のブルーゴブリンと距離を縮め、反応を許さずその胸に剣を突き刺す。レベルの上昇とパラメータの向上は俺の身体能力を確実に引き上げ、戦闘を容易にさせた。

 肉を抉る感触。どうやら丁度魔石に当たったらしいと把握しつつ、足でブルーゴブリンを蹴って、乱暴に剣を胸から引き抜く。

 

 その蹴りすらも、非力なブルーゴブリンにとっては致命的な威力を持っていた。ブルーゴブリンが吹っ飛ぶような勢いで背後によろけたことで、後続の動きを一時的に止めさせた。


  それに合わせ、俺の脇をルリが走り抜けた。走り抜けたというより、跳び出したと言うべきか。

 弾丸のように突っ込んで、相も変わらぬ凄まじい勢いで剣を振り抜く。剣のリーチの倍以上の範囲を攻撃するのは、本当になんなのだろうか。


 当然のように、ブルーゴブリンは倒される。まさに鎧袖一触。こちらも身体能力が格段に向上したとはいえ、ルリのそれは次元が違う。


 グレイさんと比べれば、レベルが100を越えている可能性は普通にありそうだ。

 もしそうなら、一体どんな幼少時代を過ごしていたのか……そう、例えば家族はどうなのだろうとか思ったりしても、聞きはしない。


 ただ一つ言えるのは、未だ俺のお荷物感が抜けないということ。


 俺とルリが一振りずつ剣を振るってブルーゴブリンの群れを倒せば、ルリは気遣うように俺のことを見てきた。


 「……トウヤは、お荷物、じゃ、ない」

 「有難いけど、客観的に見てな……いやまぁ、そこまで凄く気にしているわけじゃないから大丈夫だ」

 「……そう?」

 「前よりはついていけるようになってるしな」


 確かに気にしてはいるけれど、心配されるほどの事じゃない。劣等感を持つような性格じゃないし、むしろ有り難さの方がいっぱいだ。


 ルリが居ることで、最大限の安全性を確保出来ている。だからこそ不安なく魔物と戦うことができ、何より効率が上がっている。

 経験値配分的な意味では果たしてどうなのかと言ったところだが、それでも一人よりは明らかに精神面でも戦力面でも安全面でも良いだろう。

 

 


 朝、早速迷宮へと向かった俺達は、昨日と同じように第一層を進んでいた。

 ただ、昨日とは違い今回は第二層を目指している。昨日は三時間程度探索したにもかかわらず次の階層への道を見つけることが出来なかったのだが、現在の俺の手には地図が握られていた。


 一応今朝、探索者ギルドによって迷宮について詳しく確認をしておいたのだ。やはり次の階層へ続く階段があるらしく、各階層の地図も販売されている。

 良くある手描きのものではなく、正確に計測されたらしきそれはとても見やすく、また同時に迷宮というのが予想以上に広いことが容易に見て取れる。


 分岐の先に分岐、そして更に分岐と続き、例えばゲームならある程度限度があるが、この地図を見るにぎゅっと詰め込んだ迷路のようにみっちりと道がある。


 端から端まで数キロはあるだろうか。この街全体よりも更に広そうで、かつ分岐まで多いとなると、ほとんど他の探索者とすれ違わないのも理解出来る。


 俺達が昨日通ったのはこのうちの3割程度と思われる。今日も手探りで探していたら、余程運が良くない限りブルーゴブリンやゴブリンメイジと戯れるだけの日となっていただろう。


 ただ、ゴールまでの道が分かればあっさり。入口から数十分程度で巨大な階段の前へと辿り着いた。


 「……でかい」

 「確かに、迷宮の広さに見合った大きさだな」

 

 横に十人程度並んでも一斉に降りることが出来る。分かりやすく言えば城の中にあるような巨大な扉のような、そんな雰囲気を感じた。


 その階段を下って階下へと降りていけば、やがて第一層と似たような景色が姿を現す。

 ただ全く同じという訳ではなく、縦横一メートル程度ずつ通路の幅が広がっているようにみえる。


 一応話に聞いたところ、ここには第一層とはまた違った魔物が出るらしいのだが……周囲を見てみると、今日初めての他の探索者らしき人達が居ることに気づく。


 階段までの道のりは幾つかあるし、階段自体も階層に一つという訳では無い。が、それでも限られているのは確かだ。

 どうやらその人達は迷宮探索自体は慣れているのか、進むべき道がわかっているかのように進もうとしている。


 一応第二階層以降の地図も、現在調査できている範囲までは探索者ギルドで売られているのだが、俺は今日持っていない。


 下手に第二層以降の地図を買うと、ついつい階段まで足を運びたくなってしまうのではないかと危惧した結果である。過小評価する訳では無いが、かといって俺には傲慢になれるほどの圧倒的な力がある訳じゃない。

 下手に『楽勝楽勝』とドンドン進むと、後で痛い目に遭うかもしれない。しかもルリが居ることで、戦闘はより容易いものになってしまっている。


 その辺を考えると、なら今日は第二層を取り敢えずゆっくりと探索しようという事である。


 「……ワクワク」

 「そうか?」

 「……しない?」


 無表情ながらそんなことを言うルリ。残念ながら俺には、どの部分にワクワクするのかが分からない。


 そう言えばルリは元々迷宮自体に乗り気だったような気がする。どうやら本人も知識として少し知っている程度のようだし、知的好奇心が旺盛な部分を見ても迷宮という未知を体験できるのは楽しみなのかもしれない。

 

 昨日第一層を探索した後で改めてとも考えられるが、昨日と今日の変化はなんだろうか。

 朝からルリが普段より上機嫌である、ということぐらいしか思いつかない。


 ただ、その無表情ながらに少し瞳だけ輝かせているような感じが可愛らしくて、頬が緩みそう。


 「いや、俺もするよ」

 「……そう」


 なら、話を合わせるくらいなんてことない。まぁ、わくわくとは違うが戦闘を経て気分が多少高揚しているのは本当だ。

 同時に、戦闘に備えて思考も活性化している。


 先程見かけた探索者達とは違う方向へ向けて歩き出し、そんな会話をする。ルリに甘いのはご愛嬌だろう。

 

 内部に変わりはなく、微かに広くなった通路が多少の違和感を出しているが逆に言えばそれくらいだ。

 代わり映えのない景色には残念な感じもしないが、ピクリとルリが動いたのを見て俺も把握する。


 「魔物か?」

 「……多分」


 ちなみに言うと俺はルリより先に気がついたことがないのだが、それは仕方ない。勝負にならないというか、比較するならもっと感覚を鍛えてからでないといけないだろう。


 がしかし、魔物の気配は俺にはまだ感じ取れない。仕方なくルリが意識している方向へと進んでいくことにする。


 ルリの大凡な気配察知範囲は反応の逆算で把握しているが、相変わらず見事な感知能力だ。こちらの二倍から三倍程度は広いだろう。

 スキルの効果が大きいとしても、気配察知自体に慣れている感じはやはりある。


 数分ほど歩いて、予想であればそろそろこちらも分かるようになるはず。その直後にうっすらと魔物らしき気配を捉えて、俺はようやくかと息をつく。

 この差を埋めるにはまだ遠い……そう思っていた矢先、ルリがふっと。


 俺の袖を強く引いた。


 「───えっ?」


 困惑の声は、ルリに強く引かれたことよりも、突然俺の足元の床がけ《〃》ことに対してだった。

 体が傾きそうになり、しかしルリの力で反対側へと。体勢を崩していたのでルリを押し倒しそうな形となってしまったが、ギリギリで避けて体勢を整え直す。


 「……平気?」

 「っとと……あぁどうにか。ありがとう……だけど」


 振り返りながら礼を言って、しかしとその奥を見る。


 俺が先程踏もうとした場所。本来であれば他の場所と同じように床が続いているはずが、何故かそこだけぽっかりと穴が空いていた。

 

 踏む瞬間までは確かに床があったはずで、故に反応が遅れた。落ちることはなくとも、確実に反射的な魔法の対応を迫られていただろう。


 その穴は、少しするとまるで幻影がかかるように床に戻る。

 穴の底がどうなっていたのかは知らないが、明らかな殺意を感じるものであることに変わりはない。


 

──────────────────────────────



 ちょっと中途半端ですが、まぁ次回に繋がるので問題ないと思われ!

 次回はですね、また日曜日に一日用事が入っておりますので、もしかしたらいつもより一日遅れるかもしれませんがご了承ください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る